米中閣僚級貿易協議が開催~日本経済に影響するアメリカの決定
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月9日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。10日から開催される米中閣僚級貿易協議について解説した。
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米中閣僚級貿易協議を前に撮影に応じるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表(左)、中国の劉鶴副首相(中央)、ムニューシン米財務長官(右)(中国・北京)=2019年2月14日 写真提供:時事通信
米中閣僚級貿易協議、10日からワシントンで開催
アメリカ政府は7日、中国との閣僚級貿易協議を10日から開催すると発表した。閣僚級貿易協議が開催されるのは2ヵ月半ぶりである。農産品の他、中国による知的財産権の侵害や技術の強制移転の是正など、幅広い分野が協議の議題となる。
飯田)7月末に上海で開催して以来ということになりますが、米中の摩擦の影響は出て来ていまして、世界のGDPの0.8%を下押しするのではないかという指摘もあります。IMFが見通しを修正したというニュースもあります。これは、経済だけの問題でしょうか?
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ホワイトハウスで、記者団に話すドナルド・トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2019年10月3日 写真提供:時事通信
本質は安全保障の覇権争い~日中のビジネスにも大きく影響
高橋)本質が違いまして、知的財産権の話がありますが、背景は安全保障です。安全保障の話があり、技術について軍事的な猶予をアメリカが絶対に許さないのが前提です。その話は2010年くらいから、米国の議会では議論されています。その辺りをよく読むとわかりますが、要するに経済の話での覇権というのは、実際には安全保障の覇権です。ですからハイテク産業について、アメリカは厳しくやります。軍事転用されることがあるからです。日本の経営者は、情報をよく入れて対応した方がいいと思いますよ。日本企業の人は、中国と簡単に合弁などをやるでしょう。それによって日本のハイテク技術が中国に流れることを、アメリカは許さなくなると思います。例えばハイテク関係だと、中国との間の合弁企業はできなくなると思った方がいいです。
飯田)もしやるとしたら、アメリカ市場からの撤退も辞さないと。
高橋)逆に中国との間で技術協力などをやっていたら、アメリカ市場から締め出される可能性が高いです。その前段階として、中国とアメリカがやっているわけですから、中国でビジネスをしている日本の経営者は、これをよく見ておいた方がいいですよ。
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会談を前に握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月29日、大阪市(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
外資規制を強化~届け出基準を1%に
飯田)これに関連して外資規制、政府関与を強めるというニュースを、各紙が経済面で報道しています。安全保障に関連する企業への、外資の出資規制を強化する外為法の改正案を、政府がまとめたということです。
高橋)私がいま言った話の、制度的な裏付けです。同時に起こっているのです。外資が10%を1%にするのだから、ほとんどみんな引っかかります。アメリカの意向とずれている中国企業との合弁があったら、みんな撥ねられると思いますよ。
飯田)それをひっくるめての合弁企業だから、子会社や別会社という言い訳は許さず。
高橋)厳しくやっているのですよね。いつ政府が発動するかという話だけです。これは、アメリカの米中協議などを見ながらやるのです。日本もアメリカに同調すると思いますよ。こういうものを見ておかないと、日本の経営者は中国とのビジネスで、思わぬ大失敗をするかもしれません。
飯田)法律の改正が必要だから、いま出して臨時国会、あるいは来年(2020年)の通常国会で通さないと間に合わない。
高橋)来年から動きますね。
飯田)米中協議もそのあたりを1つの山として、何らかの結論が出るのではないかと見越して動いている。
高橋)外資規制は、法律だったのか覚えていないのですが、少し前に法律改正をしています。政令でできますから、すぐに動く可能性もあります。
飯田)まず実行性を政令で出して、法律は後から着いて来る。
高橋)ある程度は政令でできるはずです。そうでないと外資規制は、世界経済や政治の情勢で素早くやらなければいけないから、法律上は緩く断続的にできるようになっています。「法律改正が必要です」「国会を開いていません」という言い訳が通用しない分野ですから。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00