黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」（ニッポン放送）に看護師・僧侶の玉置妙憂が出演。心が楽になる生き方について語った。

玉置妙憂

黒木）今週のゲストは看護師であり僧侶の玉置妙憂さんです。玉置さんの著書『頑張りすぎない練習』には、「なるほどな」と思うところがたくさんあります。例えば、仕事に対しての向き合い方。「どんなお仕事でも、その仕事を自分がすることによって、どこかで必ず誰かが笑顔になっている」。「そういう向き合い方で仕事をしたら楽になりますよ」ということですね。

玉置）そういうことなのです。つながりと言いますか、自分が何かを行えば、その場で終わっているのではなくて、「そこから先、そこから先」とつながっていると思うのです。ある相談を受けたときにその方が、「私は本当に孤独で、生きていても仕方がないのです」とおっしゃいました。私は「しかし、おうちに帰って水道の栓を開いたらお水が出て来るし、ここまで来たのは電車に乗っているし、このコーヒーもどなたかが淹れてくださっています。そう思うと、あなたはいろいろな方に支えられているわね」と言いました。コーヒーを淹れてくださっているお仕事の方、電車を運転している運転士の方…その方はただ電車を運転しているのではなく、そのように「生きづらいな」と思っている方を支えるというところまで、実は1つ1つの動作が染みわたっているのです。そういうことをみんなが意識できると、もう少し楽になるのかなという気もします。

黒木）「こんな仕事で」とか、いろいろなことを考えている方もいらっしゃるかも知れませんね。

玉置）私たちは、自分のつくっている仮想現実に生きているのです。自分がこの世の中をつくっているのです。よく「何かのせいでダメだ」とか、「外からの力のせいでうまく行かない」などと考えがちですが、実は自分がそう考えているのです。起きていることは1つかも知れませんが、それを陰と取るか陽と取るかは、自分次第ではないでしょうか。陽とずっと取って行けば明るい人生になるのかも知れませんし、何でもかんでも陰と取ってしまえば、果たしてどうなるのかということもあります。一事が万事、自分次第です。

黒木）自分次第ですね。あと面白いなと思ったのは、「プチリチュアル」という小さな儀式です。儀式と言うと大げさに思うかも知れませんが、毎日の習慣のなかで行っていることを少し意識する。これは自分にどのように跳ね返って来るのでしょうか？

玉置）「この世は全部自分の考えた通りになっているのだ」という考え方は、癖なのですね。修行をして、その域に達したからそうなるということではなく、癖なので毎日の繰り返しが必要なのです。訓練次第なのです。そうすることで、気分を思い出します。「私はいま悪い方に取ってしまっているけれども、いい方に変えよう」というチェンジングになるポイントを、日常生活のなかにたくさんつくり出すということなのです。

黒木）毎朝トイレ掃除をします。そうすると神様はきちんと見てくださるという気がします。単純に「嫌だな」と思って行うのではなく、「きょうもできた」と思って掃除をするという気持ちですね。

玉置）絶対に見てくれていますよ。

黒木）そうですか？

玉置）徳が積まれていますね。

玉置妙憂

玉置妙憂（たまおき・みょうゆう）／看護師・僧侶

■東京都中野区出身。看護師であり僧侶。一般社団法人介護デザインラボ代表。
■専修大学法学部を卒業後、法律事務所に勤務。
■長男が重度のアレルギー症状をもっていたことをきっかけに「息子専属の看護師になろう」と決意。看護学校で学び、看護師、看護教員の免許を取得。
■看護師として働き始め、その後、看護学校で教鞭をとっているころ、カメラマンだった夫の癌が再発。
■夫は「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタート。夫の自然死を看取ることになるが、その死にざまがあまりに美しかったことから開眼。家族と職場に出家を宣言し、高野山真言宗にて修業をつみ僧侶となる。
■現在は現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、一般社団法人「大慈学苑」を設立し、患者本人や家族、医療と介護にかかわる多くの人々の心を穏やかにするべく、院外でのスピリチュアルケアに力を注いでいる。
■また子世代が親の介護と看取りについて学ぶ「養老指南塾」や、在宅での看取りとスピリチュアルケアについて学ぶ「訪問スピリチュアルケア専門講座」を展開しながら、講演会やシンポジウムを開催。
■2020年4月からはニッポン放送「テレフォン人生相談」のパーソナリティも担当。
■著書・最新刊『頑張りすぎない練習-無理せず、ほどよく、上手に休む』（3/19発売）