ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月26日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。中国の習近平主席が行った中期経済目標に向けた会議について解説した。
中国の習近平国家主席、中期経済目標の策定に向けた会議を開催
中国の習近平国家主席は8月24日、2021年~2025年までの中期経済目標「第14次5ヵ年計画」の策定に向けた会議を行った。習氏は「国内大循環」による内需主導の発展計画とする方針を示している。
飯田)共産圏の国々は、5ヵ年計画などということが好きですね。
内需が少なく、設備投資で稼いでいる中国~発展段階論から見るといびつな国
高橋)5ヵ年などわかるわけがないので、普通はやりませんが、気持ちが出ているから外の研究者にとっては有用な情報になります。内需主導はいままでありませんし、中国の消費のウエイトは日本より低いです。日本は消費がGDPの6割くらいですが、中国は4割くらいです。内需があまりなく、設備投資で稼いでいる国です。でも、発展段階論から見るといびつな国です。ある程度は工業化が進展して、消費が大きくならないと、先進国の経済構造にはなりません。そこに至る前に、工業化も中途半端に終わってしまいました。中国のこれからの発展には、みんな疑問符を持っているところがあります。
飯田)中所得国の罠のような。
高橋)はまっているような感じがします。
飯田)1人当たりのGDPが1万ドルを……。
高橋)1万ドルを大きく超えることはなさそうです。いままでの発展段階ですと、工業化をある程度発展させて、国内での消費需要がそれなりに大きくないと、なかなか1万ドルは超えにくいという研究があります。そこに中国がはまっているように思えます。
飯田)先進国になるには、内需主導に変えて行かなければいけないのですね。
国際的に孤立する可能性のある中国
高橋)消費がGDPの6割~7割になり、それとともに工業化も進みます。そうすると次の発展がうまく行くのですが、中国はそういうパターンではありません。習近平さんはいろいろ頑張っていますが、今回、コロナでアメリカのデカップリングが強烈でしょう。中国企業を政府調達から締め出したり、ドルの調達を封じ込めたり。先進国で付き合う国が少なくなりつつあります。特に英語圏の国は、中国の脅威を感じています。習近平さんは国際的に孤立する可能性があります。
飯田)いまは王毅外相がヨーロッパを歴訪していて、イタリアにも行ったりしていますが、一帯一路に食いついた国へプレッシャーをかけに行くという感じですかね。
高橋)一帯一路に食いついた国が、コロナで大変な状況になってしまったので、皮肉なものです。ドイツは違うかも知れませんが、ヨーロッパも中国に対しては距離を置くような感じがします。今度、習近平さんは韓国に行くと言っていますね。
飯田)コロナが収束した暁には、習近平さんが訪問するという話が出ています。
高橋)韓国もリスクのある踏み絵を踏むのだなと思いますけれどね。西側諸国からの「それでも民主主義国なのか」というプレッシャーも受けるでしょうし、「この時期にどちらを向いているのだ」という話になるでしょう。習近平さんも、いまは国内の経済が大変だから、手が打ちにくいのかも知れません。国内では洪水の被害もあります。アメリカとの関係で、農産物の大豆は輸入しないかも知れないということでしょう。そうすると、食料は大丈夫かというレベルです。
中国の食べ残し禁止令~国内の洪水被害とアメリカからの輸入がなくなるためか
飯田)だからこそなのか、食べ残しなどの飲食の浪費行為を禁止するという指示が出ました。
高橋)あんなことを言うということは、そうでしょう。国内の洪水被害が大きいのと、アメリカの輸入がなくなる可能性があるので、国民は耐え凌げという感じがします。
中国の輸出が減り、対外資産が減少~洪水被害もあり、経済が回らない
飯田)いろいろな分析が出ていますが、中国の外貨準備が目減りしていて、1兆ドルを切っているのではないかという話もあります。
高橋)外貨準備というのは、国全体で対外資産があったときに、対外資産のうちの政府の保有分を外貨準備と言います。国全体の対外資産がなぜあるかと言うと、輸出超過だからそうなるのです。輸出ができなくなると減ります。
飯田)コロナの影響で、世界的に経済が弱っている。
高橋)輸出して得た対外資産があり、そのうちの政府の保有分を外貨準備と呼びます。いま中国は輸出がうまく行っていないので、政府と民間を合わせた対外資産が減っているのは事実だと思います。輸出が減ったらそうなります。外貨準備が単に減っているのではなく、いろいろな経済現象の結果で起こっています。私は経済現象の方が重要だと思うので、外貨準備が減っているというのは、それはそうでしょうと。
飯田)それをもたらす構造の方が重要なのですね。
高橋)私はそう思っています。外貨準備が減って大騒ぎする人に対して、「輸出が減っているので当然だ」という感じになるのです。
飯田)国内でコロナ感染があり、洪水があり、海外に輸出できないとなると、経済がまったく回らない状態ですね。
高橋)だいたい中国のGDPは嘘ばかりなので、また捏造するのではないでしょうか。
国内不安を吐き出させるために習近平政権が狙う尖閣
飯田)経済がダメになると、国内不安が高まるのをどう吐き出させるのか。
高橋)それで尖閣に来たらこわいですよ。いまのところ、出口戦略は尖閣しかありません。「コアインタレスト」、核心的利益ということを前から言われていて、チベット、ウイグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣が核心的利益です。香港は完全に終わったでしょう。チベット、ウイグルも国内問題で終わっています。南シナ海も終わりました。残りは台湾と尖閣しかありません。台湾はすぐには無理なので、そうすると尖閣です。
飯田)だからこそ、日本としても守らなければいけない。
高橋)私はツイッターで「海上機雷を敷設すればいいのではないか」と言ったら、非難を受けてしまいました。自国内に機雷を設置するのは地雷を設置することと同じだから、それは施政権の行使ですよ。
飯田)激烈な形かも知れませんが。
高橋)入って来たら、鉄条網に引っかかるようなことと同じです。
飯田)施政権を本当に行使しているのか疑問に思います。国会だと、海洋調査をするという提案などが出ています。
高橋)施政権の行使だから、海洋調査でもいいのです。私はいろいろな施政権の行使のやり方があるから、機雷も施政権の行使の1つだと言っています。
飯田)いずれにせよ、施政権の行使をしているところを見せないと。
高橋)目に見える形でやって、機雷のところにマストを出しておいて、「機雷注意」と日本語で書いておけばいのだと思います。
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