「垣花正 あなたとハッピー!」(1月15日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。現在の日本の英語教育について持論を展開した。
英語が話せるためにするべきことは何か
1月18日~19日に最後のセンター試験が行われます。来年度(2021年)からは大学入学共通テストが始まるのですが、改革の目玉である英語の民間試験導入の見送りということも踏まえて、教育論について話します。
見送りとなった英語の民間試験導入
英語の民間試験導入が見送りになったことは、とてもよかったと思います。そのきっかけをつくった萩生田文部科学大臣が失言をしなければ、こうはなりませんでした。彼がテレビ番組で言ったのは、裕福な家庭の子は他の子よりも回数を受けて、ウォーミングアップできることがあるかもしれないけれど、「身の丈に合わせて勝負して頑張って貰えばいい」ということです。確かにそうなのですよ。英語で話す能力は自転車に乗るのと同じなので、多く練習している方が上手くなるのです。そのウォーミングアップをするには塾に行かなければいけないので、お金持ちの子どもが有利になるというのは事実です。単に話す能力を調べるための民間試験を行った場合、何が起こるのかというと、当然受験料がかかるわけです。さらに、東京の人はあまり考えていないかもしれませんが、地方は受ける場所がないのです。場所にもよりますが、大都市まで交通費をかけて出て行って、人によっては宿泊費もかかります。そうすると、ますます地方の子やお金のない子が不利になってしまうのは明らかです。更に、民間の試験だけでなく記述式問題の採点も含めて、短期間でやらなければいけないので業者に委託することになり、そこが儲かるという構造になっていました。それが利権になってしまうのです。
政府がなぜ英語教育改革をやりたいのか~日本人に根強い英語コンプレックス
家庭の収入によって教育機会が平等でなくなる格差の問題と、民間試験導入による利権が絡むという危惧。ある意味で萩生田大臣は正直な人だったのです。そういうことが起きるとわかっていたからポロッと言ってしまって、「やはりそうではないか」と批判されました。そこまでして政府がやりたいのは、政府や有識者の人に英語コンプレックスがあるからだと思います。「自分が国際会議で活躍できないのは、英語が話せないからだ」と。なぜ話せないのかというと、学校でトレーニングをしていないし、入試でも問われなかったからだと言うのですが、私はそんなことはないと思います。
センター試験でいい点数を取った生徒はすぐに英語を話せるようになる理由
私がシンクタンクにいたとき、たまにお客さんがアメリカの会社になったり、海外の調査をしなければいけないときは、英語で話さなくてはなりませんでした。でも、きちんと英語の勉強をしていれば、慣れたら誰でも話せるようになります。その繰り返しなのですよ。普段は英語で話す必要なんて、ほとんどないでしょう。私は「英語が話せるかどうか」ではなく、「英語を話せる素養があるかどうかをテストすればいい」と思います。センター試験の監督をやっていて唯一の暇つぶしは、試験問題を見ることなので、10年以上ずっと問題を見て来ました。センター試験は、選びに選んだ優秀な大学の先生がこっそりと集まって、徹底的につくり込んでいるのです。とてもいい問題です。英語の試験だと構文の問題があって、「こういうことを言うためには、どういう順序で言葉を並べれば英語になるのか」をテストします。単語の正しい発音についても、マークシートでテストします。つまり、英語で作文ができて発音もできて、アクセントも正しい状態になっていないと、センター試験の英語は通らないのです。つまり素養、基礎の部分はこの問題でクリアできるのです。センター試験でいい点を取った子は、少し慣らしてあげればすぐに話せるようになります。それ以上の必要はないし、学校教育の英語は「こういう構造の言語がある」ということを勉強させるのが、大きな課題だと思うのです。
言語の壁はメンタリティーに関わる
日本の英語教育は「こんなに時間をかけてやっているのに話せない、だから教育が間違っている」というのが、根本的に改革をしたい人たちの考え方ですが、いまの教育は基礎が学べるいい教育です。そういう場へ行けば、最初は性格の問題もあって、恥ずかしかったりたどたどしかったりするかもしれませんが、基礎があれば話せるようになります。何を無理矢理変えようとしているのでしょうか。
英訳が難しい日本語
言葉のスタイルは人間の思考にも影響します。もっとも英訳が難しいのは、「大変だ!」という言葉です。日本人にとってはごく普通の表現です。しかし、これは何を指しているのかよくわからないのです。英語で考えると英語の発想になって、日本語で考えると日本語の発想になる。日本語は本当に英訳が難しいそうです。曖昧な言葉のまま話を進めようとするし。でも曖昧に考えているからこそ、日本の深みのある文化ができているわけです。英語を話せるかどうかということは、日本人のメンタリティーにも関わることなのです。
英語は何かを伝えるためのツールでしかない
英語を話すこと自体は、これから何の問題もなくなります。自動翻訳機が普及して、翻訳機を持っていれば何語でも話せるわけですよ。あとはその先で外国人とハグができたり、笑顔を振りまいたりという慣れが重要なのです。海外の調査でいちばん恥ずかしいなと思ったのは、外国へ行くとホームパーティーに呼ばれます。そこではトークの内容が教養に溢れているかどうかで、その人が評価されるというところです。つまり、中身があるかどうかです。私は「あなたは仏教信者ですか?」と言われて「はい」と答えたのですが、「仏教とは何ですか?」と言われて答えられませんでした。結局、英語は何かを伝えるためのツールなのです。そういう意味では、いまの英語教育、センター試験でも何の問題もありません。センター試験の問題を1度読んでみてください。
番組情報
ふつーの男・沖縄県宮古島出身の垣花正がお届けする、ニッポン放送が自信と不安をもってお送りする朝のワイド番組!レギュラー・ゲストとのコンビネーションもバッチリ!今の話題をハッピーにお届けしていきます!