ゴーン被告出国は明確な違法行為~公判での無罪主張から“逃亡”しただけ

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月7日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。カルロス・ゴーン被告の逃亡について解説した。

公判前整理手続きのため、東京地裁に入るカルロス・ゴーン被告=2019年05月23日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

相次ぐ保釈中の被告の逃亡事件~法務省は保釈制度の見直しへ

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告がレバノンに無断で出国した事件を受け、法務省は再発防止に向けて保釈制度を見直す検討に入った。被告に対してGPSを搭載した機器の装着を義務付ける案も検討対象となる。

森田耕次解説委員)東京地検特捜部は偽証の疑いでゴーン容疑者の妻、キャロル・ナハス容疑者53歳の逮捕状を取りました。特捜部によりますと、キャロル容疑者は2018年の4月、東京地裁で行われたゴーン被告の会社法違反、特別背任事件に関する証人尋問で虚偽の陳述をして偽証した疑いということで、特捜部が偽証容疑で妻、キャロル容疑者の逮捕状を取ったと。

野村)中身はわかりませんが、宣誓して証言したのに、そのなかに嘘があったということなのでしょうね。

森田)ゴーン被告はレバノンまでの中継地であるトルコ・イスタンブールまでプライベートジェット機で移動する際に、大型の音響機器用の黒い箱に身を隠していた可能性が指摘されているのですが、イギリスの新聞のフィナンシャル・タイムズによると、イギリスの退役軍人がこの逃亡に関わった疑いがあると伝えています。この退役軍人はUAE(アラブ首長国連邦)を拠点に航空や物流企業を経営するマイク・ダグラスという人物で、実際のゴーン被告の逃亡にはアメリカの陸軍特殊部隊で活動した経験を持つ民間警備会社の2人が同行したと見られています。トルコ経由で2機のプライベートジェット機を利用したと見られていて、これを手配したトルコの運行会社にダグラス氏の関係する企業が一部の代金、およそ1900万円を支払っており、その明細書が存在することがわかったということです。一方、アメリカの新聞のウォール・ストリート・ジャーナルによると、被告の逃亡計画には多国籍の10人から15人程度のチームが関わっていて、チームは20回以上にわたって来日して、国内の少なくとも10の空港を下見したと。関空のプライベートジェットのターミナルが他の空港よりも人が少ないし、大型の荷物は検査場に入らないということがわかって関空にしたと。計画には数100万ドルの費用がかかったという報道もありまして、相当計画的だったようですね。

関西空港を飛び立つ旅客機

この出国は明確な違法行為~事件を受けて出入国の検査が既に厳格化

野村)卑劣極まりないと思うのです。結局、不正に出国すること自体は違法行為ですから、そのことを承知しながらみんなでチームを組んで、日本の制度をある程度侮辱する行動に出たことはしっかりと批判していかなければならないと思います。何となくこの脱走劇をドラマ的に描き過ぎている部分があると思いますが、明らかな違法行為だということは確認しておかなければいけないと思います。

森田)航空法では危険物の機内持ち込みは禁止なのですが、プライベートジェット機については保安検査の実施は機長や運行事業者に委ねられていたということで、赤羽国土交通大臣は7日の記者会見で羽田と成田、中部、関空の4つにあるプライベートジェット機の専用施設での大型荷物の保安検査を6日から義務付けるということにしたようです。

野村)日本としては出国審査の部分を改善していかないと、犯罪者がどんどん逃げていってしまう危険性があるということですよね。これまで、荷物の保安検査は他の乗客の生命や安全を守るために実施されている面がありました。爆発物を持ち込まれたりすると、一緒に乗っている人たちが危害を被るということがありました。プライベートジェットは自分だけですから、自分自身でわざとそういうものを乗せないだろうという前提を置いてしまっていたのです。ここの部分は今回の問題で反省すべき点だと思います。

ニッポン放送「ザ・フォーカス」

保釈の体制も厳格化を検討~GPS装着義務化も視野に

森田)今回はX線検査をしなかったということですものね。それから一方で、法務省は被告の逃走について、いままで刑務所から逃げた場合などには逃走罪が適用されたのですが、保釈中の被告にも拡大しようということで、法改正を法制審議会に諮問する方向だということです。それから、控訴審判決公判への出廷の義務化やGPSの装着も検討課題になるということで、刑法、刑事訴訟法の改正を早ければ2月の法制審に諮問するということのようです。

野村)これまで日本の司法制度というのは、否認している、自分は無罪だとしているうちは保釈を認めないという形にしていたのです。保釈を認めないということ自体が大きな人権侵害になっている場合があって、それは自白を強要する方向へ向かっていくのです。出たかったら自白した方がいいよと。これは明らかに冤罪を生んできた部分があるので、今回も含めて本当に逃亡の恐れがあるのか、証拠隠滅の恐れがあるのか吟味した上で、なるべく保釈していこうという方向になっているのですよ。日本としてはこれまで保釈してこなかったので、保釈のさせ方がずさんなのです。ゴーン被告の事件だけでなく、2018年は神奈川県や大阪府でまさに保釈中の人たちが逃走するようなことが起こっていました。こういうことを総合的に見た上で何が合理的なのかを考えていかなければいけないわけですが、いまあったGPSの話だと、弁護士の側からすれば、その人の身柄を拘束しているのに比べるとGPSを付けてでも出して貰った方がいいという発想はあるのです。

つまり、一定の勾留施設のなかに閉じ込められている状況に比べると、外に出られた方が自由はあると。だとすれば、本人がある程度GPSを付けてでも出たいと言うのであれば、GPSを付けてでも出して欲しいと弁護側は要請していく形になると思うのです。そこは本人の了解があると思うのですが、比較考慮したときになかで閉じ込められているよりは、GPSの方がいいと言う人は多くいると思われます。

公判前整理手続きのため、東京地裁に入るカルロス・ゴーン被告。右は弘中惇一郎弁護士=2019年05月23日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

8日の記者会見で何を語るか~日本の司法制度の今後は

森田)一方でゴーン被告の方ですが、アメリカのフォックステレビの取材に応じたようで、日本の司法の不公平さに憤慨したということで、正当な裁判を受けられないからレバノンに逃亡したのだと。保釈条件である妻のキャロルさんとの接触が禁止されたことが逃亡の最後のひと押しになったとも語っているということで、8日の夜にベイルートで記者会見が予定されているようですね。

野村)確かにいろいろな意味で日本の司法制度に問題がないわけではないとは思いますが、彼は有罪になることから逃げたのですよ。日本の司法制度に対して言うのはいいけれど、実際にそうだとすれば公判で無罪を主張すればよかったのであって、まもなく公判が始まる状況のなかで有罪になることから逃げたようにしか見えないので、いくらそういうことを言っても日本のなかでは通用しません。ただ、あれだけ発信力のある人ですから、記者会見すれば世界の世論は、わからないまま、日本の司法制度は酷いということになります。酷い面は一刻も早く直さなければいけません。直した上で、日本の司法制度に問題がないことをアピールしていかなければいけなくて、大事なのは4月に京都で5年に1回の刑事司法に関する国際会議があるのです。ここで、世界中の人たちは日本が何を発信するのか注目してくると思うので、日本の司法制度が世界水準だということを言えるようにしていかなければいけないと思います。

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パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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