ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月26日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。次の衆議院選挙に向け、自民党が広島3区で行った公募に10人が応募したというニュースについて解説した。
河井元法務大臣の地元・広島3区~自民党公募に10人
自民党広島県連は、2019年の参院選をめぐる買収事件で公判中の河井克行被告が離党したため、事実上空席となっている広島3区について公募を行っており、11月25日までに10人が必要書類を提出したことがわかった。
その広島3区に公明党も候補を立てる
飯田)25日が締め切りということだったのですが、10人。そのなかには、県議、弁護士、元衆議院議員の男性ほか、女性が2人含まれているそうです。ここは公明党が候補を立てると言っています。
鈴木)公明党のベテラン議員や幹部に取材をしてみると、とにかく「我が党で最大の話題が広島3区だ」とみんな言います。それくらい、公明党としてはここに賭けています。ここは岸田さんの牙城と言われていますが。
飯田)広島県はね、池田勇人さんの地元でもあったというところから。
絶対であった「700万票」を切り始めた公明党の焦り~世代交代などの問題
鈴木)岸田さんの対抗馬とか、岸田さんと対決するとか、自民党と、ということではなく、公明党自身の事情があるのです。どういうことかと言うと、7年8ヵ月と安倍政権が長く続いて、当然、自公政権になって来ましたよね。安定していたと言われています。実は、公明党はその間、ずっと選挙で比例票が減り続けていました。2016年くらいから顕著に見え始めた。去年(2019年)の参議院選挙では、全国の比例票が700万票を切ってしまいました。公明党にとって、これは、とんでもなく大変なことなのです。「700万票ライン」と昔は言われていて、公明党の最大の支持団体である創価学会の選挙運動で、何としても700万票ラインは確保する。「雨が降ろうが、槍が降ろうが、絶対に獲得する票が700万である」と。そこに、さらに運動して票を上乗せする。そこから800万、900万、1000万票を目指すということもありました。それが基本路線だったのだけれども、700万すら切っているわけです。その理由としては、世代交代が組織内でうまく行っていないなど、いろいろな理由があります。
飯田)世代交代の問題ですね。
鈴木)それから特に婦人部の人たちにしてみると、安倍政権の時代に、政策的にずいぶん自民党に譲って来たところがある。公明党は平和と福祉の党ですよ。それなのに、安保法制に賛成しなければいけなかったり、社会保障費の問題などがあり、「自民党に追随しているだけではないか」という、内部の不満もある。そういうことが、選挙運動にも影響して来ています。自民党との分裂選挙もありました。
飯田)顕著なのは東京ですよね。
鈴木)2つに割れたり。
飯田)都民ファーストに公明党がつき、自民は対立という形で完全に割れていました。
政権が変わったタイミングで公明党の勢いを挽回するため~斉藤副代表を擁立
鈴木)それから、沖縄や新潟の知事選挙など。そうなると、どうしても選挙運動そのものも、弱くなって行くわけです。そういうなかで、政権が変わったこのタイミングで、「党の勢いを挽回しなければいけない。このままでは大変なことになる」という事情があるわけです。だから、これがチャンスなら、小選挙区に立てるということになります。
飯田)しかも、立てたのが斉藤鉄夫さんという党の副代表です。重鎮中の重鎮で、落とすわけにはいかないというところですよね。
鈴木)この人は政策通で知られていますが、この人を立てたというのは、それだけ覚悟の裏返しでもあります。この人は落とせないのだから。
飯田)公明党は重複で比例でも立候補を認めない党ですよね。だから、小選挙区で落としてしまったらこれっきりです。
鈴木)これ1本です。絶対に通さなければいけない人を立てるという、決意の表れと言っていいと思います。
飯田)その辺り、厳しいと思ったのが、神奈川の選挙区で、党で要職についた上田勇さんであっても、小選挙区で落ちてしまったらそれっきりになった。
世代交代を目指す公明党
鈴木)世代交代です。これは、運動員もそうだけれども、公明党議員の世代交代ということがずっと課題なのです。3年ほど前に、代表もやっていた大ベテランの太田昭宏さんが、「鈴木さん、公明党の議員の顔ぶれを見てください。自分を含めて、幹部もずっと変わっていない。どうやって世代交代をするのかが課題なのです」と言っていました。次の選挙では、神奈川では遠山さんという若手が上田さんの代わりに出るのだけれども、東京では太田さんも退いて、今度は岡本さんという若手になった。だから、世代交代も次の選挙での、公明党の非常に大きな目標なのです。そして、比例票も含めて議席を増やす。党の勢いをもう1度取り戻すという思いで、この広島に来ています。スキャンダルで、自民党議員がやめたら、次また自民党からというのは出しにくいではないですか。しかも、今回の場合、河井夫妻は、菅さんなども関わっている人です、その菅さんにもある種の責任があるわけだから、そのあとに知らん顔して自民党の後任を立てにくいでしょう。
飯田)「突然公明党が」というように我々も見てしまいますけれども。
鈴木)実際は違うのです。公明党の事情。相手がたまたま岸田さんで揉めているけれども。
飯田)岸田さんの牙城である広島だから、岸田派潰しというところで、公明党とのパイプがある総理や二階さんが動いているのではないかという憶測まであります。
鈴木)それは違います。もう少し純粋に、公明党が「何とかしなければいけない」という長い流れのなかでのことです。こうなると、公募もやってしまって、10人応募が来てしまい、どうするのと。両方出てしまえば、潰し合いになります。
このままだと自民・公明の潰し合いに~試される菅総理と二階幹事長の調整能力
飯田)河井さんも無所属で出るという話もあります。
鈴木)そうなると、野党が行くようなことになる。公明党は単独で行ってもなかなか票が足りないし、自民党が公募の人を勝手に出しても、票が足りない。最悪の状態になります。「菅さん、二階さん、調整してくださいよ」と突きつけている状況にいまなっています。
飯田)自民党本部の雰囲気は、「岸田さんのところだから岸田さんが何とかしてくださいよ」みたいになっているような気がするのですが、それはどうですか?
鈴木)それは、岸田さんが自分で「ここは大所高所から考えたら退きましょう」という流れがいちばん収まりやすいのですが、岸田さんは来年(2021年)の総裁選に向けて戦闘モードに変わりつつあります。だから、そう簡単には退かないかも知れない。ここは次の選挙について、菅、二階、この調整力がものすごく問われると思います。他の選挙区で自民党は公明党の協力を得ないと勝てません。そのバーターという意味で、自民党にしてみれば、広島の1地区である3区を譲ることで、他のどれだけの選挙区が助かりますかと。本当はそうしたいけれども、岸田さんとの事情がある。だからその2人の調整能力がものすごく試されている場面に移りつつあります。
飯田)そこに解散がいつかということが絡んで来るわけですね。
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