ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月25日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカのペンス副大統領がワシントンで米中関係について触れた演説について解説した。
アメリカのペンス副大統領~中国に対して経済以外でも対抗の姿勢を示す
アメリカのペンス副大統領は24日、ワシントンで米中関係について演説した。ペンス氏は、「アメリカの指導者は経済的な関与だけで中国を自由で開かれた社会に移行させられるとの望みをもはや持っていない」と述べ、軍事、外交、経済など幅広い分野で台頭する中国に対抗して行くというトランプ政権の姿勢を改めて示している。
飯田)完全に分かれるということではない、とのことですが。
宮家)それはそうでしょう。米中経済は相互依存ですから、かつての米ソ関係とは違います。
経済的な関与だけで中国を自由で開かれた社会に移行させられる望みはない
宮家)今回面白いと思ったのは、アメリカの指導者が「経済的な関与だけで中国を自由で開かれた社会に移行させられる望みはない」と言っていることです。経済だけで中国を変えることはあきらめたと言っているのです。1989年に天安門事件が起きて、国際社会は経済制裁を課しました。しかし、それを率先して解除した国が、日本やアメリカでした。当時我々は何を望んだのかと言うと、中国に対し投資をして、中国を資本主義化する。それによって中国社会が変わり、市民社会ができる。そして市民社会が民主主義に移行するのだと。経済発展をきちんとやれば、中国は変わるのだと考えていた。だから中国に対し投資し、WTOにも入れたではないですか。しかしその結果、経済のあがりはすべて軍事費と治安維持費に使われて、中国社会は全然変わらなかった。その反省が正に、この表現に出て来ているわけです。これは思い付きで言っているのではなくて、1989年以降の政策がうまく行かなかったということを認め、もうこれでは駄目なのだということを認めたのです。
演説の内容はアメリカ政府の総意
宮家)それからもう1つ大事なことは、ペンスさんはまともな人だから、演説をやるときはきちんと原稿を読むのですよ。この演説は、アメリカにも役人がいて、彼らが知恵を絞って各省庁間で1つ1つ文言を調整しながら、それなりにしっかりと考えられてできているわけです。だから、これは思い付きで中国に喧嘩を売っているのではなく、アメリカ政府全体として、2018年10月に第1弾が出ましたが、その続編として発表されたものです。状況は厳しくなっていて、中国がいちばん嫌がっている人権問題などにも言及するようになったし、更には尖閣問題まで言及しています。この状況は中国にとって、決してよくないと思います。
政権が民主党に変わってもアメリカの対中政策は変わらない
飯田)下から積み上げられたものでもあるし、アメリカ政府の総意でもある。そう考えると、ペンスさん自身がタカ派だと言われることもあるけれど、仮に民主党政権に変わったとしても、この基本的なスタンスは変わらないだろうということですね。
宮家)民主党は労働者の党でもあるし、労働組合は弱まったとは言え、まだ力はあります。民主党は、中国の製品が彼らを脅かしているのだというレトリックを当然使うでしょうから、私はトランプさんがいなくなろうが、ペンスさんがいなくなろうが、対中政策が厳しいという状況は続くと思います。
日本にとっては日中関係を改善する絶好のチャンス
飯田)そのアメリカの姿勢があるなかで、日本としてはどのようなスタンスを取って行くのかということですね。
宮家)それはもう、日中関係を改善する絶好のチャンスだと思いますよ。米中関係が悪いときは、日中がよくなりますから。しかしそれはあくまでも戦術的なもので、尖閣問題や靖国問題で中国が譲歩するということではありません。あくまで一つのチャンスではあるということです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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