ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月27日放送)にテレビ東京政治部官邸キャップの篠原裕明が出演。10月26日に開幕した中国共産党の5中全会、また、これからの日中関係について解説した。
中国共産党の「5中全会」開幕
中国共産党の重要会議「5中全会」が10月26日に開幕し、2035年までの長期的な経済目標などについての議論が始まった。
飯田)中国共産党第19期中央委員会の第5回全体会議、これを「5中全会」と言います。29日に成果をまとめた公報を発表するということですが、習近平さんの2期10年という、もともとの国家主席の枠を取り払ってどこまで行くのでしょうか?
安倍前総理を通じて思いをアメリカに伝えようとした中国
篠原)3期目を狙う道筋をつけるというのが、この会議の目的だと言われています。ですから、ますます習近平主席への権力集中が進むわけです。そんな中国と我々日本がどう付き合って行くべきか。安倍前総理の周辺に最近聞いた話ですが、日中首脳会談で習近平主席が安倍総理への向き合い方を変えたタイミングがあったというのです。それは安倍総理がトランプ大統領と親密に話すようになってから。「安倍総理を通じて、中国の思いをアメリカに伝えたい」と思う気持ちが全面に出て来たと感じられたそうです。安倍総理に対しても、「トランプと話せる男」だと、それまでとは対応が一変したと言うのです。今回のアメリカ大統領選の行方次第ですが、トランプ政権が仮に続くとしたら、菅総理としては安倍総理がつくった外交資産を引き継いで行くものと思われます。
飯田)ご指摘だと、日本としては、アメリカをてこにして、中国を動かすことができるということですね。
篠原)菅総理の就任時に、習主席が電話会談に応じました。中国の国家主席が電話会談に応じるのは、安倍政権の末期にようやくあったくらいです。これには菅総理も喜んでいました。李克強首相ではなく、習近平主席が出て来たと。
飯田)中国の序列で言うと、内閣総理大臣と向き合うのは、基本的には首相だという形ですよね。
篠原)そうです。国家主席が出て来てくれたということで喜んでいました。
二階幹事長の中国人脈~中国へ行って習近平主席に会えるのは総理大臣と二階氏だけ
篠原)もう1つ言えるのは、安倍さんの人脈だけではなく、菅政権誕生のきっかけをつくった自民党の二階幹事長、この二階氏の中国人脈もすごいです。日本の政治家で、中国に行って習近平主席に会えるのは、総理大臣と二階さんだけです。公明党の山口代表が行って立ち話に短時間応じてもらうというのがギリギリです。二階さんは行くたびに、ほぼ習主席と会っています。
飯田)横に座って会うというあの形。
篠原)二階氏には、中国からの情報が政府のルートよりも早く入って来るのです。中国共産党は党ですから、党を大事にします。与党のトップ、幹事長という立場をよくわかっていて、二階さんに先に話すこともけっこうある。そのくらいの人脈と情報力がある。
飯田)日本の権力構造とはひっくり返っていて、中国の場合、政府も含めて共産党が主導します。だから党の方が偉い。ということはカウンターパートも党同士となる。政権与党になる。
インドネシア、ベトナムにも強い二階氏
篠原)それから、菅総理の初外遊はインドネシアとベトナムに行きました。ここも二階さんが食い込んでいるところです。インドネシアのジョコ大統領とは親友のような関係ですし、インドネシアの閣僚の娘の結婚式に二階さんは出席しています。ベトナムにも今年(2020年)1月に、1000人を連れて二階さんは訪問していまして、2019年にベトナムのフック首相がG20で大阪を訪れた際には、地元の和歌山を案内しています。菅さんとフック首相との会談では、日本の温州ミカンを早期に輸入解禁にしようという話が固まっていますが、これも二階さんの存在が大きいわけです。ベトナムにはいま、日本からリンゴ、梨くらいしか輸出できないところに、ミカンを食い込ませた。
飯田)外務省外交を、基本的にはオーソドックスにやろうとしていると篠原さんはおっしゃっていましたが、それとは別のルートということになると、二階さんのルートに。
篠原)強いです。
飯田)公式ではないパイプも、使えるものは使って行かないといけない。
篠原)議員外交ですね。政府の外交は、どうしても過去の方針に囚われてしまいますが、議員外交は柔軟に対応できます。
理想よりも現実を取る二階氏~菅総理の思考回路に近い
飯田)二階さんは中国に譲歩しすぎるのではないかと心配する人もいます。
篠原)二階さんの外交のやり方は、相手に嫌なことを言っても、相手が言うことを聞いてくれるわけがないではないか、相手の立場に立てと。「相手が大事だと思われているような感覚を覚えさせて、こちらの言うことを聞かせる」というやり方を取るのです。
飯田)刀で斬りあうということではなくて、ある意味で一旦抱きしめておきながら、寝技で絞めて行く。
篠原)「“習近平国賓来日反対”などと言って、中国から何が獲れるのだ?」ということです。二階さんが言えばパンダだって来る。そういう意味では、理想よりも現実を取るという政治家です。菅さんの思考回路に近いですよね。
飯田)そうすると習近平国家主席の国賓来日と天秤にかけながら、尖閣諸島はしっかり守って行く。言うべきことは言うということでしょうか。菅総理の所信表明にも入っていましたよね。
篠原)二階さん自身も、すべて中国に譲るのではなく、「中国は俺を頼らなかったら、どこを頼るんだ?」という思いも持っています。だから「俺が言って聞かないわけがない」というスタンスなのです。
飯田)巧みにバランスを取るというか、そういう形になろうとしている。
官邸の意向をひっくり返して一帯一路サミットのために中国を訪問した二階氏
篠原)2017年に一帯一路サミットで中国を訪問しています。そのときからすでに国賓来日の準備を始めています。いま言われている「第5の政治文書」をつくろうと言っているのも、その辺りから水面下で議論を始めているのです。
飯田)2017年というと、2012年に習近平さんが国家主席に就任して、1期目が終わって2期目に突入するタイミング。2期10年やってきた国家主席は、1度は日本に国賓で来る。必ずここが焦点になるだろうという布石を打ちに行ったと。戦略的に動いているところがありますね。
篠原)一帯一路について、日本の官邸は「あまりコミットしないでくれ」と言っていたのですが、実はアメリカとそれで握っていたのです。でも二階さんは、官邸の意向をひっくり返して中国に行ったわけです。中国はそこを恩義に感じているところがあるのですね。こういう外交のやり方を批判する向きもありますが、そこで実を取った方がいいのではないかという現実的な考え方もある。これは難しいところですが。
飯田)国賓でどこかのタイミングでというのは、具体的になって来ているのでしょうか?
篠原)まだ具体的ではないですね。来年(2021年)のオリンピックは、いまの自民党の反対論を抑えながらできる1つのタイミングかも知れませんが、これはまだわからないですね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。