中国への懸念を強調したバイデン大統領~米中首脳初の電話会談
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月12日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。バイデン大統領が習近平国家主席と行った電話会談について解説した。
アメリカのバイデン大統領が中国の習近平国家主席と初の電話会談
アメリカのバイデン大統領は現地2月10日、中国の習近平国家主席と電話会談し、不公正な経済慣行や香港の弾圧強化、新疆ウイグル自治区での人権侵害、台湾への威圧的態度などに懸念を表明した。バイデン氏が1月20日に就任して以降、習氏と会談するのは初めてのことだ。一方、習氏は台湾、香港、ウイグルの問題は「中国の内政」だと反論し、一歩も譲らない立場を明確にしている。
飯田)「すれ違ってしまったのか」という感じですが。
厳しいバイデン大統領からの会談内容
宮家)すれ違いでしょうね。ホワイトハウスがこの電話会談について、リードアウト、つまり発表文を出しています。たった11行しかないのですが、その凝縮された内容は素っ気なく、取り付く島もありません。
飯田)短いですよね。
宮家)ええ。まず挨拶があるのですが、「中国の人々へ」ということで、習近平さん個人について一言も言っていないです。まあ、それはいいとして、いまおっしゃったように不公正貿易や香港、台湾、ウイグルの話で中国を批判しているのですが、その前に、とにかくアメリカの安全保障、繁栄を第一に考える、そして「自由で開かれたインド太平洋」の維持を優先すると言っています。さらにいちばんパンチが効いていると思うのは、最後のところです。確かに中国側と協力をする用意があることは書いてあるのです。例えば、国際的な健康対策、コロナの話ですよね。それから、気候変動などです。そのときに何と言っているかというと、バイデン大統領は中国との「協力」とは言わず、「関与」については、「アメリカと同盟国の利益を拡大することになるのであれば、現実的かつ結果重視で“関与”をする用意がある」と言っているのです。要するに、習近平さん、言葉だけではダメですよと。現実的、具体的でなくてはいけないし、結果が出なくてはダメだと言っているのです。ですから、先ほど申し上げた通り、バイデンさんの話は取り付く島がない。中国側も少し困ったのではないかと思いますね。
中国に対しての幻想がなくなり、現実を見始めたアメリカ
宮家)その直前には、ブリンケンさんと楊潔チさんが電話で話しています。
飯田)両国の外交トップですね。
宮家)ブリンケンさんはそこでは言っていないのですが、対中政策は、「強い立場」からやるのだと言っていますね。日本でも一部で、バイデンさんになって、中国に対する態度が軟化するのではないかとか、バイデンさんは親中なのではないかというような議論がありましたが、少なくともこれを文言で読む限り、中国に対しては極めて厳しい気がしますね。
飯田)むしろ前政権のトランプさんより厳しいのではないですか?
宮家)トランプさんよりはもう少し洗練されたやり方だと思いますが、基本的には同じだと思います。何しろブリンケンさんが上院で承認されたときに、「トランプ政権の中国政策はどう考えるか」と聞いたら、「賛成だ」と答えて、みんな驚いたくらいです。ですから、実際には、トランプさんと似たような考え方というか、アメリカ全体が議会も含めて中国に対して幻想がなくなり、現実を見始めたのではないかという気がします。
日本は国際社会の一員として中国に向かうべき
飯田)ではそのなかで、日本がどのようなポジションをという話になりますが、これもいままで通りということでしょうか?
宮家)これもいつも申し上げることですが、アメリカを取るか、中国を取るかということではないのだと思います。国際社会、基本的な人権など普遍的な価値を守ろうとする国際社会に対して、そうでない国、例えば中国、があるという構図でなくてはいけないし、それはミャンマーについても同じなのです。日本はどちらを取るかではなくて、あくまでも国際社会の一員として行動するということに尽きると思っています。
ヨーロッパも現実を見始め、インド太平洋地域に関心を寄せている
飯田)その意味で言うと、アメリカというのが大きな存在として見えますが、一方でヨーロッパの国々も、ここのところ東アジアに興味を示していますが、ここも日本にとっては活用するべきことなのでしょうか?
宮家)以前ならヨーロッパの人たちは、中国については儲かるからと、ビジネスの利益を考えたことがあったかも知れません。しかし、最近あまりにも中国の動きが酷いとなると、ヨーロッパも世界でいちばん成長率が高く、拡大可能性の高いインド太平洋地域において、自分たち欧州も関与したいと思うのは当然です。イギリスのTPPへの加盟が象徴的です。いまはフランスやドイツもこの地域に関心を持ち始めている。「インド太平洋」的な我々の発想に欧州諸国が寄って来ているということは、彼らもやっと現実を見始めたという感じがします。
日本は国際社会の真ん中にいなくてはいけない
飯田)脱欧入亜のようになって来て。
宮家)それはいまの傾向ですが、またこれも変わりますよ。中国の態度が変われば変わりますから。しかし、中国が態度を変えそうにないので、当面はこれで行くことになると思います。
飯田)だからこそ、1つのところに張るということはせずに、原則論を繰り返して行くことが大事だと。
宮家)日本は常に、国際社会のど真ん中にいなくてはいけないということです。
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