12月25日(金)、東京都保健医療公社荏原病院 神経内科部長の野原千洋子氏が、ニッポン放送のラジオ特別番組「第46回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」にゲスト出演。「視神経脊髄炎」「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」という、病名すらあまり知られていないこの病気を1人でも多くの人に知ってもらう為、代表的な症状や検査方法、どこに受診したらよいのか、治療における大事なポイントなどを説明した。
■NMOSDとはどんな病気か?
NMOSDは、自分の細胞を間違って攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつで、中枢神経の病気です。人の体は「免疫」によって細菌やウイルスなどの外敵から身を守っていますが、免疫に何らかの異常が起こり、自分の体の細胞を「外敵」として攻撃してしまうことがあり、これを自己免疫疾患といいます。
NMOSDの場合は脳や脊髄、視神経に炎症が起こることが特徴で、人によって炎症が起こる部位が違うので、症状もさまざまです。
■とにかく様々な症状がある
脳や脊髄、視神経の炎症にともなう、様々な症状があらわれますし、同じ患者さんでも季節や体調によって変動することがあります。
・視神経の症状……急な視力低下、視野が欠ける、色の区別がつかない、まぶしい、目の奥が痛い、など。
・脊髄の症状……手足の麻痺や脱力、しびれや痛み、尿が出にくいなどの排尿障害がみられることも。
・脳の症状……十分な睡眠をとっていても強い眠気、ごはんも食べられないような激しいしゃっくりなど。
・激しいしゃっくりの症状が出たら注意
しゃっくりが止まらない、吐き気や嘔吐がある、といった症状は延髄(脳)の症状として特徴的です。ただ、普通の1~2回のしゃっくりではなく、ずっと連続する、止まらない、ごはんも食べられないような激しいしゃっくりのことです。しかし、この症状が“脳神経内科の方の疾患”と気づく方があまりいません。しゃっくりがずっと連続するという時は、脳の病気であることを少し頭に置いていただけるとありがたいと思います。
・疲労や倦怠感
NMOSDの患者さんの多くは、疲労や倦怠感で悩まれていて、体を動かした後に強い疲労を感じたり、時には起きたばかりなのに非常に疲れている、と感じることもあります。
・ウートフ現象
特徴的な症状として「ウートフ現象」とよばれるものもあり、運動や入浴、体温の上昇で、一時的に症状が悪化することがあります。体温が高くなると神経の伝わりが悪くなるためにおこるという風に言われているんですけれども、体温がさがると症状は回復します。
■NMOSDの検査
まずは問診で経過や症状を詳しく聞き取り、そのあと、言語機能、目の動きや視野の検査、運動機能検査、血液検査、MRI画像検査で脳や脊髄の画像を撮影し炎症部位がないかを確認するなど、じっくり検査をします。
■発作で失明や歩行障害などの症状が残ることも……
NMOSDは最初の発作で重い症状が現れることが多く、数時間から数日間で急激に進行することがあります。この時期を「急性期」と呼びます。いったん、症状は落ち着くのですが無治療の場合、1年に1~1.5回の頻度で再発するといわれています。1回の発作で失明や歩行障害などの症状が残ることもあり、再発を繰り返すと後遺症が増え、重症度がどんどん進むので、最初の治療が大事です。
■NMOSDの治療
症状が急激に進行する急性期には、炎症をできるだけ早く抑え、後遺症が出ないようにする為に、早く治療を始め、集中的に行う必要があります。急性期治療後は、再発を予防するための治療を行います。
1度の再発で、障害や後遺症を残すことがあるので、定期的な受診を継続して治療を行うことが非常に重要です。この他にも、しびれや痛み、倦怠感などの症状に応じた対症療法や、麻痺や筋力低下に対してはリハビリテーションが有用です。
大事なポイントは、脳神経内科、眼科の専門医を受診して早期に炎症を抑えること、また再発しないために治療を続けることです。
1) 日本神経学会. 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン 2017. 医学書院. 2017
記事監修:中外製薬株式会社
NMOSDの情報を提供し、患者さんと家族の思いを未来へつなぐサイト
視神経脊髄炎(NMOSD)Online :https://nmosd-online.jp/