「追加経済対策73兆、財政支出40兆」の正しい読み方
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月9日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。政府が閣議決定した追加経済対策について解説した。
政府が事業規模73兆6000億円の追加経済対策を閣議決定
政府は12月8日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加の経済対策を閣議決定した。財政支出は40兆円、事業規模は73兆6000億円となっている。
飯田)見出しを73兆とするか、40兆とするか、国の歳出30兆とするか。各紙の一面が分かれております。
高橋)私は予算書を見る方だから、財政支出の数字を見ます。
飯田)経済に直接効く部分とイメージすればいいですか?
高橋)そうですね。それから予備費を見ていろいろ計算します。事業費はマスコミ向けの見出しでしょう。
飯田)大きな数字を出すと。
高橋)マスコミの人は大きな数字が入ると、それだけで行きます。
飯田)「73兆も大きいから歳出は膨らむ一方」と言われます。
高橋)40兆よりも73兆で大きいと言われれば、まんざらでもありません。少な過ぎて「どうしようもない」と言われたら困るでしょう。大きいと言われる分には、「何が悪い」という話です。そうすると、財務省は言い訳して財政規律がどうこうと言い出します。
飯田)新聞でも財政規律の記事が出ていました。
財政支出~日本銀行が国債を買うのだから、財政負担はない
高橋)財務省の人が「歯止めが効かない」ということばかり言いますが、「別にいいでしょう」と思うのです。おまけに日本銀行が国債を買うのだから、財政負担はないのです。何を心配しているのでしょう。
飯田)「財源の大半が国債である」ということをね。
高橋)そうです。「日本銀行が買うから利払い負担がありません」とはっきり言っています。でもこれに対しては反論がないのですよ。私がこういうことを菅さんや安倍さんに言っているのを知っていて、みんな安心しています。
飯田)「そうなんだ。では安心だね」と。
高橋)こういうときに財政支出したいのだけれど、「財政規律や将来負担がと言われたらどうしよう」と政治家も思うのです。それには「いまの段階でインフレ目標は達成していない、こういうときは問題ありません」と言いました。そうするとみんな、「え!」と言って安心します。
飯田)「ということは、たくさん使えるぞ」と。
高橋)ただインフレ目標になったらダメですが、インフレ目標の間にはインフレ率が下がりますから、「当分大丈夫だ」と言いました。
看護師が足りない~医療関係のためにこそ予備費を使うべき
飯田)新型コロナウイルスの感染拡大防止策で6兆円となっています。これについては、全体から考えるとどうなのかという意見もあります。自治体に地方創生臨時交付金1兆5000億円とか。
高橋)地方にやってもらうのだから、国で考えるより地方に渡した方がいいのです。地方財政が来年(2021年)は悪くなります。地方は中央銀行がないから「国債を発行して中央銀行に買わせて利払い負担をなくす」という手が使えません。「これは国がやって、その利益は地方に渡すのがいい」ということです。
飯田)報道では、時間短縮や休業要請したときの補償金として充てるとしていますよね。
高橋)1兆5000億円ですが、これは予備費がまだあるので増やせます。
飯田)「看護師さんや現場の人たちの待遇が不十分」だと、9日の読売新聞の社会面に書いてあります。
高橋)そのための予備費なのですが、どうしてこういうところに行かないのかがわかりません。私も医療関係者の人に「手当てが上がったでしょう」と聞いたら「ないですよ」と言われました。5月にやった予備費はこういうことに使うべきなのです。
飯田)慰労金として、一時金は出ますよね。
高橋)1回きりでした。もっとやればいいのです。看護師が足りないという話になっています。誠意を見せられるのは、「手当てを上げる」ということしかできません。
予備費の事前チェックが過剰~目詰まりの原因
飯田)いろいろなところで目詰まりが起こっているということですが。
高橋)「予備費が大き過ぎる」という批判があって官僚が委縮しているところもあります。
飯田)何かに使えば、突っ込まれるのではないかということから、そのまま積んでおこうとなるのですね。
高橋)それと財務省の方も「予備費が大き過ぎる」という認識があるのです。閣議で出すなど、手続きが少し過剰です。予算なのだから、後で会計検査院でやればいいのではないかというのが私の考えです。事前のチェックはいらないと思います。
飯田)特にこういう有事の際は。
消費税減税ができない大きな理由
飯田)経済対策で言われるのは税金を下げるべきということですが。
高橋)それは税制改正の話で、政治的に総選挙があるとやりやすいのですが、それ以外は難しいです。経済対策でも与党大綱で検討と書いてありますが、事実上、そのまま出ます。各種の細かい減税措置はありますが、大きいものはなかなかできませんでした。気持ちはわかるのですが、政治プロセスを入れないと難しいです。
飯田)それが遠のいたのは、総選挙そのものが9月くらいになるのではないかということからですね。
高橋)1月にやるなら、大きく行くでしょう。
飯田)ここで目玉の政策を出しておいて、解散になりますよね。
高橋)1月は解散しにくくなっています。2月23日が天皇誕生日なので、跨ぐことができません。だいたい召集日だとそこを跨いでしまいます。
飯田)1月18日が召集日だと、冒頭解散としても。そこに公式の行事等々もあるから。
高橋)やりにくいと思います。
飯田)いままでは12月23日が天皇誕生日だったけれども。
高橋)今度は2月23日だから、その前後に総選挙はやりにくいですよ。
政治プロセスがないと消費税の減税は難しい
飯田)そうすると解散のときに、ひょっとすると消費税の減税をとっておいているかも知れませんね。
高橋)政治プロセスがないと税金の大きな話は難しいということです。
飯田)仮に1年間の特例であってもダメですか。
高橋)法律をつくらなければいけませんから。
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