大学共通テスト「記述式」その意味と目的~2次試験で除外検討も

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月14日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。大学入学共通テスト2段階選抜での「記述式」除外について解説した。

大学共通テスト「記述式」その意味と目的~2次試験で除外検討も

国語記述式「導入中止を」  大学入学共通テストへの国語記述式問題の導入中止を求め、記者会見した首都圏の高校生=2019年11月13日午後、文科省  写真提供:共同通信社

大学入学共通テスト、2段階選抜で記述式除外も

再来年2021年1月に初回が行われる大学入学共通テストに関して、文部科学省が全国の国公立大学に対して合格の可能性が低い受験生を門前払いする2段階選抜で、国語に導入される記述式問題の成績を判断材料から外すように求めることの検討を始めた。自己採点と実際の成績が食い違い、2次試験に進めなくなる受験生を減らすための措置。

森田耕次解説委員)再来年2021年の1月から始まる大学入学共通テスト。国語と数学に記述式を導入しようということですが、文部科学省が国公立大学に対し2次試験に進む受験生を絞り込む2段階選抜の際に、国語の記述式については判断材料から外すよう求める検討を始めたということです。自己採点と実際の成績が食い違って2次試験に進めなくなる受験生を減らすための措置だということです。記述式の問題自体は維持するということなのですが、大学入学共通テストではこれまでの大学入試センター試験と同じように自己採点をもとに出願する大学を決める必要があるのですが、国語の記述式問題については自己採点が難しいだろうと。採点ミスも起きやすい懸念もあります。文部科学省は2段階選抜の後に何らかの問題が判明すると救済するのが難しい、自己採点と実際の成績のずれによる混乱を防ごうということから、マークシート式の結果のみを判断材料とするよう大学側に求めたいということのようなのですね。

佐藤)文科省は弱気過ぎると思います。それから、この問題を野党が政争の具にしていますが、これはよくないでしょう。試行調査(プレテスト)をやっているのですが、野党の質問を聞くと、そもそもこれをちゃんと見た上で言っているのかと思います。どうして記述式を導入したのかというと、マークシート式だと実際には読めていなくてもとりあえずチェックをしておけば当たる場合があります。こういったことを避けて、本当に理解しているかを知るために入れたということで、意味があるのです。問題を見てみても、40字くらいのもの、20字くらいのもの、いちばん長いもので80字から140字なのです。しかも要約をするということで標準解答がありますから、それを見て採点すると。そして、みんな自己採点を学校の先生に見せるわけですから高校の先生はチェックできますし、予備校も無料診断をするのですよ。それを考えた場合、自己採点の大きなミスは先生などに見せないで過大に自分の点数をつけてしまう人、弱気で低く点数をつけてしまう人にしか起こらないので、普通に対応していれば大きな差は起きないのです。

大学共通テスト「記述式」その意味と目的~2次試験で除外検討も

記述式中止法案を提出  記述式問題導入を中止する法案を、衆院の岡田憲治事務総長(右から3人目)に提出する立憲民主党の川内博史氏(同4人目)ら=2019年11月14日午後、国会 写真提供:共同通信社

自己採点を含めて教育プロセス

森田)13日、首都圏の高校生のグループが文部科学省で記者会見をしまして、「自己採点が難しい。公平に採点することは不可能だ」という話をしているようです。

佐藤)でも、それは高校生たちに教育的な指導をしなければいけないので、自己採点で自分の力がどれくらいなのかということを標準解答から採点できないと放棄してしまったら、彼らは社会に出てから自分の文章が正しいのか判断できないということになります。この自己採点を含めて教育プロセスだということを言わなければなりません。当事者の声だから採用しなければいけない、ということは試験に関しては馴染まないのではないかと思います。

森田)採点業務を受注したベネッセコーポレーションのグループ会社の学力評価研究機構が文書を公表しているのですが、設問ごとに3人以上で採点を行うと。「公平でブレがない採点を行えるように準備している」ということです。設問ごとに2人の採点者が別々に行って、結果が一致すれば3人目の採点者が妥当かどうか確認し、異なった場合には経験豊富な別の採点者が判断するということで、非常に厳密な採点方法を取るのだということです。採点者は社員の他、大学や大学院の学位を取得している人、現役の学生も採点者のなかには入るけれども、面接で合格した人から選ぶと言っているようです。

大学共通テスト「記述式」その意味と目的~2次試験で除外検討も

ニッポン放送「ザ・フォーカス」

記述式でも採点は十分可能では

佐藤)現実的に、それでできると思います。それを国会のなかで大学生やアルバイトが入るとできないのではないかと言われていますが、これは何10万人も受けるテストですから、そのために正規の採点者を国が確保するのは非現実的です。それから、記述式の問題でそれでは採点にブレがあって不公平だということであれば、私がいま学長の特別顧問と神学部の客員教授をやっている同志社大学は昔から選択肢と記述式の併用問題なのです。

森田)同志社はそうなのですか。

佐藤)マークシートではないのです。毎年数万人受けるわけですから、そのなかにおいて採点がバラバラになるということはないですよ。記述式試験だから採点ができないと言うのは入試実務を知らない人たちの意見だと思いますね。司法試験だって2次試験は記述式なのですから。外交官試験も外務省の専門職員試験も記述式です。記述試験の客観的な採点基準はあるわけで、特に設問が80字から140字での要約ですから、標準解答のところから正確に採点することは出来ると思います。

森田)英語の民間検定試験は結局見送りとなりましたが、この辺りはどうでしょうか。

佐藤)これは読む、聞く、書く、話す4能力ができるという基本的な方向性は正しいです。6年間英語をやって、一番の頂点は大学入学時点で、それから下がっていって40歳になるころには中学2年生くらいになってしまうこの実態をなんとか変えなければいけません。しかし、技術的な落とし込みが不十分でした。6つの異なる試験での評価は難しいです。これは大学入試センターが問題をつくった方がいいですよね。静かな環境で政争の具にしないことが重要だと思います。

ザ・フォーカス
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錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。

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