非常に複雑なロヒンギャ問題~複眼的に見なくては理解できない

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ニッポン放送「飯田浩司の OK! Cozy up!」(9月4日放送)にジャーナリストの有本香が出演。ロヒンギャ問題について解説した。

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ミャンマー最大都市ヤンゴンの裁判所から連れ出されるロイター通信のワ・ロン記者(中央)(ミャンマー・ヤンゴン)=2018年9月3日 写真提供:時事通信

ロヒンギャ問題を巡る取材で、ロイターの記者2人に禁固7年の判決

ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャへの迫害問題を取材していたロイター通信のミャンマー記者2人が、警察の極秘資料を不法に入手したとして起訴された事件。ミャンマーの最大都市ヤンゴンの裁判所は昨日、2人に禁固7年の判決を言い渡した。

飯田)欧米のメディアなどは民主主義の破壊であるだとか、かなり激しく批判しておりますけれども。

有本)ツイッターでもそういうお声を頂いていて、スーチーさんからコメントすらないのはどうしたんだ、ということですけれども。これは複雑だと思います。日本のメディアでは、毎日新聞が大きく取り扱っています。経緯を追ってみれば、この記者2人が罠にかけられて、資料を渡すと言われて警察関係者と接触したところ、その直後に逮捕された。裁判の過程で、「上司から命令されて2人を罠にかける手はずでした」と証言した警察官がいるということです。
経緯そのものがそういう感じで、彼らはミャンマーの国家機密に触れた、国家の敵・あるいはテロ組織を利する資料が含まれていると、でもそれがどんな情報かは当然言っていないのです。この場合、内容を言ってしまうと逆にまずい、ということなんですけれども。毎日新聞は、大きく取り上げている割には、そこは全く触れていません。他の情報を見ると、どうもこの記者の携帯電話を押収している。そこには、政府要人の異動計画の情報があったのではないか、と言われています。これは大きなことだろうと思います。

飯田)治安だとかテロ対策の面で見ると。

有本)通常あの種の国だと、そういうものは公表されませんから。どこの国でも事前には公表しませんが。そういう情報が入っていたのではないか、あるいは、ミャンマーが反政府組織と認定している側とのコンタクトの履歴があったのではないか、とも言われています。その真相がわかりづらい。ただ世界中の人権団体と称するところからは、相当な非難の声が上がっています。

非常に複雑なロヒンギャ問題

有本)しかし、ロヒンギャ問題というのはかなり背景があります。ロヒンギャという名前も、自称しているのはイスラム教徒、ベンガル系の人たちですが、政府はミャンマー国内でロヒンギャという名前すら認定していません。ベンガル族だと言っている。このベンガル族の人たちというのは、もともとバングラデシュとの国境に多く住んでいるのですが、英領時代にイギリスがミャンマー統治をする際、バングラデシュ側から連れてきた人たちの子孫であると。
しかしベンガル系の人たちが全員よそから来たというわけではなく、いまはミャンマー国民として、エリート層になっている人も当然いる。そういう人たちとは違う形で、いま新たに難民が発生している。ベンガル系、あるいはイスラム系のいわゆる武装勢力、そういう人たちもいて、それに対する国軍が掃討作戦をやったりする。その中で更に難民が出る。あるいは一般人に犠牲者が出る。こういった状況で、かなり混迷しています。

ロヒンギャを装って入ってくる流入民もいるという複雑さ

有本)もう少し言うと、バングラデシュ側から、ロヒンギャ族だと装って新たに入ってきている流入民もいるということで、事態は本当に複雑です。ミャンマー全てが弾圧しているんだ、という一色の話ではありません。事態は相当複眼的に見ないといけない。毎日新聞の報道は、西側欧米諸国の人権団体等々が言っている話をそのままなぞっているな、という感じですね。

飯田)ロヒンギャ可哀想じゃないか、という一点だけで。

有本)可哀想ではあるのですけどね。

飯田)国内の世論というか、一般の人々の感情としても、治安維持の面も含めて国軍の掃討というのは確かに必要なんだという。

新たに安住の地を用意することに国際社会が協力する

有本)そういう声もありますね。それからロヒンギャ問題という点について、ミャンマー国内の人たちは自国で大変なことが起きていて、政府や国軍を非難しようという感じにはなっていません。ですから、つい最近まで国軍と戦闘を繰り広げていた、内戦の相手だった少数武装勢力のボスたちから見ても、ロヒンギャ問題は自分たちとは違うと言っています。
前に違う番組で飯田さんとご紹介しましたが、井本勝幸さんという、少数民族と国軍の橋渡しをして、ミャンマーの内戦を止める努力をしている日本人がいます。井本さんはロヒンギャ問題についても、いろいろな形で動いておられます。ロヒンギャの人たちがいま言っている、彼らが望んでいるような形で国境地帯に定住するということは、必ずしも簡単なことではない。だから難民の人たちを中心に人口島などを作って、そこに住んでもらうのがいいのではと、井本さん独自で動かれていますけども。この軋轢というのは非常に根が深い。新たにミャンマー国内にいるイスラム教徒、かつベンガル系人の安住の地を用意する、それに国際社会が協力をしていく。こちらの方がむしろ建設的で、ただミャンマー政府や国軍だけを責めたてるというのは、いい結果を生まないと思います。しかし現場でのいきすぎた暴力については、何らかの形で国際社会の目が入る必要があるとも思います。

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