川辺川ダムが建設されていたら災害は防げたか~九州豪雨
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月8日に放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。豪雨災害が広がる九州各地の現状について、熊本県人吉市、福岡県小郡市での現地取材を交えて解説した。
豪雨災害、九州全県で河川が氾濫
停滞した梅雨前線の影響により、九州全県で河川が氾濫する被害が出ている。また浸水被害や土砂崩れなども相次ぎ、熊本県を中心に50人を超える方が亡くなっている。
飯田)依然として被害の全容が把握できていない状況です。九州南部から北部に豪雨災害が広がり、その雨が現在、長野県、岐阜県にピークが来ているということです。西日本から東北にかけて大雨、土砂災害への警戒が必要です。この時間は、現地の雨の様子、被災状況、救助活動について熊本県人吉市で取材を続けている、ニッポン放送の藤原高峰記者とつなぎます。おはようございます。
藤原)おはようございます。
飯田)いま、お天気はいかがですか?
藤原)人吉市は7日から降っていた大雨も8日未明ごろからやみ、現在、私がいる場所は快晴です。私は人吉市に入って4日目となりますが、初めて太陽を見ました。
飯田)これから片付けが本格化するという状況ですか?
藤原)7日の朝から、ショベルカーなどの重機や大型トラックがやっと入ることができまして、道路一面を埋め尽くしていた土砂や、がれきなどの撤去作業を懸命に行っていました。いまは道路に土砂などはほとんどなく、道路の路面に書かれている道路標示などもはっきり見えております。
飯田)これから先、生活支援などが本格化して行く感じですか?
藤原)そうですね。連日取材をしている「人吉スポーツパレス」という施設には、700人余りの住民がいまも避難していて、この方たちに提供できる食料、水、マスク、除菌シートなどの支援物資は十分そろって来ました。幸いにも被害を免れた住民から提供された洋服や下着、大人用の紙おむつなどを、こちらの施設では1人につき3着まで受け取ることができるサービスもスタートしております。
飯田)そうしたことは助かりますよね。この先、日が照ると土が乾いて粉塵なども大変になります。
藤原)地元の方々も、泥が固まると作業がさらに大変になるということで、早朝から泥水のかき出し作業や、片付け作業もされております。ごみや泥の匂いがきつくなって来ておりますので、その辺りの衛生面も心配されます。
飯田)気をつけて取材を続けてください。ありがとうございました。これから先は衛生面、がれきの片付け作業などは人海戦術になるというところですね。
「川辺川ダムが建設されていたらどうなのか」という検証をするべき
高橋)現場は本当に大変ですよね。このような水害で思い出すのは、民主党政権時代にあった東の八ッ場ダム、西の川辺川ダムの建設中止です。
飯田)ダムの建設ですね。
高橋)当時、サンクコスト理論を使って「建設中止は間違いだ」と、猛烈な批判を書いたことがあります。八ッ場の方は関東の知事さんなどが推してくれて、「中止はけしからん、続行だ」として再開しました。川辺川は地元の知事さんが猛烈な反対をして、中止されたままです。それが悔やまれます。川辺川は球磨川の上流ですよね。この川辺川ダムがあったらどうかということを、ぜひ検証してもらいたいですよね。
飯田)ダムのない治水をやろうとした。ただ、それは非常にお金もかかるし、地域のコンセンサスを得るのが大変でしたので、去年(2019年)ようやく方針が立ったようですが、進行が遅く間に合わなかった。
高橋)ダムのない治水というのは、あり得ないです。
飯田)堤防をつくるのはお金がかかりますしね。
高橋)難しいです。ダムをつくる方がコストパフォーマンスもよいです。
福岡県小郡市の現状
飯田)続いて、佐賀との県境に近い福岡県小郡市にいらっしゃる、防衛問題研究家・桜林美佐さんと電話をつなぎます。現地での自衛隊の救助活動や、災害支援の状況なども伺います。桜林さん、おはようございます。
桜林)おはようございます。
飯田)小郡市の被害の状況はどうですか?
桜林)きょうは晴れ間もあり、雨も小降りになって来ている感じです。田んぼなどもかなり冠水していたのですが、太陽が出て風が吹くと乾くのも早いです。朝になると水が引いて来ました。近くの久留米市はまだ冠水があり、通行止めのところも多いようです。
球磨川流域の状況は未だ把握されていない
飯田)九州各駐屯地、あるいは中部、中国、近畿からも自衛隊が出て行っていますが、いまの活動状況はどうご覧になっていますか?
桜林)かなり人を出して行わなければならない状況だと思います。これから泥を掃き出したり、生活支援などのニーズが多岐にわたって来ると思いますので、人力も必要です。また熊本の方に部隊が出ているところも多いので、こちらの球磨川流域は掌握しきれず、山深いところにも入り、捜索活動を行っていると聞いています。
飯田)先ほど藤原記者のリポートもありましたが、ようやくがれきなどの撤去が始まったということです。ここから先は、そうした道路を切り開いて行く道路啓開、生活支援というところで自衛隊が中心になって行くのですか?
桜林)球磨川の流域に関しては、そうしたニーズさえ掌握できていない地域もあるということです。
飯田)これは行政が把握しきれていないところを、偵察も含め、自衛隊が最初に行くというような状況になってしまうわけですかね。
自衛隊の経験値に基づいて捜索活動等を提案しているのが実情
桜林)そうですね。「行政からの要請に基づいて」ということが基本なのですが、最近は自衛隊の経験値に基づいて、連絡区間も自治体に入っておりますので、そこで提案して行くやり方で進めているということも聞いています。
飯田)防衛問題研究家として、さまざまな角度からご覧になっていると思いますが、大臣、政府側は2万人規模で行うということになる。そうなると、自衛隊にかかる負担は国防プラスアルファが増えます。この辺りはどうご覧になりますか?
桜林)訓練、教育というものが基本中の基本ですので、それがあって、こうした球磨川流域などでのハードな活動も成立しています。その訓練を止める期間を、いかに短くするのかということに配慮しながら、こうした派遣活動を行うということです。いかに民間に移行するかというタイミングの配慮を、政治的に求めて行くところだと思います。
飯田)大臣もその辺りは気をつかいながら行うということを、2019年の台風15号や19号の後におっしゃっていましたよね。
自衛官OBが自治体に入り、活動をスムーズに
桜林)そうですね。だいぶ配慮されています。もう1つ私が強く要望したいのは、自治体の防災区間の配置ですね。自衛官のOBが入っているところも多いのですが、まだまだ市や町には少ないですので、共通言語のない自衛隊とのいきなりのコミュニケーションは難しいです。自衛隊に何ができるのかということを知っている人がいないと、なかなか活動はスムーズに行きませんので、これをどんどん進めてほしいですね。
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