黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」（ニッポン放送）に鳩レース競技者・及川茂が出演。鳩レースの魅力について語った。

及川茂

黒木）今週のゲストは鳩レースの競技者、及川茂さんです。普通の鳩に帰巣本能はないのですか？

及川）ないというわけではありませんが、普通の鳩を茨城辺りの100キロ地点に100羽持って行っても、全部は帰って来ません。でも私たちの鳩は、100羽持って行ったら100羽帰って来ます。系統というものがあるのです。まったく競走馬と一緒で、レース鳩はサラブレッドです。

黒木）10歳から飼い始めたということですが、そのきっかけは何だったのですか？

及川）もともと生き物が大好きでした。それで犬とか猫とか小鳥とか、たくさんいました。鳩は飛ばしても、帰って来るではないですか。鳩レースは、鳩が帰って来た瞬間が感動するのです。レースに行く前にはドキドキします。ドキドキとかワクワクがこの歳になってもあります。

黒木）毎日、餌を調整したり、体調を整えたり、可愛がったりするのですよね？

及川）それをやらないと勝てません。基本的には、日の出の10分前に飛ばします。要するにトレーニングです。飛ばすと、鳩はどこかに遠征して、2時間くらいすると帰って来ます。笛を吹くと自分の家の屋根に下りて来ます。

黒木）生まれたときはどれくらいの大きさなのですか？

及川）卵で産まれて、18日で雛になって、25日でもう親から離します。20日くらいで次の卵を2個くらい産んでしまいます。だからすごく増えてしまうのです。でも私たちは年に2～3回しか子どもをつくりません。レース鳩はオスとメスを一緒に置かずに分離します。レース鳩はどこもそうで、2月くらいに配合して6～7月にはもう離し、10月、つまり6ヵ月後くらいにはもうレースが始まるわけです。競馬は3年経つけれど鳩は6ヵ月。サイクルが早いから、その分歳を取るのが早いのです。

黒木）6ヵ月でレースに出ますよね、そのレースに出られる優秀な鳩というのは、どれくらい勝てるのですか？

及川）2～3年はレースできます。でも来年になれば、また来年用の鳩をつくるから、いくらでもできるわけです。

黒木）やっぱりかわいいでしょう。

及川）かわいいです。そこがいちばんですよね。普通の鳩は逃げるけれど、うちの場合は行けば鳩が寄って来ます。えさを置けばつんつんと。

黒木）なでたりとかね。

及川）きついレースになると、お湯でマッサージしてあげます。健康管理が大事です。それは飼い主がやらなくてはならない。えさの調合とかいろいろと。奥深いです。

黒木）毎日忙しいですね。

及川）毎日楽しいですよ。

黒木）いま何羽くらいいるのですか？

及川）500羽くらいいます。

黒木）その500羽をすべてお世話しているのですか？

及川）そうです。1人で。人に任せるのが嫌なので。だから休みがありません。それが楽しい。毎日朝起きるのが楽しいくらい。

黒木）レースは年に何回あるのですか？

及川）年に15回くらいです。

黒木）そんなにあるのですか。

及川）いきなり北海道に持って行くのではなく、茨城、福島、岩手と、100キロ、200キロと距離を伸ばし、正月は休んで、最終的に1000キロの北海道に持って行きます。それでまた翌年の2月から、北海道に向けて5月ごろまでレースするわけです。2シーズンなのです。

及川茂

及川茂（おいかわ・しげる）／鳩レース競技者・及川茂鳩舎

■1949年8月4日生まれ。生まれも育ちも墨田区業平。
■10歳から鳩を飼い始め、17歳のときに若大将号で1000キロのレースで初優勝。一躍、鳩界のプリンスとして名前を知られるようになる。
■その後、愛鳩・若大将号を舎外で亡くしたことを機に、「若大将系」をつくることを決意。両親、直子等を集め、近親系統にすることで大成功を収める。
■21世紀に入ってからは、21世紀を代表する系統「及川シャンテリー系」を確立。また「コンピューター系」という系統もつくり、数々のレースを制して来た。

【鳩レースとは……】
■同じ場所からスタートし、飼い主の厩舎に戻るまでのタイムを計るレース。
※北海道からスタートしたなら、千葉の人は千葉、東京の人は東京がゴールとなる。
※そのため、距離のハンデや地理のハンデがある。北海道からスタートしたら、東北地方では北西の風を受けるため海側が有利。関東地方では千葉県に厩舎を持つ人がいちばん有利。東京の多摩の方は逆風で不利。
※鳩レースをやるために引っ越す人もいるほど。
■距離を時間で割って、1分あたりの「分速」で勝敗を決める。
■鳩の足にはICチップが付いていて、GPSで飛行距離や時間がわかるようになっている。