「宿題」を廃止したわけ ~ 型破り校長の改革論

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千代田区立麹町中学校・工藤勇一校長 × 大橋未歩 対談インタビュー
<第1回>

2014年から千代田区麹町中学校の校長を務める工藤勇一氏。宿題、定期テスト、固定担任制の廃止など、異例の改革を次々と行う手腕には多くのメディアが注目し、麴町中学には文部科学省など全国の教育関係者が視察に訪れる。その大胆な改革の根底にある子育て論についてまとめた『麴町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)を著した工藤校長に、フリーアナウンサー・大橋未歩がインタビュー。ニッポン放送「大橋未歩 金曜ブラボー」(2019年12月20日放送分)での対談の再録として、全4回にわたりお届けする。

工藤勇一 麴町中学校長

■宿題をやめたわけ

「現在の麴町中学は公立中学とは思えない校内改革をされています。工藤校長は度々メディアにも出演されて、話題になっています。『子どもを入れたい学校NO.1』とも言われている公立中学ですが、一見非常識とも思われる大胆な改革を実施されていますが、お話を伺ったら、むしろ納得しました。いままで当たり前にしてきた常識を1度疑ってみる、という新しい気づきをいただけるお話でした」……大橋は、まずインタビューを振り返り、工藤校長の考え方に深く共感したことを語った。

【工藤 勇一 氏 プロフィール】
1960年、山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部を卒業後、山形県と東京都の公立中学校で教員。その後、東京都や目黒区、新宿区で教育委員会に勤め、2014年から千代田区立麴町中学校の校長に就任。麴町中学では宿題の廃止、定期テストの廃止、固定担任制度の廃止など異例の改革を実行。その日常識とも言える改革は多くのメディアで取り上げられ、麴町中学には文部科学省など全国の教育関係者が視察に訪れるようになった。

 

(※以下、「――――」部分はインタビュアー・大橋のコメント)

―――― 工藤校長は、どのような学生でしたか?

工藤:全然自慢できるような学生ではありませんでした。高校時代も真面目ではないし。みんながっかりするので、あまり言いたくないですね。

―――― 逆にそれが勇気を与えられるというか。私自身、学校が何のためにあるのかわからなくなってしまって、学校に行っていない時期がありました。『麴町中学校の型破り校長 非常識な教え』を読んで、共感する部分もありました。改革の1つとして宿題を廃止したということですが、どのような理由だったのですか?

工藤:宿題は、極端に言えば何の役にも立たないのですよ。昔、学校が始まった当時に宿題はあったのでしょうか。私が子どものころは、ほとんど宿題は出ていなかったです。皆さんの時代だとありますよね。でも、宿題がなかったら、自分で必要なものを勉強しますよね。

―――― 空いた時間に自分の好奇心が持てるものを。

工藤:自分の大事な時間が奪われるじゃないですか。

英語の授業でクラスメートと会話の練習をするフィンランドの子供たち。知識の詰め込みよりも考える力が重視されており、国際学習到達度調査トップとなった  撮影:2008年04月01日 撮影場所:フィンランド 写真提供:産経新聞社

■わかるようにする主体的な行動が重要

工藤:きょうは違う視点からお話しようと思うのですが、例えばフィンランドは世界最高水準の学力だと言われますよね。フィンランドの教育改革で最初にやったことは、宿題をなくしたことなのですよ。宿題を出されたら、宿題をこなすことが目的になるでしょう。

―――― とりあえずやらないと、と思います。

工藤:自分に必要じゃないものだとしてもやりますよね。特に一般的な子どもたちは宿題を出すことが目的になるから、わかることをやって、わからないことは飛ばします。勉強は、わからないものがわかるようになれば、学力が向上します。

―――― それが本来の目的であるはずなのに、とりあえず仕上げることが目的になってしまっている。

工藤:わからないものをわかるようにする作業は、けっこう大変なのですよ。調べたり、人に聞いたりしなければいけないですよね。それは、家庭にいては簡単にできません。いまはインターネットがありますが。

―――― わからないときって、何がどうわからないかもわからないですよね。

工藤:いちばん手っ取り早いのは友達に聞いたり、誰かとコミュニケーションを取って調べたりすることです。気が付いていないかもしれませんが、そのことは自分の人生においてとても凄い瞬間なのですよ。わからないものをわかるようにするには何らかのアクションが必要で、誰かに聞いてわかったという喜びもあります。人に聞いてもわからなかったら、違う人を探さなければいけなくなります。この行動パターンは、その後の人生を生きるスタイルになりますよね。

―――― アクションを起こすときには主体的に行動していますね。

工藤:まったく宿題を出されない場合、子どもたちがどのような行動パターンを取るかというと、自分に必要だと思うから勉強しますよね。それも、自分のやりたいことをやります。学校の勉強をやりたいと思うのか、絵の勉強をしたいと思うのか、好きな科学の本を読みたいと思うのか。フィンランドの子どもたちは、自分の興味のあることを勉強していると思うのですよ。自分の好きなものが科学だとすれば、科学の本を読み漁って、わからなければ誰かに聞く。それは友達かもしれないし、学校の先生かもしれないし、インターネットかもしれない。自分の興味のあることに何らかのアクションが必要だと思って、子どもが育っていきますよね。さらに、わからなかったらどういう行動を取ろうか、と考える子どもができます。これはとても効率的でしょう?

―――― 学びたいと思っているとき、頭は物凄く吸収するのですよね。

工藤勇一 麴町中学校長  写真提供:共同通信社

■与えられ続けると不満を言うようになる

工藤:フィンランドの子どもは成長していくと、勉強したいことを自分で探し当て、それがわからなければ解決手段も自分で選び、学力を伸ばしていきます。学校のカリキュラムをベースに学んでいるというよりは、自分の興味・関心を中心として、それがいろいろなものに派生していくわけです。日本のように無駄かもしれないことをこなすことが目的になっていった子どもたちは、問題解決ができるでしょうか。ずっと「あなたはこれがわからないから、これをやりなさい」と言い続けられるわけです。日本の子どもたちは「先生、僕、明日から勉強するよ」と言って塾へ行くわけです。これが笑い話ってわかりますか?

―――― 先生に向かって「塾へ行く」と言うのですものね。

工藤:学校で勉強しているのに、それと同じことを塾へ行ってやるのかと。でも、現状みんなそう思っているのですよ。

―――― 与えられ続けると、自分で責任を取らなくなってしまいますよね。

工藤:与えられることに慣れた人間は、与えられる質に不満を言うようになるのですよ。

―――― 担任の先生にもバラつきがあって格差が出てくるということで、そこも廃止されたのですよね。

工藤:担任の先生が決まっていると、与えられたものだから必ず不満を言うのですよ。担任の先生を比較することになるので、必ず不幸な先生が出てきます。どんなに優秀な教員を集めたって、あの先生は優秀でこの先生は優秀じゃない、と決まってきます。人は、誰かからあてがわれたものに不満を言うようにできているのですよ。特に日本はいろいろなことが与えられ続けて育っているので、不満を言うのが大好きなのですよね。何かに不満を言って、勝手に不幸になっていく。勝手に理想を抱いて不幸になっていくのが、いまの子ども、大人の世界ですよね。

大橋未歩

■「わからない、だからこの人に聞こう」で変わる

このパートのインタビューについて大橋は、自身の体験もあわせて実感を込めて振り返った。

「確かに宿題は、わかっているところを反復していたこともあったな、と自分でも思いました。量を仕上げることが要求されていたなと。工藤校長はそこを疑ってかかります。それよりも、わからないことをわかるようにすることが大事なのではないか。わからないことをわかるようにするとき、子どもはどういう行動を取るかというと、いろいろな人に聞きに行くという。そういった主体的なアクションを子どものときに考えさせることが大事なのではないか、とおっしゃっていました。確かにそうだな、と思いました。社会人になったときに、わからないことが恥ずかしいことではないと思えない時期もありました。『わかりません、教えてください』と言わない若者も増えているな、と思うこともあります。そうなるとチームの仕事も滞ったりします。『わからない、だからこの人に聞こう』という主体的な行動ができる教育を子どもに施すことができたら、社会に出たときに行動が変わってくるのではないかと思いました。これを中学校時代に学べる子どもたちはいいと思います」

 

次回・第2回(1月18日掲載予定)では、「対立は当たり前」という工藤校長の考えについて訊いていく。

番組情報

大橋未歩 金曜ブラボー

毎週金曜 13:00 - 17:20

番組HP

『“一緒に笑顔になる時間”「大橋未歩 金曜ブラボー」』金曜午後にお届けする、「トーク」&「ミュージック」を基本とした大型ワイド番組です。番組の大テーマは、「笑顔(Smile)」。パーソナリティ大橋未歩の明るい笑い声で、リスナーのあなたの笑顔を増やし、ガンバるあなたにとっての癒しとなれるような、そんな心地よい時間を届けます。


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