中国が香港を中国化する理由~英中共同宣言の違反
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月20日放送)に内閣官房参与で外交評論家、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5ヵ国が中国を非難する声明文を発表したというニュースについて解説した。
5ヵ国が中国を非難する声明を発表
香港が民主派4人の議員資格を剥奪したことをめぐり、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5ヵ国は11月18日、中国の行動は「国際的義務に明白に違反する」と非難する共同声明を発表した。5ヵ国の外相は、中国は1997年の香港返還後も自治を維持するとした1984年の英中共同宣言での義務に違反していると指摘している。
飯田)ということですが。
宮家)これは中国とイギリスの合意ですから、私の拙い国際法の知識によると、少なくともイギリスは文句を言えるのです。中国と握ったのですから、「約束したではないか」と。しかし、他の4ヵ国に解釈権があるかと言えば、厳密には違うと思います。ただ、我々にも言えることは、そうは言うけれども、「英中共同宣言は国連に登録してある国際条約ではないか」ということです。だから、これはもう国際的な約束なのだと。その前提でみんな動いていたところで、中国が香港の「高度な自治」を保障していたわけですから、「何とかしなさい」ということは言えるかも知れません。
飯田)そうですね。
中国化が進んでしまっている香港~背に腹は代えられぬ中国
宮家)これに対し中国は何と言っているかというと、英中宣言は既に「歴史的な役割を終えたのだ」と。そういうイメージでいると思います。よく言うよとは思いますが、背に腹は代えられないのでしょう。香港でのああいう民主化の動き、「雨傘革命」から始まってもう何年も続いていて、このまま放置すれば、民主化勢力の人たちがいろいろな選挙で多数を占めるかも知れない。いままでは、行政長官も含めて、相当中国の色のついた人を任命することができたけれども、本当に議会が民主的に選ばれてしまったら、大変なことになる。それが本土の方に波及でもしたら……ということを考えると、私は中国の態度を容認しているわけではないですが、北京はルビコン川を渡って、不退転の決意で打破するしかないと腹を括ったのでしょう。ですから、残念ですが、香港では中国化が進んでしまっているということでしょうね。私も、どうしたらいいか、言葉以上に武力を使うわけにもいかないし、本当になかなか出口はないのですが……、困ったことです。
今後の台湾への影響
飯田)この流れがそのまま台湾にも来るのかどうか。
宮家)台湾とは違います。台湾は海を隔てているわけだし、香港のように陸続きではないですから。しかし、香港と台湾の関係で言えば、皮肉なことに香港であんなに弾圧をするから、蔡英文さんが再選されてしまったのです。中国が香港でやり過ぎなければ、少なくともあんな形で台湾で総統選挙が盛り上がるということはなかったのです。逆効果だったのです。しかし、中国はそれを承知の上で腹を括ってやったのだと思います。
飯田)習近平さんが「戦争の準備だ」と言い出すほど強硬になっていると言われていますが、国内はそれほど不安定なのですか?
宮家)不安定だとは思いませんが、トランプさんが最近は相当台湾へ肩入れをして、中国批判もして、残りが2ヵ月しかないのに、対中関係ではやりたい放題をやって、既成事実をつくっているわけです。そのなかに台湾もあるのです。11月3日の大統領選挙の日に、無人機を台湾に売っているのですから。それは中国にすれば、アメリカから強い脅威を感じているということではないでしょうか。
飯田)それに対して、動かなければならないと。
宮家)ここでしっかり反発しておかないと、大変なことになると思っているのだと思います。
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