今こそ考えたい「選挙」と「放送」の課題~辛坊治郎が解説

By -  公開:  更新:

キャスターの辛坊治郎氏が6月18日(木)、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!~激論Rock&Go!」に出演。7月5日投開票に向けての東京都知事選に際し「選挙」と「放送」の課題について論じた。

今こそ考えたい「選挙」と「放送」の課題~辛坊治郎が解説

新型コロナウイルス感染防止のため投票立会人の前にビニールシートが設置された期日前投票所=2020年6月22日午前、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

小選挙区のマジック

辛坊)本当にこの選挙期間中は気を使う。本来は、選挙の期間中だからこそ、有権者に判断に資するような正しい情報をお伝えしなければいけないのに、選挙が始まった瞬間にみんな口を閉ざす日本のマスコミの慣例はおかしいだろう。

飯田)放送倫理検証委員会(BPO)さんが2016年に、2016年の選挙を巡るテレビ報道についての意見というのを出していて、ご興味のある方はホームページなどをご覧いただければと思いますし、わたしが書いた『「反権力」は正義ですか』(新潮新書)という本の後書きにも詳しくありますが、そこにも「放送時間の公平で、例えば全員の候補者は2分ずつというようなことはかえって、知る権利に資するものにならないのではないか」という指摘があって、例えばAという候補が非常に有力だということになったら、その候補に重点的に政策を掘り下げるとかいうことをやったとしても、それは放送法の精神に則らないものではないと。

辛坊)逆のパターンで、最近地方議会でも中央でもそうなのだけど、あからさまに特定の候補に有利になるような報道をしているニュースもないとは言えないから、いかがなものかという気がするところもある。

でも、ニュースキャスターの立場で言うと、都知事選ではなく衆議院選挙などで困るのは、政党要件を満たしていると党首を必ず呼んで討論会をするわけです。「政党」ではあるけど、政党要件は日本は緩い。国によっては5%の得票を設定をしているところもあります。いわゆる死票が少ない国は結構そうしている。日本はなんだかんだ言いながら、死票もたくさんありますけれども。小選挙区だと、1つの選挙区から1人しか当選しないという選挙の場合には、大量の死票が出ますよね。日本も一部導入していますけれども比例代表というのは、100万票が投票されたらその割合に応じて、それぞれの政党の名簿から当選者を決めましょうということになって死票なしですよ。つまり、100万人の意見は見事に議会の構成に反映される。ところが小選挙区の場合には1人しか受からないわけだから、全て小選挙区で選んでいったら、実は51対49くらいの投票行動だったかもしれないけれど、蓋を開けてみたら100%与党だけの議会になってしまう。これがまさに小選挙区のマジックと言われるものです。

今こそ考えたい「選挙」と「放送」の課題~辛坊治郎が解説

都庁前に掲示された都知事選の日程を伝える横断幕=2020年6月17日午後、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

政党要件と選挙報道の関係

辛坊)じゃあ比例代表にしたらいいんじゃないの、というとそうでもなく、比例代表の場合は党が小さいのも含めてバラバラになりすぎて議会を組んだときに、結局意思決定機関としては機能しなくなってしまうので、ある程度国民の意思というのが顕著に出るようなかたちの割合、小選挙区も導入しながら、死票ができるだけ少なくするように日本の選挙制度もできている。各国の選挙制度もそうできていて、よくあるのは「死票が全然ありません。100万人が投票したら、比例配分で綺麗に議員を選びます」と。しかしそういう国は意外と政党要件が厳しくて、5%以下は足切りとなって、5%以下は基本的に当選させないということが起きるわけです。

そうしたときに、実際の日本の政党要件って2%だったりする。2%だと、名前は聞いたことはあるけれど、どんな政党でどんな内容の公約を出しているのかわからないという政党も出てくるので、実際に議会で国を動かしている政党、過半数、あるいは過半数前後を持っているような政党と、2%以下の1%くらいしかない政党が5、6つあるとします。これを党首討論選挙のときに、50%の議会での議席を占めているところと、2%くらいだけど5つくらいの政党を同時に呼んで喋らせることが、果たして政治的な公平なのかという議論がある。

飯田)6月17日に行われた日本記者クラブの共同会見というのはまさに政党要件を満たした党から公認などを受けている人たち5人が出てきました。

辛坊)政党要件を満たしたところの候補者というのを、テレビ、ラジオで紹介するとなったときに、候補者を何人か選ぶ時には政党要件を満たしたところの推薦・公認の候補者は名前を出すけれど、それ以外の候補者の名前は出さない。名前を出してもらえなかった候補者からすれば「なんで?」という話になる。どこかで基準をつくらないといけないから、政党要件を満たしてるところが関わっているところ、ものすごく有名な名前の新党をわたしがつくったとしても、それは単なる諸派という扱いになりますから。

今こそ考えたい「選挙」と「放送」の課題~辛坊治郎が解説

東京都知事選 ポスター掲示用の選挙看板を設置する作業員ら=2020年6月13日、東京都品川区 写真提供:産経新聞社

ラジオ、テレビでできる限界点

飯田)本来は自分たちで基準をつくって、その基準に沿ってやっているのですよ、と言えればそれでいいというのがBPOの報告書には書いてあったのですが、なかなかそうはいかない。

辛坊)放送法上でいうと、必ず全員同じ時間でやっている。だけど、1時間番組で議席配分で時間を分配したら、ひとつの政党が30分で、ひとつの政党1分になったら怒られてしまうわけです。そんなものは意味がないので、じゃあみんな公平に扱いましょうというと、大きな政党も小ささな政党も関係なく党首がずらっと全員並んだら、司会者の立場としては全員ひとことずつ振るじゃあないですか。そうすると結局、同じくらいの時間配分になったときにそれでいいのかという気がしますけれども、ラジオ、テレビで、立候補者全員の名前を紹介することが、できる限界点だと思います。

飯田)BPOも「だからといって、ニュース番組の尺が少なくなったら意味がない」というふうに報告書は締めております。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

Page top