ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月30日放送)に国際政治学者の細谷雄一が出演。ISの後継者殺害の表明の目的ついて解説した。
トランプ大統領がIS(自称イスラム国)の後継者も殺害したと表明
アメリカのトランプ大統領は10月29日にツイッターで、死亡したIS(自称イスラム国)の指導者バグダディ容疑者の後継者についても、アメリカ軍が殺害したと表明した。名前は明らかにしておらず、具体的にどの人物を指しているかは不明。
飯田)中東情勢がどうなって行くのかというところですね。一気に動き出しました。
細谷)米中の貿易摩擦で世界経済が不安定になっていますが、これはアメリカにも跳ね返って来ます。アメリカは来年(2020年)に大統領選挙がありますが、いまのトランプ政権にはほとんどいいニュースがありません。来年の大統領選挙に向けて、トランプ大統領としては1つでも成果を見せたいわけです。この数ヵ月、トランプ政権としてバグダディ容疑者を捕まえる、あるいは殺害するということは何があっても優先したい、重要な目標だったと思います。トランプ大統領は今回の報道を大々的に演出して、「偉大な大統領として世界最大のテロリストを殺害したのだ」ということを、上手く選挙に使おうという意図が強く見えます。
飯田)これもただ発表しただけではなく、いろいろなサイドの情報が出て来るということは、全体としてもっと演出したいということですか?
シリア北部からの米軍の撤退を正当化する狙い
細谷)シリア北部からの米軍の撤退によって、クルドとトルコとの間で戦闘が始まりましたよね。あの問題について、アメリカ国内ではトランプ大統領が指導者としての批判を受けているわけです。政局的な部分もあると思いますが、それに対して今回の報道は、トランプ大統領のタイミングが絶妙なのです。世界最大の危険なISのバグダディ容疑者を殺害したということで、「これで危機がないから米軍を撤退できる」と。トランプ大統領は米軍を中東から撤退させたいのです。自分のシリア北部からの撤退方針は間違っていなかったのだという意味でも、今回のバグダディ容疑者の殺害を利用したいわけです。
飯田)会見のなかではトルコやロシアの名前も挙げて、協力していたのだと。ロシアゲートまで吹き飛ばそうという意図もあるかと思ったのですが。
細谷)いまのトランプ大統領の考え方は、中東はトルコとロシアに任せて自分たちは撤退するということです。これは大変な変化で、1950年代にイギリスからアメリカへ中東での覇権国家が変わりました。それに相当する変化になるということです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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