ニッポン放送「ザ・フォーカス」(3月19日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。増え続ける児童虐待の対策案について解説した。
千葉県野田市の小4女児虐待死事件~父親に懲役16年の判決
千葉県野田市で2019年1月、小学4年生の栗原心愛(くりはら・みあ)さんを虐待し死亡させたとして、傷害致死などの罪に問われた父親の裁判員裁判。千葉地裁は19日、「前例を超えて極めて悪質」として懲役16年の判決を言い渡した。
森田耕次解説委員)2019年1月に小学4年生の栗原心愛さんを虐待して死亡させたとして傷害致死罪に問われた父親の勇一郎(ゆういちろう)被告42歳に対し、千葉地裁は「尋常では考えられないほど陰湿で凄惨な虐待だ」として求刑18年のところ懲役16年の実刑判決を言い渡しました。これまでの児童虐待事件と比べて重い量刑です。判決理由で裁判長は動機について「理不尽な不満のはけ口として虐待した」と指摘し、「心愛さんを助けようとした児童相談所の職員を脅すなど、社会的介入を困難にしたすべての責任は被告にある」と述べました。また、心愛さんが死亡に至るまでの暴行については「食事を与えられず、冷水シャワーをかけられた」とする心愛さんの母親33歳の証言を採用した上で、「被告の説明は客観的な状況と整合しない。都合のいいところを述べて事実と主張しているに過ぎず、信用できない」と退けています。初公判などでは「私が心愛の未来を奪ってしまった」などと涙ながらに謝罪する場面もあったのですが、量刑は厳しい判決となりました。
佐藤)当然です、人が1人死んでいるのですから。子どもは逃げられないのです。大人だったら逃げられますが、子どもは保護者が保護しなければいけません。いままでのこの種の事件の量刑が軽過ぎるのです。
森田)2019年も1年間に摘発された児童虐待事件は18歳未満の子どもで1991人。前年よりも42%以上増えて過去最多ということで、減らないどころか増える一方です。
児童相談所職員に必要な“武器”
佐藤)そもそも、日本においてもっとも危険な場所は家庭です。親族間の殺人が殺人の約55%です。特に子どもに対する虐待は正当的に止めなければいけません。重要なのは、児童相談所は普通の公務員試験で入ってきた人が人事異動で回されます。この制度は変えなければいけません。専門職として、児童相談所に専門家として入る。心理学を学んだ人、大学院まで卒業した臨床心理士をしているような人たちをメインとした専門職にして。なおかつ司法警察員というものがいます。これは普通の警察ではなく、例えば林野庁の職員や麻薬取締官、労働基準監督署の人たちは自分の仕事に関して逮捕権や強制捜査権があるのです。もし児童相談所の職員が逮捕権や強制捜査権を持っているならば、今回のような父親がいた場合に暴言を吐いたり調査を拒否したりすることができるか。そういった武器を持たせるべきです。こういったことを国会で議論すべきなのです。私も刑事裁判の被告になったことがあるからよくわかりますが、立証はその人間に刑事責任を負わせるということだけです。なぜそういったことが起こったのかということについてはやりません。
森田)権力も与えていかなければなかなか直らないということですね。
佐藤)それから、高度な専門性のある人たちに担当させることが重要だと思います。
番組情報
錚々たるコメンテーター陣がその日に起きたニュースを解説。佐藤優、河合雅司、野村修也、山本秀也らが日替わりで登場して、当日のニュースをわかりやすく、時には激しく伝えます。
パーソナリティは、ニッポン放送報道部解説委員の森田耕次。帰宅時の情報収集にうってつけの番組です。