中国・王毅外相来日の「本当の目的」は
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月25日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。茂木外務大臣が来日中の中国・王毅外相と会談したニュースについて解説した。
中国・王毅外相来日~茂木外務大臣と会談
茂木外務大臣は11月24日、日本を訪れている中国の王毅外相と会談した。会談では新型コロナウイルスの感染拡大を受け、制限していたビジネス関係者の往来を11月中に再開することで合意した。また、茂木大臣は尖閣諸島周辺での中国による領海侵入について、前向きな行動を強く求めた。
飯田)メールもいただいております。千葉市のラジオネーム“モーニングスター”さん。「このタイミングで来日の意図を知りたいです。いまコロナが感染拡大している日本に来日というリスクは高いですよね。アメリカ大統領選の混乱をついてという分析も目にしますけれども、会談の内容も想像を超えないし、いまでなくてはいけないという話もなかったと思いますが」という意見です。どうご覧になりますか?
高橋)ずっと、日本に来たいと言っていましたよね。
飯田)10月の頭に来るという話も出ていました。
来日の本当の目的~習近平氏の「国賓での来日」に結び付けたいのか
高橋)習近平さんの来日に結び付けたいのでしょうね。
飯田)「国賓での来日」という話に結び付けたいということですか?
高橋)延期ということになっています。「延期と言うのであれば」ということを言いたいのではないですかね。
飯田)表に出ている報道発表の話では、国賓来日の話はなかったということですが。
高橋)「お互いにそれは話さなかった」ということになれば、そういう発表になるのでしょう。でも「話さない」ということであれば、よくわからないですよね。
飯田)「では何のために来たのか」という話になります。
高橋)実際は話したかも知れないし、わからないですよ。来るのであれば、「では領有権は放棄しろ」というか、「もう変なことを言うな」と言えば、終わってしまうかも知れませんね。
飯田)尖閣周辺について。
高橋)「尖閣にも一切手を出さない」と言ってから来いとかね。
飯田)「確約してくれるのであれば、来てもいい」と。
外交の前に中国との軍力の装備の差を縮めなくてはならない
高橋)外交なので、いろいろやってもいいのではないでしょうか。でも、尖閣のところで、「300日以上にわたり航行」などと言っているけれど、完全に海警局と海上保安庁の装備差があります。向こうは5000トン級で日本は1000トン級というレベルです。数も違います。それから海上自衛隊と中国海軍が出ても、装備差があり過ぎます。これはまずい状態だと思います。だから外交でどうのこうのと言う前に、日本国内で密かに装備を高めることはできます。高めないと、中国に「やってもいいのですか?」と思わせてしまうメッセージになるのですよ、これは。国際社会は逆でね、日本が装備を増強すると、誘発するのではないかと言われることがありますが、実は逆です。
飯田)「軍拡競争を誘発するのではないか」という議論もありますね。
高橋)誘発ではなく、「競争をして均衡を保っていないと危なくなる」というのが国際常識です。10年くらい前は、日本の方が優位だったわけです。
飯田)経済的にも差もあったし。
高橋)それが瞬く間に抜かれてしまった。ということは、そこを均衡させないと外交もできないのですよ。やるべきことは装備のアップです。装備アップというのはお金が付けばできます。
飯田)予算が付けば。
高橋)予算を付けて装備を上げないと、中国はよからぬことを考えたくなってしまうのです。
装備の不均衡があると戦争の確立が高まる~何かあっても座していては、アメリカは来てくれない
飯田)アメリカが権力の移行なのかどうなのかという機会にあって、内向きになっていると。こういうタイミングでは、もしかするとアメリカが出て来ないというような。
高橋)ということになるので、やる気になってしまうのです。でも、そういうときはアメリカに頼ってはダメです。日本がまずやらないと、アメリカも来ません。どんなに安保適用だと言っても、日本が行かなかったら話になりません。
飯田)バイデンさんとの電話会談のなかで、菅総理も尖閣は安保5条の防衛範囲だということを確認はしたということですが。
高橋)確認はしましたが、日本が座して待っていたらアメリカもやりません。
飯田)あそこに関しての施政権は認めているという感じではありますが、主権は自分たちで……。
高橋)守らないと。それでいまは、装備の不均衡があって危ない状態だと私は思います。軍事力で両方が均衡しているときには、戦争の確率は低いのですが、不均衡になると逆に高まるのですよ。
飯田)一気に高まってしまう。
高橋)かなり危ない状態です。艦艇の数は数倍違います。これはもう危険だと思います。尖閣も台湾も同じように中国は考えていて、要するに「核心的利益」ということで、「いつか獲るぞ」とはっきり言っているのです。それは台湾も危ないから、潜水艦を自前で建造するのです。アメリカも守ってくれないかも知れないから、一生懸命やるわけです。同じようなことは日本も絶対必要だと思います。これはやらないと、危険な不測の状態が出てしまいます。それをまず日本のほうできちんと固めるというのが、専守防衛と言うのであれば、それが必要ではないですか。
防衛予算は10兆円くらいないと足りない
飯田)新聞の報道では、「イージス・アショアの代替でイージス艦をつくる」と「2隻でだいたい5000億くらい」だというような記事が出ていますが、そんな額では足りないということですよね。
高橋)足りない、足りない。防衛予算は5兆円くらいでしょ。10兆円くらいないと足りないのではないでしょうか。
飯田)なぜかいまだにGDPの1%凸凹に抑えてしまっている。
高橋)世界を見ると、1%の国なんてありません。中国の防衛費とは比べものにならない。
飯田)しかも、中国は軍事費に研究開発費は入っていないということですから。
高橋)何が軍事かわからないでしょ。おまけに共産党の軍ですからね。
飯田)中国人民解放軍というのは、国軍ではない。
高橋)共産党の軍です。そういうのが隣にいるわけで、それが増強しているのです。増強していると、相手としては、「いいのですか?」という感じになるのですよ。
10年前とは状況が違う~国防の在り方を考える必要がある
飯田)これは、イージス・アショア代替の話とミサイル防衛の話でしたが、本来は防衛するだけではなくて、策源地も叩くような能力があったほうがいいのではないかという議論が当初はありましたが。
高橋)なくなってしまいましたね。アショアの話も、もともとイージス艦にすることができないからアショアにしたのですが。
飯田)船をつくる人もいないから、「では陸につくろう」というような話でした。
高橋)陸上自衛隊でやるのは難しいですからね。海上自衛隊でやるのが普通なのです。でもいろいろと国防のことは考えたほうがいいと思います。10年前とは状況が変わっています。
アメリカ軍がアジアから退けば間違いなく中国が出て来る~台湾と尖閣を連動して狙っている中国
飯田)その上、アメリカは政権が変わっても退いて行くスタンスは、オバマ政権のときから変わらないですよね。
高橋)間違いなく退いて行きます。退いて行って、不均衡が出たときに、いろいろな紛争が起こりやすくなります。そのときに、それを日本が補わなければ、補ってくれる人はいません。
飯田)その分の空白地帯に中国が出て来ると。
高橋)間違いなく出ます。その対象が尖閣と台湾で、核心的利益で残っているのはその2つくらいしかないのです。ウイグル・チベットも終わったし、南シナ海も終わった。香港も終わっていますから。そうすると台湾と尖閣です。それは一緒に来るでしょう。
飯田)一緒なのですよね。台湾が攻められると、他人事みたいに思う人もいますが。
高橋)他人事ではなく、完全に連動しています。地域的にも連動しないと、中国の戦略が完結しませんから。
飯田)まさにここを自分のできごとだと思って議論しなくてはいけないですね。議論だけではなく、実際にお金を付けるなり何なり。
防衛費を確保してから外交交渉をするべき
高橋)お金を付けて万全な用意をしてから、外交交渉をするということです。お金を付けないで、外交交渉で何とかしようというのは、やめるべきです。
飯田)確実に負けるということですか?
高橋)負けます。力の差があったら外交なんてできません。
飯田)問答無用になると。
高橋)そりゃあそうです。
飯田)その問答無用さを南シナ海などで、見せつけられ続けて来ていますからね。
高橋)香港も問答無用ですよ。
飯田)そうでしたね。
高橋)ウイグル・チベットもそうです。だから、問答無用でやるのが普通なのです。「話し合えば」ということではありません。国際社会は問答無用でやるのです。
飯田)そんな甘いわけではありませんからね。
高橋)問答無用でやるのが国際社会ですから。
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