政府が「国葬」ではなく「国葬儀」と言う理由
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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が9月8日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。安倍元総理の国葬について解説した。
「国葬儀」についてきちんと説明できるかどうか
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国会は9月8日、安倍元総理大臣の国葬をめぐる閉会中審査を開く。衆議院では午後1時から、参議院では午後3時から行われ、岸田総理大臣と松野官房長官が理由や意義を説明する。
新行)この件に関連して、リスナーの方からメールをいただいています。座間市にお住まいの“たかし”さんから。「きょうの国会閉会中審査で、野党側は何をゴールに設定して審査を進めるのか、与党側はどこまで理屈が通る説明をするのか。また自民党の旧統一教会関連の点検内容の結果、点検を踏まえた行動がどうなるのかも興味があります」といただきました。
野村)私も含めて、今回の閉会中審査に関心を持っている方々は多いと思います。総理は「今回の国葬儀」と言っていますが、きちんと説明できるかどうかということです。
閉会中審査に総理が出席するのは極めて異例 ~「出席するかどうかは総理が自ら判断する」という仕組みに変わってしまった
野村)その前に、総理が閉会中審査に来て説明するということは、極めて異例です。なぜこうなったかと言うと、「国民に対する説明が足りない」という声を受けて、岸田総理が自ら判断したからです。
新行)総理自らが。
野村)閉会中審査については、かねてから「総理、来てくださいよ」と野党が言うのです。それに対して総理は「国会の運営は国会が決めることだから」と言って、ある意味で行かない理由にしてきたわけです。しかし今回は自分で「行く」と言ってしまったから、いままでの理屈と少し違って、結局、「総理が自ら判断するという仕組みに変わってしまった」という側面があります。
新行)今回のことによって。
野村)そのような従来のしきたりを飛び越えてでも、国民にはきちんと説明しなくてはいけないということです。きょう開催される閉会中審査には、そういう理由があるのです。
内閣府設置法に則った国の儀式としての「国葬儀」 ~これまでの国葬とは異なる
野村)メールにもあったように、何が議論されるのかということですが、新行さんは何に関心がありますか?
新行)野党側が「法的根拠がない」と言いますけれども。
野村)政府は「国葬」ではなく、「国葬儀」と言っています。これは「かつて行われていた国葬とは違う」ということを示しているのです。
新行)これまでの国葬とは違う。
野村)「内閣府設置法」という法律のなかに「国の儀式ができます」と書いてあるので、その1つとして行うということなのです。今回は、ある意味「国の儀式」として行いますと。だから「国葬」ではなく、「国葬儀」と呼んで整理しているということなのです。
新行)内閣府設置法に則って、国の儀式として行うと。
「国民の権利を侵害するような内容を含んでいるかどうか」 ~法的根拠があるかどうかのポイントはここ
野村)確かに内閣府設置法という法律が一応ありますから、法律に基づいていることは明らかであり、法的根拠がまったくないというわけではありません。しかし国の事柄、やれることを全部法律でこと細かく手続きから何から決めているかと言うと、そんなことはなくて、国民の権利を制限するような行為については、法律をきちんとつくりましょうというルールなのです。
新行)国民の権利を制限するような行為については。
野村)今回の国葬儀においては、「国民の権利を侵害するような内容を含んでいるかどうか」というところが、法的根拠があるかどうかのポイントになります。
休みにしない、弔意を強要しない ~国民の権利を制限しないので閣議決定さえすれば行うことができる
野村)一見すると「国の全額負担で予算を使う」ということだから、「国民の税金を使っているので国民の権利を侵害している」となりがちなのですけれども、「全部法律に書かないと予算を執行できないのか」と言うと、そんなことはありません。ある程度、内閣の裁量の余地がある。
新行)内閣の裁量の余地がある。
野村)では、「国民の権利を制限する」とは何かと言うと、例えば思想・信条の自由、信教の自由などです。そういうものを制限するようなセレモニーなのであれば、きちんと法律をつくりましょうという話になっているのです。
新行)その権利を制限するのであれば。
野村)だから政府は「この日はお休みにはしません。儀礼的なことに対して弔意を強要することはしません。国民は自由にしていてください」と言っているのです。「国民の権利を侵害しないので、閣議決定さえすればできる」という整理になっています。
新行)国民の権利を制限しないことなので、閣議決定すれば。
野村)この辺りのことは野党も知っているはずです。「法律があった方がいいよね」という部分はありますが、それ以外のところはなくなっているということではないでしょうか。
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