「武器使用」に日本はどう対応するべきか~中国が海警法を審議
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月21日放送)に東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が出演。中国の全人代で海警法草案の審議が行われたというニュースについて解説した。
中国・全人代常務委員会で海警法を審議
中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会が1月20日から北京で開かれている。国営新華社通信によると、この常務委員会で、中国海警局の武器使用などに関する権限を定めた海警法草案の審議が行われ、22日までに可決の可能性がある。
飯田)主権の侵害等を彼らが認めた場合には、武器使用が認められるということになります。尖閣などに関して、日本は大きく影響を受けますよね。
海保への高まるリスクをどう考えるか~その先にある武器使用への対応
鈴木)そうですね。尖閣、東シナ海、南シナ海と、かなり緊迫した状況になりつつあります。しかもこの間、中国はサイバーや宇宙も含めて、自国に対する攻撃への武器使用を積極的に認めるような姿勢に転じて来ている。そういう意味では、かなりリスクが高まって来ているという印象があって、日本も大きく影響を受けると思います。
飯田)メールでもいただいています。横浜市港北区の“ヤスユキ”さん、47歳の方。「こうなると早急に中期防(中期防衛力整備計画)などの見直しも要求されることになりそうですよね」ということです。
鈴木)おそらく日本単独で対応することは難しいと思います。中国海警局なので、あくまでも軍隊ではないということになっています。問題は防衛力というよりも、日本の海保が対応しなければいけない。その海保へのリスクが高まるので、それに対する対処を考えなければいけないという段階にいまはあると思います。その先にもし、向こうが武器使用をした場合、日本の海上自衛隊が対応に出るのかどうか、こういうことも含めて、いろいろな頭の体操をしておかなければいけないという状態です。
飯田)その後ろには日米同盟があり、安全保障条約があり、米軍があるというところまで構えがあるわけですよね。
鈴木)そうですね。もともと東シナ海の状況は、米軍の存在で抑止されているということになっているので、バイデン政権が、尖閣に関しては日米安保条約の第5条、つまり、集団的自衛権の適用範囲であるということを伝えて来ていますので、そういう意味では、抑止力の効果を発揮することにはなるだろうと思います。ただ、海警局でこういう法律が通ったことによって、「いつでも使えるのだ」と思ってしまうと怖いので、その辺りは、中国のなかでどこまでグリップしてコントロールできるかということも含めて、偶発的な問題も気にしておかなければいけないと思います。
中国とコミュニケーションを取ることは重要
飯田)中国の担当の部署と日本のアジア大洋州局長のオンラインだと思いますけれども、会議が開かれたという報道がありました。こういうチャンネルをいくつも用意しておくということも重要ですか?
鈴木)これは信頼醸成措置というか、お互いのコミュニケーションを大事にすること。どういう意図でそこに海警局がいて、中国がどういう意図を持って行動しているのかということを知ることも大事ですし、それを伝え合うことも大事ですので、このようなやりとりがあるということは望ましいことではあると思います。ただ、それでもこういう法案を通すということになると、「いつかどこかで何があるかわからない」と、ポーズは取り続けないといけないというところでは、しんどくなったという感じがします。
中国への強硬姿勢は変わらないが、「強硬一辺倒」ではないバイデン政権
飯田)バイデン政権の周りを固める閣僚人事、いま上院で公聴会が行われていますが、中国政府がウイグル人の方々についにジェノサイドを行っていると認定しました。これはポンペオさんが認めたということで、次の国務長官になるブリンケンさんも認定に同意すると報道されていましたけれども、これは一定程度つながりを持ってやることになりますか?
鈴木)中国に対しては、トランプ政権の強硬姿勢を引き継ぐ形にはなるだろうと思います。特に、ウイグル族の問題については、人権問題なので、バイデン政権は人権問題については極めて強く対応するだろうと思います。ジェノサイドを認めたかどうかというのは、言葉の問題もあるので、どこまでそれを汲んで言っているのかはわかりませんが、少なくともウイグル族の問題については、バイデン政権も厳しく対応するでしょう。他方で、環境問題については、バイデン政権も中国との協力が必要だということも認めています。トランプ政権の対中政策は強硬一辺倒だったと思うのですが、バイデン政権は、厳しいところは厳しく、協力するところは協力するというような組み立てでやって行くのではないかと思います。
飯田)日本としては「自由で開かれたインド太平洋」という旗印を掲げてやって来ている。バイデンさんはこの言葉を使いたがっていないのではないかと、一部危惧する動きもありますが。
鈴木)その代わりに「安全で繁栄したインド太平洋」ということを言っていますし、今回のカート・キャンベルさんは元国務次官補ですが、彼がインド太平洋調整官というポジションについたので、インド太平洋という枠組みは変えるつもりはないだろうと思います。ただ、「自由で開かれた」ということが何を意味するのか、多分トランプ政権と違う言葉を使いたいということもあるのかも知れないので、その辺りはニュアンスの違いはあるにせよ、「インド太平洋」という枠組みで考えているということが重要だと思います。
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