静岡工区が未着工である理由~リニア中央新幹線

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月10日放送)に前参議院議員の金子洋一が出演。リニア中央新幹線が静岡工区だけ未着工である理由について解説した。

リニア中央新幹線の静岡工区が未着工

リニア中央新幹線の品川から名古屋の間で、静岡県内の工事エリア、いわゆる静岡工区だけ未着工である。静岡工区は南アルプスを貫くトンネル工事で、静岡県や大井川流域の市や町は、工事によって水資源や自然環境に影響が出ることを懸念しており、着工の目処が立っていない。一方、JR東海は水資源などへの影響が少ないことを理由に、宿舎や事務所の整備を終えている。両者は膠着状態だが、これをめぐって国土交通省の藤田耕三事務次官は10日、静岡県庁で川勝平太知事と会談し、自然環境への影響が軽い範囲で準備工事を容認するよう提案する。工事の遅れで2027年の開業は事実上困難となっていて、事態を打開できるかどうかが焦点となりそうだ。

国鉄ではなくJR東海という、座組みの問題

飯田)JR東海の社長と川勝知事が直接会談して、ということもありましたが、それでも膠着状態だと。どうなるのですかね。

金子)リニア新幹線の座組みの問題があります。東海道新幹線のときは国鉄でしたから、国が建設主体だったのです。ですから、いろいろなことができた。しかし、リニア新幹線というのは、JR東海という株式会社が建設したものです。ですから、静岡県知事から見れば、静岡県には駅もできずメリットがないとおっしゃる気持ちもよくわかります。国が建設主体であれば、「わかりました。メリットがないなら申し訳ないので、金銭的な補償をしますから、何とか早く同意してください」とすることもできたはずですが、株式会社にそんなことはできるわけがありません。

飯田)企業体が、そんな莫大なお金を出せるはずもない。

金子)財政的にも無理ですし、仮にできたとしても、株主代表訴訟をされたらどうなるかと。

飯田)「利益を勝手にそんなところに使うな、株主に還元しろ」と言われる可能性が高い。

静岡にメリットがないリニア中央新幹線

金子)そうです。だから国鉄の民営化のときに、そういうことを考えておくべきだったのではないかと思います。

飯田)なるほど。もともとJR東海は、どちらかというと国の介入を拒否しながらやっていたではないですか。介入されたら、いろいろ計画が捻れると。

金子)変なところで止まれと言われたり。

飯田)そういう話でしたが、それが裏目に出ているところがある。

金子)いまのところは裏目に出ていると思いますね。8兆円、9兆円と大きな予算をかけているのですが、こういうところで、政治的な部分の手足がないですから、行政に働きかけるにしても大変で、お願いベースになってしまう。もちろんお願いベースでやるべきだとは思うのですが、同時に大きなインフラですから、国が責任を持ってやらないと計画がチグハグになってしまう。今回も静岡県にとっては、リニア新幹線ができて東海道新幹線のダイヤが空けば、静岡駅にいま1時間に1本くらいしか止まらないものが、もっと止めることもできる。そういうメリットも出て来るのですが、やはりメリットが小さいという実感なのでしょうね。

新幹線と料金体系があまり変わらない~リニア中央新幹線に乗らない地域にはメリットが薄い

飯田)料金体系はそんなに変わらないという話もありますけれど。

金子)そうなのです。これも問題で、リニア新幹線は東海道新幹線のプラス1000円くらいで考えられています。一見すると、いいではないかと思うかも知れませんが、JR東海の収入のおよそ9割が東海道新幹線の収入です。それはイコール、東海道新幹線の運賃が下がらないということなのですね。となると、リニア新幹線に乗らない地域の人たちにとっては、メリットが薄くなってしまう。

飯田)普通なら需要が下がる分だけ、運賃を下げてお客さんを呼ぶけれど、そういうことがない。

金子)できない。高速道路では料金プール制というものがあって、都会は大幅黒字なのだけれど、地方は赤字なのでそこに補填するというものです。それとまったく同じことが起きてしまうのです。

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