NATOだけではない~このタイミングで動くヨーロッパの重要な問題

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月10日放送)にジャーナリストの有本香が出演。11日からベルギーのブリュッセルで開かれるNATO北大西洋条約機構の首脳会議について解説した。

NATOだけではない~このタイミングで動くヨーロッパの重要な問題

11日からNATO首脳会議開催

NATO北大西洋条約機構の首脳会議が現地時間明日11日から2日間の日程でベルギー・ブリュッセルで開かれる。アメリカのトランプ大統領が再三にわたって欧州各国に要求している国防費増額への対応が焦点となる。

飯田)NATOは2024年までに、加盟国の国防費を各々の国のGDPに対して、2%以上に引き上げるという目標を掲げています。しかしながら2018年に達成が見込まれるのは加盟29カ国のうち、8カ国のみとなっています。国防費増額に転じたドイツでも19年の計画で比率が未だ1.31%に留まっている。ドイツはGDPのパイが大きいですからね。2%にしてくれればアメリカにとっては相当軽減になるのではないかという話もありますが、なかなか渋いということです。

有本)そもそもこのNATOという集団安全保障の枠組みというのは、1940年代後半、45年に第2次大戦が終わって、その直後にできたものが前身です。このときにその狙いは何だったかというと、当時、この枠組み自体を作った責任者だったイギリスがアメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを封じ込めるための枠組みであると、こう言っているわけです。
ですから、いろいろな意味合いから対ロシア(当時はソ連でしたが)という意味合いがとても強いのと、当時としてはドイツを抑え込もうという、まさに戦後の枠組みだったのです。これが安全保障環境が変わってきたということがあり、冷戦の崩壊後、ソ連の脅威というものは一時的にはなくなった。ところが、いままた、ロシアの軍事的脅威があるというように西側の国々を中心にヨーロッパ諸国は思っているという状況のなか、ここへ来て、トランプ大統領が出てきたことによって、アメリカとロシアの関係が伝統的なものから離れてしまっていますよね。ここがまず、大きなところかなと思います。

飯田)それこそトランプさんの欧州歴訪のなかでプーチンさんとも会う。

変化したヨーロッパとアメリカとの関係

有本)「会う」という状況ですからね。まあそういう意味ではヨーロッパとアメリカのいままで一枚岩で安全保障に関してやってきたというところが随分変わってきた。
それともう1つは防衛費の負担ですよね。いま現在は29カ国中5カ国しか2%アップしているところはないんですよ。アメリカとかイギリスを除けば、例えば、ギリシャとかポーランドとかエストニアとかですとね、こういう言い方したら申し訳ないけどGDPが小さい。ですからこの全体の軍事費の割合を見るとほかの28カ国全部足してもアメリカの方が遥かに大きいということになっています。これはトランプさんとしては中間選挙もあるから、アメリカの世界での軍事的な負担を減らしていくというのは公約でしたから。ここはやっぱり何とかしないといけないっていうのはありますね。
それとね、日本の安倍総理がヨーロッパを訪問することになっていましたね。中止になったというのは外交的には少し痛いのですけれども、それはどういうことかというと、この欧州とアメリカとの間で集団安全保障体制というものが、いままでからは見直しみたいな方向に来ているわけです。ここへすかさず入ってきているのは中国なんですよ。丁度、李克強さんがドイツを訪問しています。

アメリカとヨーロッパの間に入り込もうとしている中国

飯田)まさにこのタイミングで。

有本)まさにこのタイミングで。それで、彼は何をアピールしているかというと、ドイツと非常に近いですよ、ということをアピールし、トランプさんに牽制をする。自由貿易でやっていくんだと。ダボス会議でも冗談かっていう、中国の首相がアメリカに対して自由貿易でいこうと説くというようなことになっているでしょ。こういうような経済を使った形でアメリカとヨーロッパの間にこう入り込もうと、画策しているわけですね。
ですから、ここで日本が行く、ということは非常に意味があったのですが、中止したのは災害対応ということを除けば、ちょっと痛いことだったなと思います。ですから世界はいまそういうふうに動いているなかだってことがわかるニュースではありますね。

飯田)NATOの首脳会議でそれこそヨーロッパ各国の首脳が集まるところで安倍総理もブリュッセルに乗り込む、という形でした。

経済・安全保障・人権問題ということに関してヨーロッパで外交が動くタイミング

有本)そうですね、そういうタイミングでした。EUのこの議長、なんでこれに非常に前向きかというと、もちろんEPAの問題もありますが、李克強さんがドイツに入るという直前にEUとしては中国の人権問題をもう一度きちんと確認しようということで、例えば、チベット人とかウイグル人だとかそういうヨーロッパで活動しているリーダーたちを呼んでヒアリングを改めてしています。牽制もしたりしてるんですよ。そういう点では、経済、安全保障、人権問題、そういうもの合わせて、ヨーロッパで非常に外交が動くときだったんですね。ですからここに日本の総理が行く行かないっていうのは実はかなり重要なタイミングだったんですけれども。

飯田)ドイツは一時期経済的なつながりを中国に求めて、このウイグル人あたりの問題に目をつぶっていたところありますよね。チベット人に対しても。

有本)ドイツはちょうど連立危機なんて言われてるじゃないですか。

飯田)メルケルさんの足元が弱っているなんて言われてますね。

有本)メルケルさんも一番の危機じゃないですか。例の難民の受け入れの問題やなんかで大分譲歩せざるを得なくなっているようなことがありますね。

飯田)いままで100万人でも受け入れるといっていたのが国境でかなり厳しくチェックを入れて、入れないようにすると。

有本)そういうふうに方針転換を余儀なくされましたよね。ま、そういう点ではドイツの情勢から見てもやっぱりここでいま中国との関係というのも世論からすれば、見直しを考えて欲しいというようなところもあるわけです。
それと、中国市場というのがもっとおいしいと思ってたんでしょうね、車やなんかで。しかし、必ずしもそういうわけじゃないというところも見えてきたというのもあるんだと思います。それと今回はイギリスでも、トランプさんに対するアンチ・デモが起きたりなんかしてる。イギリスのメイ政権も閣僚が次々に辞任したりして、ちょっとガタガタしています。

飯田)そうですね。

有本)そういうふうにヨーロッパの主要国が、政権が不安定化しているというなかでもある、というところでいまここがあまり揺らいでしまうと世界にも非常に大きな影響を与えてしまう。それから、中東はどうするのか。トランプさんはロシアにかなりイニシアティブ取って貰っていいと言っているけれど、そうはいかない、とヨーロッパと綱引きが起きている状態ですよね。

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