温泉エッセイスト・山崎まゆみ「私が混浴温泉に行く理由」
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、温泉エッセイストの山崎まゆみが出演。温泉文化の素晴らしさについて語った。
黒木)今週のゲストは温泉エッセイストで跡見学園女子大学兼任講師の山崎まゆみさんです。数多くの温泉に入っていらっしゃいますが、行きたいけれどまだ行けていない温泉はあるのですか?
山崎)世界中の温泉のまだ32ヵ国しか行っておりませんので、南極の温泉も行ってみたいです。
黒木)いいですよね。
山崎)あとは、南米の温泉も制覇しなくてはいけません。夢は広がりますけれども、世界中から日本の温泉にもっと来ていただきたいと思っています。私はバリアフリー温泉もライフワークで行っているのですが、それ以前から15年ほど、外国の方に日本の温泉文化を発信する仕事にも取り組んでいます。観光庁さんとともに行っているのですが、訪日外国人観光客の誘致や温泉地側の受け入れ整備も含めて、日本の温泉のPR活動を行って来ました。温泉旅館は食もいただけて、温泉に入り浴衣も着ることができる。日本の温泉文化、日本文化、風習がきゅっと詰まっているのが旅館なので、温泉に行く以上に、来ていただく活動をしたいと思っています。
黒木)山崎さんはいつごろから温泉好きになられたのですか?
山崎)もともと温泉は好きだったのですが、仕事がきっかけでした。小学館の『BE-PAL』というアウトドア雑誌がありまして、そこで全国の混浴をめぐる連載が始まったのです。
黒木)混浴。
山崎)はい。編集長から「あなたは温泉のモデルさんになれるか、温泉に入れるか?」と聞かれまして、当時は始めたばかりのころでしたので、温泉で入浴するシーンを公にさらすのは恥ずかしいと思いました。ですがそのときに、両親のことを思い出したのです。私の両親は子どもに恵まれなかったので、新潟県の実家から車で1時間ほどのところにある、新潟県最古の湯としても知られる「栃尾又温泉」という子宝温泉に通って、私ができたそうです。本気で温泉に恩を返すつもりで、バリアフリー温泉をはじめ外国の方に日本の温泉を知らせることをしています。
黒木)そのお話を、ご両親から聞いたということですよね。
山崎)ずっと聞いて育ちました。
黒木)その混浴のルポをお受けしたというのが、全国の温泉をめぐるきっかけに。
山崎)なりました。1997年の冬なのですが、温泉に入るときも気持ちがよくて、お湯を共にされているお相手も気持ちがよくて、すごく幸せな一期一会だったのです。もし宿紹介のカタログ的な仕事でしたら、20年以上も続かなかったと思います。温泉を介した人との出会いの豊かさや、温泉を通して人を見るという仕事でしたので、これだけ長く続けて来られたのだと思います。
黒木)そうですね。お湯に入るだけではなくて、おっしゃったように一期一会の出会い。そういうものが心の癒しになりますよね。混浴は男女一緒ということですよね?
山崎)男女一緒です。九州でも熊本県の『地獄温泉清風荘』さんなど、長くお湯を守り伝えられて来たところは、湯治場が多いのです。お湯も確かである。また湯治場は自然に癒されてこそ湯治場なので、ロケーションも素晴らしく、お湯と自然環境がベストな状態が混浴のお風呂だったりもします。そんな人との出会いをエッセイに書くのが、温泉エッセイストのスタートでした。
黒木)混浴は誰と入ったのですか?
山崎)その土地の方とです。
黒木)そういう企画だったのですか?
山崎)観光客の方もいらっしゃいますが、ほとんどがその土地の共同浴場のお風呂なので、土地のおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に入りました。私は毎日そのお湯に入っているおじいちゃん、おばあちゃんからお湯の効果や効能を教えてもらい、温泉エッセイストの温泉の基礎知識を得ました。やはり毎日入っている方がいちばんです。
山崎まゆみ(やまざき・まゆみ)/温泉エッセイスト
■新潟県長岡市出身。温泉エッセイスト。
■世界32ヵ国、1000ヵ所以上の温泉を巡り、温泉での幸せな一期一会をテーマにテレビ・ラジオ・雑誌・新聞などでレポート。
■また温泉宿向けの講演、内閣府ユニバーサルデザイン評価会議に参画するなど、誰もが楽しめる観光地や宿の啓蒙に取り組む。
■現在、跡見学園女子大学兼任講師、にいがた観光特使などを務める。
■近著に『さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう! 準備から旅の注意点まで、知って安心の親切マニュアル』(河出書房新社)などがある。
ENEOSプレゼンツ あさナビ(11月8日放送分より)
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳