僅差で「バイデン氏勝利」の場合、権力の空白の可能性も~米大統領選
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月26日放送)に慶應義塾大学教授・国際政治学者の神保謙が出演。終盤に入ったアメリカ大統領選について解説した。
トランプ氏、フロリダで期日前投票
アメリカのトランプ大統領は10月24日、南部フロリダ州ウェストパームビーチの投票所を訪れ、11月3日のアメリカ大統領選の期日前投票を行った。トランプ氏は2019年、居住地を生まれ育ったニューヨーク州からフロリダ州に変更。節税のためと指摘されているが、激戦州のフロリダの有権者にアピールする狙いもあるとみられている。
飯田)23日、日本時間の昼10時から最後のテレビ討論会が行われました。神保さんはどうご覧になられましたか?
バイデン氏有利も決定的ではない
神保)いよいよ最終盤に入りましたが、トランプさんの劣勢とバイデンさんの優位という状況自体は変わりません。ですから、トランプさんは積極的に集会を開催して、それがいかに盛り上がっているかをツイートしていますが、民主党はどちらかと言うとネットやオンラインが中心で、集会自体は控え気味なので、盛り上がりには欠けます。しかし、各種世論調査によると、バイデンさんが優位だということは変わっていません。大差をつけてバイデンさんが勝利という予測が大勢なのですが、我々は4年前の記憶があるので、なかなか日本のメディアも含めて、決め打ちをすることに躊躇しています。当然ながら、激戦州についての予測がよくわからなくて、そこにトランプさんが徐々にポイントを詰めているのではないかという予測もあります。それ自体が全体の選挙の結果を左右するということになると、まだまだ決め打てないということだと思います。
権力の空白が生まれるという可能性も
飯田)加えて今回は郵便投票など、いろいろなファクターが重なっています。11月3日に結果が出ないのではないかという話もありますが。
神保)もし、バイデンさんが激戦州を制し、これまで共和党の地盤だったアリゾナやジョージアの辺りも獲ってしまえば、結果は明白です。議会選挙も同時に行われますけれども、下院に関しては民主党が優位になりそうだということですが、上院ももしかすると……ということで、いわゆる「トリプルブルー」という状況になれば、これはトランプ大統領も結果を認めざるを得ません。しかし、曖昧な結果や、僅差である場合、選挙のやり方も含めて、郵便投票を無効化する可能性もあります。すると、権力の空白が冬に生まれて、内政、外交的にどうなるかわからないというシナリオには、備えておく必要があると思います。
大統領選のタイミングを狙う中国
飯田)イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」の外交専門であるギデオン・ラクマンという人は、台湾に対して中国が動くのではないかという指摘をしています。
神保)中国はこのタイミングでどうするかということは、考えていると思います。かつて、ロシアも大統領選の後でバルト三国など、いろいろなところに介入するタイミングとして狙っていました。
飯田)そうなのですね。
神保)一時期、日本の外務省が習近平主席の訪日を12月に調整していたという報道がありましたが、その時期にするということで、「東アジアの秩序をつないで行く」という意味があったのではないかというのが、私の邪推です。
飯田)タイミング的にヘッジするには、そこで習近平さんを釘づけておけば、大きな動きには出られないだろうということですね。
神保)日米の調整で、アメリカがうまく行かないときは、日本が秩序をつなぐという可能性はあったと思いますが、いまはそういう情勢ではなくなっているので、中国がこのタイミングで何をするのかということは、海洋安全保障を含めて、注意深く見る必要はあると思います。
飯田)日本にとっては、安全保障の文脈でアメリカの選挙も見なければいけないわけですよね。
神保)もちろんです。民主党政権になった場合の日米同盟がどうなるかということも含めて、まさにブレインストーミングを当局はやっていると思います。
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