アメリカ大統領選~“バイデン氏優勢”の世論調査に含まれる「隠れトランプ派」の存在

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。民主党の全国大会が開幕したニュースを受け、11月に行われるアメリカ大統領選挙の行方について解説した。

18日、オンラインの米民主党大会で、司会役を務める女性の後ろの画面に映し出されるバイデン前副大統領とハリス上院議員の写真(ゲッティ=共同)=2020年8月18日 写真提供:共同通信社

アメリカ大統領選、民主党全国大会が開幕

11月のアメリカ大統領選に向けた民主党の全国大会が、8月17日に開幕した。日程は20日までの4日間で党の結束をはかるとともに、ジョー・バイデン前副大統領とカマラ・ハリス上院議員を、大統領と副大統領の候補に正式に指名する。

飯田)新型コロナウイルスの影響により、リモート形式で実施し、盛り上がりに欠けるという報道も一部あります。

佐々木)今回のアメリカ大統領選については、いくつか論点があります。アメリカは経済成長をして来たので、トランプ支持が高まっていました。ところが、コロナでトランプ政権が失敗したと言われて、一気に支持率が低下している状況です。コロナと経済がどうなるのかが軸になると思います。そして、ここで注目しているのは、「ブラック・ライヴズ・マター」に対してどう向き合うかということです。

飯田)黒人の命も大事だという。

アメリカ司法省のイベントで演説するハリス(カマラ・ハリス-Wikipediaより)

カマラ・ハリスさんを副大統領候補としたことにより、BLM支持者を取り入れるバイデン候補

佐々木)BLM運動に対して、トランプさんは一貫して批判的です。バイデンさんはもともと民主党なのでBLM寄りですが、中道の人なので、極端に左派的な運動に対しては親和性が高くありませんでした。極端なリベラルの人からは支持されていなかったのですが、今回はカマラ・ハリスさんという女性の副大統領候補、この人はインド系とジャマイカ系のハーフなので、それを黒人と呼ぶのかどうかという問題はありますが、カマラ・ハリスさんを副大統領候補にしたことで、BLM側の支持者を引き込めるのではないかとみられています。

米西部ネバダ州ラスベガスでの支持者集会で演説するトランプ大統領。「米国は偉大なる再起の途上にある」と述べて11月の大統領選での再選に向け結束を求めた=2020年2月21日 写真提供:産経新聞社

「隠れトランプ支持者」の存在

佐々木)もう1つの問題として、BLMがアメリカを統合できるのかということも重要です。いまの世論調査を見るとバイデンさんがリードしていて、トランプさんは10ポイントくらい差をつけられていると言われていますが、前回の大統領選でトランプさんが初当選したときもそうでした。圧倒的にヒラリー・クリントン候補の方が支持率が高かったのです。有名な統計学者であるネイト・シルバー氏など、世論調査をもとに大統領選の行方を予測する人たちが、軒並み予測を外しました。なぜかと言うと、「隠れトランプ派」がいたからです。トランプ支持だと言えないから、世論調査の電話がかかって来ると、口ではヒラリーと言っていたけれど、こっそりトランプさんに入れていたという問題がありました。

ピンカー(2011年撮影)(スティーブン・ピンカー-Wikipediaより)

批判も出ているリベラル派による「キャンセルカルチャー」~思想の反する人を攻撃して発言の機会を奪う

佐々木)今回、保守寄り、トランプ寄りの発言が、アメリカでしにくくなっていると言われています。有名なところで言うと、スティーブン・ピンカーさんという学者がいます。『暴力の人類史』という著書がありますが、太古の昔は暴力が世界を覆っていたけれど、近代では減っていると論述した本です。進化心理学と言い、人間のLGBTなどを含めて「性向や考え方は、ある程度は遺伝子に組み込まれているもので、簡単には変えられない」という考え方です。これはリベラリズムに反しています。リベラルというのは、「理念があって理想があり、それにともない人間は変わることができる」というものです。保守は「人間はそうそう変わらないから、理想を言っても無駄だ」というものです。その区分けで言うと、スティーブン・ピンカーさんの考え方は保守に近いのです。スティーブン・ピンカーさんは著名な学者にも関わらず、リベラル派からものすごい攻撃を受けています。下手をすると、発言の機会を奪われるのではないかと危惧している人もいます。これを一般的に「キャンセルカルチャー」と言います。自分たちの思想と相反する人たちを攻撃して、発言の機会と場所を奪うという運動のやり方です。運動の手法としてはありかも知れませんが、実際には思想や意思、表現の多様性を失うのではないかという批判も出ています。

飯田)リベラルの理念そのものを否定するような、口封じをするということになりますね。本来なら、どんな発言でもいいと言わなければいけませんよね。

佐々木)明らかなヘイトスピーチや犯罪を容認するなど、犯罪そのものに対してであれば、職を奪ったり発言権を奪うということは正当化されるかも知れません。しかし、単に思想が異なるというだけで、発言の機会を奪ってもいいのでしょうか。ところが、キャンセルカルチャーは発言の機会を奪うことによって、自分たちの見方、思想の正当性をアピールするというもので、これがアメリカで盛り上がっています。ますますトランプ支持者はものを言えなくなって来ている現状です。だから世論調査で出ている数字とは、まったく違うのではないかと思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

日本でも起きつつある「キャンセルカルチャー」~アマゾンプライム解約運動の背景にあるもの

佐々木)ちなみに、キャンセルカルチャーは日本でも起きつつあると危惧しています。数日前、アマゾンプライム解約運動が起きました。

飯田)急にそんなハッシュタグがトレンドに上がって来て、何かと思いました。

佐々木)アマゾンプライムのCMに、ダウンタウンの松本さんや国際政治学者の三浦瑠麗さんが起用されました。それに関して、左派の人たちが三浦瑠麗さんに対する攻撃をしたのです。根拠は、三浦さんが徴兵制について議論しているということです。三浦さんは政治学者のスタートのときから、徴兵制の問題を取り上げていました。戦争への防衛に対して、当事者の意識を持つために徴兵制があってもいいのではないか、という議論をされています。そのことに対して、「三浦瑠麗さんは徴兵制を推進する危険な右翼である」と攻撃をしています。アマゾンプライムが三浦さんをCMに起用したというので、アマゾンプライム解約運動がハッシュタグになり、盛り上がっているのです。

飯田)三浦さんが最初に書かれた『シビリアンの戦争』という本は、「熱狂のようなもので世の中が流れて行くことが戦争を産み、軍部が引っ張ったわけではない」という主張がありました。それを危惧しているからこそ、徴兵制を取り入れることで、自分事として考えて欲しいということですよね。

佐々木)もちろん、三浦さんの主張に対しては、是も非もあると思います。ただ、三浦さんは犯罪者でもなければヘイトスピーチをしているわけでもないので、それに対してキャンセルカルチャーの運動を引き起こすのは言論封殺であり、多様性を失うと思います。アメリカで盛り上がっているキャンセルカルチャーを、日本に来させてはいけません。どんどん分断が広がり、アメリカのような状況になるだけだと思います。

飯田)自由の旗手だったはずのアメリカ社会がそうなっているのは。

佐々木)そうです。リベラリズムの定義は、一体何だったのでしょう。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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