原爆の日を迎える長崎~実在した「震洋」という特攻艇

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月8日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。戦争の悲惨さを語り継ぐことの大切さについて、自身の経験を交えて語った。

長崎で74回目の原爆の日

長崎は9日、74回目の原爆の日を迎える。9日午前10時40分から長崎市の平和公園で平和祈念式典が始まり、原爆投下時刻の午前11時2分に合わせ黙祷が捧げられる。

飯田)8月9日、74回目の原爆の日。8月はそういう出来事が続きます。

鈴木)そうですね。終戦の日ということもありますし、広島、長崎の原爆の日もあります。語り継ぐということを、再びみんなで考えたいと思います。僕がテレビ局の報道部に入社したのは、36年前になります。

飯田)36年前。1983年ですね。

鈴木)そのころに言われたのは、報道の使命は戦争の悲惨さを語り継ぐことだ、この世で人間の命以上に重いものはないと。それはいまの時代だってそうです。その命を大量に落とした、最大の人類の悲劇が戦争なのだと。戦争を語り継ぐということが報道の大事な仕事の1つだと先輩たちから言われて、ドキュメンタリーを作ったり、取材をしたりしました。特に8月はいろいろなことをしました。ですが、語り継ぐ戦争の経験者、当事者が少なくなって来ている。僕も語り継いでいるけれども、戦争の体験者ではありません。永田町でもそうです。政治家でも戦争を経験した人の言葉の重みや、安全保障の考え方は独特なのですね。自衛隊をどんどん外に出すべきだと言いつつ、それを行使しないために何を考えるかが政治だという両立論を、戦争経験者の方たちは言います。

実在した「震洋」という特攻艇

鈴木)数年前、私は「震洋」という特攻艇のことを取材しました。モーターボートみたいなものだと考えてください。神風特攻隊や人間魚雷などは聞いたことがあると思います。同じように終戦間際、日本の戦況がどうしようもなく悪いときに、震洋というものが考え出されたのです。その特攻艇を復元したものが九州の宮崎、長崎などにあります。その取材に行ったのですが、お粗末なべこべこのべニヤ板で、船とは言えないものです。かろうじて浮かんでいる。これにエンジンを付けて爆弾を積み、若い17歳くらいの少年が1人か2人乗って、体当たりをするわけです。船が軽いので、時速40キロも出すと船が浮いてしまって転覆したり、その場で誤爆してしまったりして、ほとんど戦果をあげていない。アメリカの船を3隻沈めたという記録があるけれども、本当にそうなのかもわからない。そのかわり、この震洋という船で亡くなった若者は2200人~2300人くらいいるのです。人知れずそういうものが作られ、そして戦争が終わった。

原爆の日を迎える長崎~実在した「震洋」という特攻艇

広島原爆忌 平和記念式典 広島市原爆死没者名簿奉納をする松井一実広島市長(右端)ら=2019年8月6日午前8時1分、広島市中区 写真提供:産経新聞社

生き残った人は「生きていて申し訳ない」と戦後70年間を過ごして来た

鈴木)数年前、生き残りの人を訪ねて歩きました。自分は飛行機で特攻して行くつもりだったけれども、お前はこっちだと連れて行かれて見たのがその震洋だった。べこべこのべニヤ板で、これが船なのかと思ったそうです。訓練でどんどん人が死んで行く。でも生き残ったわけです。その生き残った方、何人にも聞いてショックだったのは、「生きていて申し訳ない」と言った言葉です。

飯田)いまになっても。

鈴木)87歳~88歳にみなさんなられていて、17~18歳のときに戦争が終わりました。70年間「生きていて申し訳ない」と思いながら生きて来たのですね。僕の父親と同じ世代なので、「そんなことはないでしょう、生きていてよかったではないですか。そうは思えないのですか?」と聞いても、「いや、思えない」と言うのです。死んで行った戦友…。

飯田)仲間たち。

鈴木)はい。仲間たちの顔が、わずか数ヵ月だけれども、一緒にご飯を食べた彼らを忘れられない。彼らのことを考えると、自分が生き残ったのは申し訳ないと。それを聞いたときに「絶対に戦争なんてしてはいけない」と本当に思いました。そのなかの1人の方は、最近まで話さなかったそうです。

飯田)震洋については。

8月は戦争の悲惨さについて考えて欲しい

鈴木)いまの平和な時代で話しても理解してもらえない、話しても無駄だと思っていた。ところが、最近になって話し出したと言うのですね。それはやはり何かを残さなければいけないし、語り部として、いまの平和の影にどれだけの犠牲があったのかを語らなければいけないと。この年になって、もう人生は長くないけれどもそう思うようになった、そんなことをおっしゃっていました。いまの人に語っても仕方がないということもショックでしたが、生きていて申し訳ないと思って、70年間も人生を過ごして来たということはショックでした。そういうことを僕らは語り継いで行かなければいけない。いろいろなメディア、マスコミ、ジャーナリストがこの時期には、その当時を語り継ぐような記事、作品を作っています。みなさんもそれを観ながら、8月は考える月にしてほしい。お盆休みでどうしようかと思っている人は、1時間だけでもいいので、ドキュメンタリーなどを観て考えて欲しいと思います。

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