看護師・僧侶 玉置妙憂~「いい塩梅に頑張る」ということが大切
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黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に看護師・僧侶の玉置妙憂が出演。頑張り過ぎない練習ということについて語った。
黒木)今週のゲストは看護師であり僧侶の玉置妙憂さんです。玉置さんのお書きになった『頑張りすぎない練習』という本にも、人の相談はとにかく聞いてあげること。解決策を言ってあげるのではなく、答えはその人のなかにしかないので、その人が答えを見つけ出すように話す。そして「言葉を放つ」と書かれていました。その人が答えを考え出す力を導くというようなことでしょうか?
玉置)そうですね。考え出すのに時間がかかります。考える思考のプロセスと言いますか、そこを1人で歩くというのは大変なこともありますので、そこにいて話を聞くというだけですね。
黒木)聞いてあげるということが、相談に乗るということになるのでしょうか?
玉置)はい。聞いても、何もしないでいるということです。
黒木)難しいですね。人というのは何か言いたくなりますものね。
玉置)励ましたり、案を言ったりしたくなりますが、何もしない。
黒木)この本には頑張り過ぎない練習ということで、頑張るということは、普通は、人のためであり、家族のため、社会のためなど、誰かのためですが、「自分のために」ということもあるのですよね。
玉置)もちろんそうです。ただ、頑張らなければならないときもあります。「ここが踏ん張りどころでしょう」というところが人生にはあるので、そのときに頑張ってはいけないわけではないのですが、頑張り過ぎず、いい塩梅にしてもらわないと困るのです。お疲れになったり、壁にぶつかったりしている方というのは、頑張り過ぎているのです。
黒木)頑張り過ぎている。
玉置)いい塩梅に頑張る。「抜くところは抜く」ということができれば長続きもするし、楽です。周りもハッピーです。
黒木)頑張り過ぎているという自覚がないときは、どうすればいいのですか?
玉置)大体そういうことはないのですよ。しかし、そういうときは耳を澄ましていただくと、メッセージが来ているはずなのです。たとえば体の調子が悪くなるとか、行こうとしたら電車が止まっていた。そのようなことも捉え方によっては、「少し休みなさい」というメッセージなのです。いまこのような状況ですけれども、もしかすると、人間社会全体に対する何かのメッセージかも知れないというような気もします。
黒木)自分のための利益を仏教では自利、人のための利益を利他と言うということなのですが、まずは自分が満たされていないとお役にも立てない。
玉置)そうなのです。どうしても世の中は、利他をするようになっているのですね。人様の利益のために動いている。世の中というのは基本の仕組みがそうなっている。だからどうしても頑張ってしまうのですが、それを回している自分の利益、自分のコップはまさか空ではないよねということです。自分のコップが空だと、相手から「ありがとう」や感謝を求めてしまうのですね。「こっちはこんなに一生懸命きつい気持ちでやっているのに、ありがとうの1つもないのか」とか、「こんなに評価が低いのか」という気持ちになってしまいます。しかし、本来、それは関係のないことです。
黒木) 妙憂さんは「自分の心のコップを幸せで満たしておく」という言葉で書かれています。
玉置)それがあって行うと、相手からの評価が悪くても、ありがとうを言われなくても、「満たされている」という状態になって、「よかったな」という気持ちで勝手に自分に利が返って来るのです。この2つの利益が回るのですね。そうすると、枯れることは一生ないのです。でも回し始めるときに、先にたくさんいっぱいにするのは自利なのです。人からいっぱいにするのではなく、自分からいっぱいにする。いっぱいのなかから差し上げる。そうすると返って来ますので、ぐるぐると回りますよということなのです。
玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)/看護師・僧侶
■東京都中野区出身。看護師であり僧侶。一般社団法人介護デザインラボ代表。
■専修大学法学部を卒業後、法律事務所に勤務。
■長男が重度のアレルギー症状をもっていたことをきっかけに「息子専属の看護師になろう」と決意。看護学校で学び、看護師、看護教員の免許を取得。
■看護師として働き始め、その後、看護学校で教鞭をとっているころ、カメラマンだった夫の癌が再発。
■夫は「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタート。夫の自然死を看取ることになるが、その死にざまがあまりに美しかったことから開眼。家族と職場に出家を宣言し、高野山真言宗にて修業をつみ僧侶となる。
■現在は現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、一般社団法人「大慈学苑」を設立し、患者本人や家族、医療と介護にかかわる多くの人々の心を穏やかにするべく、院外でのスピリチュアルケアに力を注いでいる。
■また子世代が親の介護と看取りについて学ぶ「養老指南塾」や、在宅での看取りとスピリチュアルケアについて学ぶ「訪問スピリチュアルケア専門講座」を展開しながら、講演会やシンポジウムを開催。
■2020年4月からはニッポン放送「テレフォン人生相談」のパーソナリティも担当。
■著書・最新刊『頑張りすぎない練習-無理せず、ほどよく、上手に休む』(3/19発売)
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳