ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月18日放送)にジャーナリストの有本香が出演。電話ゲストに経済アナリストの森永康平を迎え、今後の日本経済の行方について解説した。
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【新型コロナ・特別定額給付金申請開始区役所混雑】特別定額給付金のオンライン申請が始まり、マイナンバーカードの取得手続きなどで混雑する浪速区役所の証明発行窓口=2020年5月11日午後、大阪市浪速区 写真提供:産経新聞社
4~6月期のGDP、前の3ヵ月と比べマイナス7.8%~想定範囲内の数字
内閣府が8月17日に発表した4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値によると、物価変動の影響を除いた実質GDPは1~3月期と比べ、マイナス7.8%だった。そして、このペースが1年間続くと仮定した年率換算はマイナス27.8%となる。
飯田)個人消費がマイナス8.2%など、マイナスの数字が並んでいます。
有本)そうですね。
飯田)コロナの影響だということも言われますが、ここで子供向け金融教育ベンチャー企業「マネネ」CEOであり、経済アナリストの森永康平さんと電話がつながっています。今回の数字についても、いろいろと伺います。おはようございます。
森永)おはようございます。
飯田)この数字、各紙1面トップで報じていますけれども、どうご覧になりましたか?
森永)そうですね。事前予想がそもそも、前期比で7.5%前後に集まっていましたから、結果が7.8%マイナスということで、数字自体はよくないものでしたが、株式市場等を見ていますと、あくまで想定の範囲内であり、ネガティブサプライズにはなっていません。ただ、発表後の報道では、「欧米に比べればマイナス幅が小さい」という指摘もあったのですが、日本は欧米に比べてロックダウンの厳しさが異なり、新型コロナウイルスの死亡者数も違いますので、あまり単純比較して「日本はまだマシだ」という言い方はよろしくないと思います。
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【新型コロナウイルス】営業を再開した店舗も目立つ千日前商店街=2020年5月17日午前、大阪市中央区 写真提供:産経新聞社
個人消費が前年度比で8.2%減~インバウンド消費減少でサービス輸出も大幅減
森永)個人的に気になっていることが2つあって、1つ目は個人消費が前期比で8.2%減ということです。3四半期連続のマイナスになっていて、今回は4~6月ということで、ちょうど4、5月に非常事態宣言、休業要請等があったため、サービスを中心にかなり落ち込んでいるということです。2つ目は、輸出が前期比で18.5%ほどへこんでいるということです。こちらは、確かに欧米向けを中心に輸出が落ちたということはあるのですが、気をつけなければいけないのがインバウンド消費で、これも実はサービス輸出という形で輸出の方に含まれているため、大幅減に大きく寄与しました。
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【新型コロナウイルス】緊急事態宣言から一夜明け。人通りの少ないJR渋谷駅前のスクランブル交差点=2020年4月8日午前8時18分 写真提供:産経新聞社
自主的な自粛で7月の消費も強くない~内閣府の7~9月期のポジティブな見通しは甘い
森永)市場の注目はもう、7~9月の方に移っていまして、比較的ポジティブな見通しです。反動ですけれども、前期比で大体10%くらい上がるのではないかという話があるのです。ただ、7~9月期はすでに半分終わった状態で、政府統計を見ていると、まだ6月分までのデータしか追えません。クレジットカードの取引データなど、俗に言うビッグデータと呼ばれるものを分析していると、7月の消費はあまり強くないです。
飯田)そうですか。
森永)6月に非常事態宣言が明けて、反動で消費が増えたのですが、逆にそこで経済が拡大してしまったため、懸念されていた感染拡大が7月に数字で出てしまいました。その結果、自主的な自粛活動がみられてしまっているので、7月もそんなに消費は強くないというのが私の見立てです。そうなると、7~9月のポジティブな見通しというのは、ちょっと甘いのではないかと思います。
飯田)V字回復までは行かずに、L字のような、少し上がるかどうかくらいになってしまうかも知れない、ということですか?
森永)少なくとも、消費はそのような状況になっています。
飯田)個人消費の部分がその状態だと、設備投資や政府の支出で何とかなりますか?
森永)日本の場合、GDPの6割近くを個人消費が占めているので、そこが落ちると全体の数字も落ちやすくなってしまうと思います。
飯田)スタジオには、ジャーナリストの有本香さんもいらっしゃいます。
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新税率に対応したレシート=2019年10月1日未明、東京都品川区 写真提供:産経新聞社
消費税減税はマストである
有本)私が気になっているのは、政府、西村大臣が再三「しない」と言っている消費税についてです。これはコロナが今年(2020年)に入って始まってしまう前から、昨年の第3四半期の時点でも、コロナの影響で相当マイナスがあったということですので、森永さんは消費税を時限的にでも減税するような策については、いかがお考えでしょうか?
森永)ご指摘の通りで、今回のGDPがコロナによってかなり落ちたという報道は目立つのですが、現実としては、もともと景気後退していたところに、2019年10月の消費増税があって、思いきり景気を冷やしたところに、運悪くコロナが来たという流れです。消費増税の影響は、昨年(2019年)の10~12月のGDPを見てもわかる通り、相当経済に悪影響を与えたことは、指標を見れば明らかです。これは「減税したらそれだけ効果が出ます」ということの裏返しでもあるので、消費減税がマストであるということは間違いないと思います。
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2020年4月16日、第29回新型コロナウイルス感染症対策本部~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202004/16corona.html)
さらに個人には定額給付金、法人には持続化給付金も合わせて行うべき
森永)私からすると、それだけでは足りないと思っていて、6月の消費データを見ていますと、定額給付金はかなり消費にプラスの影響を与えているということが確認できています。一時期、「貯金に回るから意味がない」という否定的な意見もありましたけれども、少なくともデータを見ている限りでは、けっこうな方が高額な耐久財を買って使われていることなどが確認できています。一方、法人では持続化給付金。こちらのおかげで、1ヵ月か2ヵ月くらいは延命できたという表現を使う経営者の方もいらっしゃるので、消費減税はマストであり、個人に対しては定額給付金、そして法人に対しては持続化給付金。このような現金給付も併せてやらないと、かなり厳しいだろうと考えています。
飯田)補正予算を組むなりして、早急に対策を打たないと、なかなかすぐには効かないですよね。
森永)やると決めてからも時間がかかってしまいますので、早くやらないといけません。結局、現金給付も1回だけやって、そのままになっています。「7~9月はその反動で上がるかも」と、そこだけを取り出して変にポジティブな予想を立てるのは、無責任だと思います。