戦没者追悼を政治的主張へ利用は間違いではないか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)に元航空自衛官で評論家の潮匡人が出演。平成最後となる戦没者追悼式のマスメディアの扱いについて、自身の考えを述べた。

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全国戦没者追悼式で黙祷される天皇、皇后両陛下=2018年8月15日午後、東京都千代田区の日本武道館 写真提供:産経新聞社

終戦から73年、平成最後の戦没者追悼式~安倍総理「惨禍二度と繰り返さない」

終戦から73年を迎えた昨日。日本武道館で政府主催の全国戦没者追悼式が開かれた。式典には天皇皇后両陛下や、安倍総理大臣、遺族の代表など、6,500人あまりが参列し、全員で1分間の黙祷を捧げた。安倍総理は「戦争の惨禍を二度と繰り返さない。歴史と謙虚に向き合い、どのような世であっても、この決然たる誓いを貫いて参ります」と式辞を述べた。

飯田)私も昨日、日本武道館へ行きました。たしかに、ご遺族の方の高齢化は目に付くところでした。続いて、追悼式での天皇陛下のお言葉をお聞きいただきます。

天皇陛下)戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに、過去を顧み、深い反省と共に、今後戦争の惨禍が、再び繰り返されぬことを切に願い、全国民と共に、戦陣に散り、戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と、我が国の一層の発展を祈ります。

飯田)陛下のお言葉でした。

天皇陛下と総理の発言を利用することに対して

飯田)終戦から73年。潮さん、いかがですか?

潮)「平成最後」という部分に、今回は大きな意義があると思います。先ほど流れたお言葉について、例えば「深い反省」という表現が使われました。そのようなことにマスメディアは着目していると思うし、もちろん陛下のお言葉に対してさまざまな受け止め方がそれぞれにあって、公的機関が論評する。それはいいと思いますが、一部マスメディアは、他方で「安倍総理の表現のなかに、いわゆる「加害責任」について触れられていなかった」ということを新聞の見出しに掲げたようなところもある。そうした形で、陛下のお言葉と総理との対比で、あたかも「一方が良くて、一方が間違えている」みたいな扱いをするのはどうなのかな、と。いずれにしても、そうしたメディアのスタンスは浮かび上がってくるでしょうが、本来の趣旨としては戦没者の追悼です。だから、それを自分たちの主義主張や政治的スタンスと絡めて、自分たちに有利になるかのような脈絡のなかで切り取って報道するのは間違っていると改めて思うし、これが平成最後である、というのをきちんと踏まえ、受け止めていらっしゃらない新聞社などがあるのだな、と思います。

飯田)朝日新聞などは1面トップで大きく取り上げていて、しかも全文を書き起こしてから、そこにいろいろ解説を書き込んでいます。「深い反省とは、戦後70年目の2015年に初めて加わった。当時はすでに安倍政権で、加害責任を言っていなかったから陛下があえて付けた」みたいな話もありますが、例えば宮内記者会との会見などでは、「もう何年も前からそのお言葉は述べられていた」と。「ことさら付け加えたわけではない」とね。その辺は抜けるんですね。

潮)そもそも、「反省」という日本語に必ずしも謝罪的ニュアンスがあるわけではないと思いますけどね。

そもそも戦没者追悼などを政治的主張の実現手段に利用すること自体が間違いである

飯田)平成3年生まれの、シッシーセさんという方からメールをいただいています。「戦争の悲惨さ、記憶を後世に残すことが重要であることは大賛成です。しかし、一方で時間が流れ、戦争体験者が亡くなっていくことは仕方のないこと。それを嘆くよりも未来の平和を見据えて前向きに議論する方が、よほどいいことだと私は考えます」と。
もちろん同胞が拉致されて何もできないとか、「本当に平和だったのか?」という部分もありますが、一応は交戦状態というのもなかった。なぜ、70年間一応の平和を保てたのか。憲法9条があったからなのか? みたいな議論はなかなかタブーなのかな。この国では、できないですよね。

潮)陛下のお言葉にもあったとおり、「戦後の長きにわたり、平和が続いている」というのがあるからこそ、例えば遺族の高齢化が進んでいるということがあるし、そもそも「戦後」という表現を我々が使えるのは、その間に戦争がなかったから、ということになっています。だから、例えば長きにわたり主に政権を担当してきた政党がいま与党になっているわけですが、その政策自体がもし、仮に根本的に間違えているとしたら、「昨日こんなこと言っている場合ではない!」という日本になっているわけですから、そこを例えば「安倍総理が加害責任を反省していない」みたいな取り上げ方を常にするのはどうかと思います。
一方で、この日必ず「靖国神社参拝」が問題になるわけですが、そのような形で、いわゆる英霊の問題や、戦没者の追悼などについて、右であれ左であれ、それぞれの政治的な主義主張を実現していく手段に用いること自体が間違えていると思います。

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