ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月8日放送)に外交ジャーナリストの手嶋龍一が出演。トランプ大統領が1週間以内にISを制圧するとした演説について解説した。
アメリカが来週にもISの完全制圧を発表へ
アメリカのトランプ大統領は6日、ワシントンでの国際会議で演説し、イスラム過激派組織IS、自称イスラム国が1週間以内にシリア国内の全支配地域を失うという見通しを示した。
飯田)ISとの戦いについて、国務省で開いた有志国連合の閣僚会議で明らかにしたということで、勝利宣言のように見えますが。
手嶋)大統領選挙を2年後に控えているトランプ大統領は、成果が欲しいですから、「自分がISを打倒した」と高らかに勝利宣言をするのだと思います。一般教書演説でも、「朝鮮戦争が避けられたのは自分の力量だ」と言っていました。事実とはかなり違いますが、すべて「良いことは自分の成果」だと言うトランプ大統領の一環です。
アメリカが撤退すればさらに情勢が悪化するシリアとイラク
手嶋)情勢だけを見たら、シリア全体から言うと、ISはかつて3分の1、場合によっては半分近くを制圧していましたから、それを縮ませて打倒されたのはまんざら嘘ではありません。ところが、それによってシリアや隣のイラクに平和が訪れたのかと言うと、むしろ逆です。これまではアサド派と反アサド派の武装グループとISの三つ巴だったわけです。ISはいなくなるのですが、反アサド派もアサド大統領もアメリカと敵対していますから、残り2つは共にアメリカにとって敵対勢力ということになります。反アサド派を見てみますと、その背後にはイラン。この国はアメリカと核合意を巡って厳しく対立をしている。更にもう1つ、ロシア。アメリカとロシアは対立をしていますから、全部アメリカと敵対しているところになります。ISが打倒されたということで、この地域からアメリカが完全撤退をしてしまうと、ただ単に自分たちはいなくなるということになります。
単なるシリアの情勢に留まらず、戦後一貫して中東情勢は、石油もありますし重要なところです。日本にとっても重要な中東全体が戦乱のなかで、とにもかくにも安定を保って来たのは、超大国アメリカの影響力という部分があります。しかし、アメリカは引き始めている。これを「中東でのアメリカのダンケルク撤退作戦」と呼んでいますが、そのきっかけになって来ます。日本にとっても大変気がかりな動きとなります。
飯田)反アサド派を推していたクルド人の方々を、アメリカがバックアップしていたと言われています。その人たちはどうなるのか、また一緒に推していたのはサウジアラビアだと思いますが、彼らはどうなのですか?
手嶋)サウジアラビアも、この点についてはアメリカと連携が取れているかどうかわかりません。いままで反アサド派の一部をバックアップしていたということになりますと、この背後には、各地の勢力があって、全体としては本当にグレーです。アサド大統領の背後にはロシアとイランがいる。反アサド派ですら定かではないのですから、これは本当に混迷した情勢だということになって来ますね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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