親中派国に出始めた中国への問題~一帯一路構想が生む経済格差

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月4日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アジア諸国の中国に対するスタンスの違いについて解説した。

親中派国に出始めた中国への問題~一帯一路構想が生む経済格差

ASEAN各国との首脳会議で記念撮影に臨む安倍首相(左から5人目)=2019年11月4日、バンコク郊外(代表撮影・共同) 写真提供:共同通信社

安倍総理、ASEAN関連首脳会談

3日にタイのバンコクへ到着した安倍総理大臣は4日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓のプラス3の首脳会談に臨む。5日までの日程で、RCEP(自由貿易圏構想)の交渉にも臨むが、こちらは年内の妥結が厳しくなっている。

飯田)3日に出発したということで、羽田空港から発つときに報道陣の質問に答えた、安倍総理大臣の声をお聞きいただきます。

 

安倍総理)太平洋からインド洋へと広がる広大な地域に、自由で公正なルールに基づく経済圏をつくりあげるために、日本は今後も交渉を牽引して行きたいと考えています。

 

飯田)RCEPは、年内の妥結が厳しいというような報道も出て来ています。

須田)このRCEPが前に進んで行かないということもあるし、アメリカのトランプ大統領が出席を見合わせる状況になったわけですよね。

親中派国に出始めた中国への問題~一帯一路構想が生む経済格差

RCEPの閣僚会合で記念写真に納まる安倍首相(中央)と各国閣僚ら=2018年7月1日午前、東京都内のホテル 写真提供:共同通信社

今回のASEANでは大きな成果は見込めないか

飯田)そうですね。東アジアサミットには閣僚すら送って来ないということで、ASEAN側も3ヵ国しか出ないという状態になっています。

須田)大統領選挙に事実上は突入したということもあって、内向きになっています。それに関連して、米中貿易交渉の第1フェーズの合意があったため、チリで開かれる予定だったAPECに全力投球ということになっていたのです。アジア軽視というわけではないのですが、優先順位からすると相当に低いのだろうという気はします。RCEPに関して言うと、中国はがっかりしていると思います。いま中国がいちばん嫌がっているのは、水面下で日米欧におけるFTA(自由貿易協定)が事実上結ばれて、巨大な貿易圏ができあがることです。RCEPはそこにくさびを打ち込むことができ、中国にとっては自国の体制を残しつつ加われるものですから、是が非でも進めておきたい。日本は慌てる必要はないと思います。TPP11があるから、という意識が強いと思います。そのような状況ですので、今回のASEAN関連首脳会談は、さほど大きな成果はないと言ってもいいかもしれません。

飯田)RCEPの大枠合意でも出れば、大きな成果だと喧伝できるのでしょうが、年明けに持ち越しと。このRCEPは年内妥結と言われて、毎年伸びている気がします。

須田)呉越同舟というか同床異夢というか、相当難しいと思います。妥結したところで中身がないということになりかねないし、ASEANを見てみると、中国に厳しいスタンスを取っているベトナムに対して、他の国々が対抗しているような状況も垣間見えますから、ASEANそのものが一体化していないのが実態ではないでしょうか。

国と国民の間に格差を生む一帯一路~チリでは大規模デモ

飯田)中国に対するスタンスも、ASEAN各国のなかで大分違うわけですものね。

須田)ここ最近、親中派と言われている国々に、いろいろな問題が噴出し始めています。中国に対する経済依存度を高めたせいで、国民からの反発が出るような傾向も強まっています。中国との関係に前のめりになると、ややこしくなるのではないかと、各国の警戒感が出て来ているのだと思います。

飯田)これまでは、強権的な国々は民主主義国家と外交をやろうとすると、人権問題に突っ込まれる。その点、中国はお金だけ出してくれるから都合がいいのだ、という解説もまことしやかにされていました。

須田)そのツールとして一帯一路構想があるのですが、一帯一路構想のなかで資金を多く受け入れている国は、国民からの反発が出ています。その筆頭がチリなのです。

飯田)チリで大規模デモがありましたね。

須田)あれは香港型のデモと言っていいかもしれません。なぜ100万人規模のデモが起こったのかというと、きっかけは米ドルに換算してたった4セントの地下鉄料金の値上げであり、それも撤回しましたからね。それでもデモは収まらない状況にあって、7000人が拘束されています。なぜかと言うと、強権的な政治手法と経済格差です。一帯一路による中国との経済協力で、潤って行く層と置いて行かれている一般国民で分断が進んでおり、不満や怒りが爆発しているのがチリの実態です。こういったケースはチリだけでなく他の国でも起きていて、各国はその辺りを見ていますから、一帯一路にはまり込むと国内状況が不安定になるという意識を持ちつつあるのですよ。

飯田)少し前までは一帯一路批判というと、中国からお金を貸し込まれて首が回らなくなり、港を差し出すというようなところが出ていました。それだけではなくて、国内の格差が大きくなることや、経済的な哲学のようなものの差になるのですね。

須田)加えて、国民生活が犠牲になってしまっているのですよね。

親中派国に出始めた中国への問題~一帯一路構想が生む経済格差

信号機を燃やしてチリ政府に抗議するデモ隊=2019年10月29日、サンティアゴ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

強権的に抑えると国民の怒りが爆発する

飯田)開発などのところですね。一時期は中国やロシアのように、強権的で非民主主義だけれど、その方が意思決定が早いから発展するというモデルがありました。そこが曲がり角に来ているということでしょうか?

須田)国民の不満や怒りが、どこかで暴発するという結果を招いてしまっているのですね。

飯田)そのときに選挙があれば選挙になるけれど、強権的な国では選挙で自分たちの気持ちを表せない。そうなると、街頭でデモをすることになるのですね。

須田)チリも100万人のデモとは言っても、当初は平和的なデモだったのですよ。それに対して強権的に臨むと、一気に過激化する側面を持っています。

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