終戦の日~次世代にいかにして戦争の悲劇を伝えるか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月14日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。飯田浩司による東京大空襲・戦災資料センターでの取材を中心に「終戦の日」について解説した。
戦後75年となる「終戦の日」
8月15日は終戦の日、戦後75年の節目の日でもある。戦争の悲劇を次の世代にどう伝えるべきか、江東区にある東京大空襲・戦災資料センターでの展示方針なども踏まえて考える。
飯田)江東区北砂にある、東京大空襲・戦災資料センター。ここは東京大空襲を専門に扱う民立民営の施設ということで、公益財団法人「政治経済研究所」の付属博物館で、公のものではありません。2002年にオープンし、2020年6月にリニューアルしています。現在はコロナの影響もあり、原則として予約制での来館受付になっているということです。
1945年3月10日の東京大空襲
飯田)東京大空襲そのものは、歴史などで習った方が多いと思います。1945年3月10日夜に空襲が行われて、東京の城東と言われる、どちらかと言うと東側の地域へ集中的に焼夷弾が落とされました。およそ10万人の方が亡くなったとされていて、特に被害が大きかったのは子供と女性です。年齢別に亡くなった方の分布が資料としてグラフで出ているのですが、それを見ると20代、30代の男性はほとんどいない。女性と比べてグラフが相当下がっています。若い男性は、徴兵で兵隊に取られていたからです。
「その場で何が起こったのか」ということをフラットに伝えようとしている
飯田)施設がある江東区北砂の辺りも、空襲の被害を受けています。かつて、この施設のすぐ北に東京ガスのガスタンクがあり、爆撃で狙われたとされていますが、実情は民間の工場や住宅が密集している下町の地域を狙ったということでした。木造家屋を焼くために特化してつくられた焼夷弾。そのレプリカの展示などもされています。特にリニューアル後は、「何が起こったのか」ということをフラットに伝える努力を続けていらっしゃることに驚かされました。
自分たちのいまと引き比べて実感させる
飯田)新聞などでいま言われているのは、直接経験された方がどんどん亡くなっているということです。戦後75年が経っています。当時、10歳くらいの少年少女だった方々も、すでに85歳を超えています。ここでは、「自分たちのいまと、どう引き比べて実感させるか」というところに、非常に重きを置いています。修学旅行などで訪れる方が多いということで、浅草の仲見世の辺りを、いまの写真と空襲があった直後の写真で比べて、「ここは見覚えがないか」とか、「このお店のような焼け跡が連なっているところは、どこかわかりますか?」など、行ったところが「ああなっていたのか」という見せ方をしています。空襲や原爆というと、悲惨な現場の写真などで訴えることが多いのですが、その前段階として、どういう生活があったのかというところをまず見せる。時系列で見せることで、「自分たちと同じ年代の当時の子たちの生活があり、その人たちがこういう被害を受けたのだ」ということを、体系的に展示するという形です。戦争を実際に体験した人たち、あるいはそれを口づてに聞くことができた世代に対する展示といまでは、展示の仕方がだいぶ変わって来ているのです。
空襲の歴史を紐解き伝える~どうやって繰り返さないかということ
飯田)空襲についても、1945年3月の空襲はこういうものでした。しかし、空襲の歴史を紐解くと、1903年にライト兄弟が人類史上初めて空を飛んでから、たった7~8年後の1911年に、イタリアとトルコの戦争で世界初の空襲がすでに存在していた。そこから紐解いて、ベトナム戦争、イラク戦争と、未だになくならないのだと伝えています。
宮家)非戦闘員に対する攻撃、これは国際法違反なのです。現在であれば当然、国際法違反として十分批判すべきことなのですが。当時は爆弾などの命中率が悪くて、目標を狙うときに、「コラテラル・ダメージ」と言いますが、戦闘とは無関係な人々が亡くなることが多々あった。しかし、もっと大切なことは、このような悲劇を今後どうやって繰り返させないかということです。その意味で、いまおっしゃったようにフラットな形で事実を残しておくということは、若い人たちにとって重要だと思います。
なぜ日本には公立の「ナショナル・ウォー・ミュージアム」が存在しないのか
飯田)学芸員の方にお話を聞いたのですが、なぜ日本には公立の「ナショナル・ウォー・ミュージアム」が存在しないのか。要するに正史のようなものがないから、左右のイデオロギーにかなり引っ張られる形での歴史認識になってしまうのではないか、という問題があるのです。
宮家)それはわかります。私も各国に行くと、必ずウォー・ミュージアムを探して行くようにしているのですが、そのような博物館そのものがない国もあります。
飯田)それは国民感情として。
宮家)国民感情があったり、国内での意見の分裂があったり、特に負けた国にはなかなかないですね。
飯田)繰り返さないという面で考えると、そこは抑止力などの議論をしなくてはならない。
宮家)戦争をするのは酷いことですが、どんな戦いも国民を守らなくては意味のないことですから。その部分に焦点を当てるべきだと思います。
飯田)国民を守れなくなっても、なぜ戦争をやめなかったのか。
宮家)それが最大の教訓だと思います。
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