ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月2日放送)に元内閣官房副長官補・同志社大学特別客員教授の兼原信克が出演。東京証券取引所がシステム障害で取引を終日停止したニュースを受け、日本におけるサイバーセキュリティの現状について解説した。
東京証券取引所の宮原社長~終日停止を謝罪
宮原社長)本日、私どもの売買システムの障害によりまして、終日売買を停止することになり、多くの市場参加者の皆さま、また投資家の皆さま方に多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。
東京証券取引所の宮原社長は10月1日、すべての株式の売買を終日停止したことについて、「深くお詫びをする」と謝罪している。東証がシステム障害で取引を終日停止するのは初めてで、世界的にも異例のこと。原因はシステムを運用するハードウェアの故障で、機器を交換し2日からは通常通り取引を再開する予定としている。
飯田)先ほど東証のホームページ上でも、2日の取引については通常通り実施をするというお知らせがありました。このニュースは驚きましたね。
兼原)国際金融都市を目指してロンドン、ニューヨークのようになろうとして、デジタル化をしている最中なので、これは恥ずかしいですよね。しかしサイバーテロでなくてよかったです。
飯田)サイバーテロかと思いましたね。
サイバーテロの狙いどころと恐ろしさ
兼原)いまのところ、違うと言っています。飛行機や新幹線を含めて、日本にあるすべての大事なネットワークはそれぞれ独立しているということになっています。しかし、本当に独立しているものはないのですよ。アップデートがあるし、メンテがあるし、従業員の人は近づけてしまうので、USBを差し込めてしまいます。サイバーテロの人は全員そこを狙うのです。独立しているからと言って、安心してはいけないのです。
飯田)かつて、イランの核燃料施設でウラン濃縮用遠心分離機が破壊されましたね。
兼原)誰かがUSBを差し込んだのでしょう。
飯田)そう言われています。
兼原)金融中枢は一発でやられてしまうのです。電気も落ちるし、発電所も全部落ちてしまいます。昔のテロリストや戦争をする兵隊たちは、現場に行かなくてはなりません。守る側も現場で守ることができるのですが、サイバー空間は距離感がないのですよ。クリック1つで平壌でもニューヨークでも、どこでも行ける世界なので、ガードを固くしないといけない。やられると、今回の東証のようにコンピューターが落ちてしまいます。最悪は自衛隊の基地が止まり、病院も機能しなくなる。これがサイバーテロの怖いところで、サイバーセキュリティはとても重要なことになります。今回の東証に関しては、そうではないと聞いているので安心しているところです。
飯田)その現役のときはそこも所掌に入っていたのですか?
「サイバーは極貧者の核兵器」~北朝鮮の能力が高い
兼原)私が直接関わることはありませんでしたが、隣の防衛省から来ている人がサイバーセキュリティのトップでした。やはりアメリカ・ロシア・中国、そして北朝鮮の能力が高いのです。なぜならば、爆撃機がいらないので安いからです。オリンピック選手のように子供のときから鍛えていると、立派なサイバーファイターになってしまいます。戦闘機のような高い兵器を買わなくても、クリック1つで「ドン!」とやれるので、サイバーの世界は怖いのですよね。
飯田)よく「化学兵器は貧者の核兵器」なんて言われますが、それ以上にお金がかからない。
兼原)「サイバーは極貧者の核兵器」という感じだと思います。
飯田)それに対して、日本は守って行かなくてはならないということですね。
兼原)民間のサイバーセキュリティは一生懸命やっているのですが、戦争で使うような、悪意あるプロの集団の精度の高いものに対しては真面目にやらないとなりません。今回、防衛大綱で初めて自衛隊にサイバーを真面目にやってくれと指示が降りたのですが、自衛隊だけです。自衛隊は市民を守る権限はないのです。警察も頑張っていますが、国全体がレベルアップしないといけない。
飯田)その部分も縦割りを排除しないといけないということですか?
デジタル化が遅れ、「ストーン・エイジ」と揶揄される日本
兼原)そうですね。いまは日本の社会全体のデジタル化の遅れが大きい。アメリカの情報機関の人などは「ストーン・エイジ」と言っていました。
飯田)石器時代。そんなに違いますか?
兼原)頑張ってやらないといけませんね。経産省さんと総務省さんに内閣府が関わって来るのですよ。その他もデータ系の企業やネットワーク系、半導体をつくる企業など、いろいろなところが関わりますので、全体を総理のところでしっかりと引っ張ってもらわないとなりません。
飯田)それが平井大臣のやろうとしているデジタル庁の方針ですね。
兼原)バラバラに下すとダメなのですよね。
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