今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月9日放送)に戦略科学者の中川コージが出演。バイデン大統領がCBSテレビに出演し、中国の習近平国家主席について語ったニュースについて解説した。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

習主席、国連総会の一般討論演説=2020年9月11日 〔新華社=中国通信〕 中国通信/時事通信

バイデン大統領が習近平氏について「賢明で厳格だが民主主義的な考えはない」と述べる

アメリカのバイデン大統領は2月7日、CBSテレビに出演し、中国の習近平国家主席について、「とても賢明で厳格だが、民主主義的な考え方をまったく持ち合わせていない。批判するつもりはなく、それが現実だ」と述べた。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

就任式で宣誓後、手を振るバイデン米新大統領=2021年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

詰将棋的に進めれば中国を抑えられるバイデン大統領~失敗すれば総崩れになる恐れも

飯田)オバマ政権の副大統領の時代に会談を重ねたということで、「習近平氏のことをよく知っている」と述べたということです。「電話首脳会談も行わない理由はない」と述べたようですけれど、どうなって行くのですか? トランプさんのときのように角を突き合わせることはない、という読みもありますが。

中川)米中対立はここ数十年のトレンドなので、中国に対しては、アメリカは国内も含めてコンセンサスが固まっているところなのだと思いますが、やり方ですよね。短期で強いパンチで殴って行ったのがトランプさんですが、バイデンさんの場合には、オーソドックスに詰将棋的な形でやって行ければ、中国を抑えられると思います。しかし、詰将棋的にやって失敗すると総崩れになるので、「それは大丈夫なのかな」というところもあります。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

習近平氏、長江経済ベルト全面的発展推進座談会で重要演説=2020(令和2)年11月14日 新華社/共同通信イメージズ

これまでの対米方針を変えることは組織の大きい中国には大変なこと

飯田)基本的にまずは同盟国と話して、というのがバイデンさんのスタイルだと。その辺をどう突き崩して行くかということを中国は研究しているわけですか?

中川)北京中央としての最大のリスクは、バイデンさんがうまくやることです。どううまくやるかと言うと、いままでのトランプさんの政権下では、アメリカがWHOから抜けようとすれば、中国はWHOに「お金を出しましょう」などという形でスポッとアメリカの空いたところに入って行くという戦略を取って来ました。「国際協調を中国が旗頭でやりますよ」と。それで「アメリカというのは一国主義ですね」というレッテル貼りをやったわけです。そのやり方が変わって来るということです。いままでやっていた方針が再度変わらなければいけないというところなので、中国としては、それは大変なのです。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

米大統領選でバイデン氏の勝利が報じられた後、ワシントンのホワイトハウスに戻るトランプ大統領=2020年11月7日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

もう1つのリスクは民主党政権がまた終わって共和党の“ネオトランプ”が出て来ること

中川)中国にとってのもう1つのリスクは何かと言うと、バイデンさんが内政で失敗して、民主党政権がまた終わって、4年後に共和党の強い、ネオトランプが出て来るということです。中国は巨大な官僚組織なので、そのときの対応戦略が大変です。その度に防御政策を変えることは大変なのです。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

19日、米デラウェア州で記者会見するバイデン前副大統領(ゲッティ=共同)=2020年11月19日 写真提供:共同通信社

国内重視でこの数年間やって行く中国

中川)そこで、5中全会もそうですし、2035年の目標でもそうなのですけれど、「双循環」ということを言っています。特に言っているのは「国内循環を基軸にした双循環」ということです。これまでの一帯一路のように、「外に向けて強くやって行く」としていたのを、「より国内重視でやって行きましょう」と言っているのです。簡単に言ってしまうと。

飯田)国内重視で。

中川)アメリカを強いライバルとして見て行くなかで、国内重視でこの数年間行くということなので、その上で米中関係を見た場合に、アメリカのバイデン政権がどのような形であれ、中国はより内向的に走って行くと思います。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

沖縄県・尖閣諸島 手前から南小島、北小島、魚釣島 海上自衛隊の哨戒機「P-3C」 から=2011年10月13日 写真提供:産経新聞社

尖閣など“グレーゾーン”は現状維持のまま

飯田)その内向的の範囲なのですけれども、中国の国土のみならず、彼らの言うところの東シナ海や南シナ海も「中国のものだ」というような主張をしていると考えると、その辺に関しては緩めて来ることはないということですか?

中川)「内向的」ということをどう捉えるかだと思うのですけれども、このグレーゾーンになっているところに関して、これを引くのは内向的ではない。つまりグレーゾーンはグレーゾーンのまま残しておく。例えば我々で言えば、尖閣に入って来るわけですし、南方や東、東南アジアなど、アメリカの影響力がこれ以上に強まるところに対しては、「出る」という拡張方向には行かないと思います。グレーゾーンはグレーゾーンのまま残すというのが、彼らの内向戦略上の1つの形だと思います。

飯田)ある意味の現状維持。

中川)だから尖閣に対して別に引くというのが内向的ではなくて、「現状でちょっかいを出す」というのが、彼らの現状維持だと思います。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

習近平国家主席=2020年6月22日 写真提供:時事通信

欧州の離反は中国にとってマイナスとなる

飯田)いまコロナでアメリカ自身が内向きになっているところで、鬼の居ぬ間に何とやらで、「台湾を白黒はっきりつけてしまおう」というような動きにはなりませんか?

中川)アメリカの出方次第だと思うのですが、台湾を軍事的に絡め取って行こうとすれば、国際的な批判も高まるし、アメリカも黙っていないと思います。中国としては、あくまでもライバルをアメリカと捉えるなかで、欧州が離反するとなると痛いわけですよ。そうなるとおそらく台湾まで手を出してしまえば、欧州の離反というのが中国にとって相当のマイナスであると考えると、手を出しにくい。出さないとは言いませんが、出しにくい状況ではあると思います。

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中国、尖閣周辺の休漁終了 祥芝中心漁港を出港する中国漁船=2020年8月16日、中国福建省石獅市(共同) 写真提供:共同通信社

経済で1対1で戦う~そのための内循環

飯田)欧州のことを考えると、イギリスが空母打撃群を東アジアに持って来るという話があります。ドイツも駆逐艦を派遣する話もある。インド太平洋戦略を各国が制定し始めた。すでに欧州が離反にかかっているようにも見えるのですが、中国はそうは見ていないのでしょうか?

中川)軍事的な安全保障というところで言えば、ガチンコで戦って行かなければならないし、そういう表面的な動きは見えて来るのですが、中国が考えているのは、「経済でバイで戦って行く」ということです。国際協調ではなく、経済で1対1で戦った場合、中国に対抗することは難しい。例えばオーストラリアでさえ、2019年の統計を見ても、中国へ輸入している金額は1千億ドルです。最大の貿易の輸出入国なのです。クアッドであるオーストラリアでさえそうなのですから、ASEAN諸国などは中国にバイでは戦えないような経済的な安全保障を組まれているというところから考えると、いくら安全保障のところで言ったとしても難しい。それが先ほどお話ししたようなところはグレーでいいわけです。いまのままの、ちょっかいを出しつつ出されつつの状況が続いて、それ以外の別次元のゲームで勝って行くことで、軍事的なところを矮小化して行くというのが中国の戦略なのです。そういう意味では、この現状維持をされると、中国が経済的に発展すればするほど、ワクチン外交にも関わりますけれど、軍事的なところというのは、当然ながら中国の経済力が高まって他の国が沈下するのであれば、中国が相対的に勝てるというところから踏むと、経済のゲームを相当重視しているし、そのための内循環だろうと思います。

今後の米中関係~中国が恐れる4年後の“ネオトランプ”の登場

尖閣諸島の魚釣島(沖縄県・尖閣諸島魚釣島)=2005年4月27日 写真提供:時事通信

短期的に叩くことはできても、長期的に考えると抑えられなくなる

飯田)いままでは「世界の工場」なんて言われ方をしていましたけれど、外に輸出して行って稼ぐというところから、産業構造そのものを本当は転換して行かなくてはならないと。

中川)中国自体が例えば半導体を含めて、トランプ政権から輸出規制を強いられ、「先端産業は難しい」と言われていますが、半導体だけを取ったとしても、「では10年後、20年後に中国が追いつきませんか」ということになると、「また追いついてしまった場合にはどうなのだ」ということもあります。トランプ政権がやったことで、確かに5年くらいは苦しむ。もう少し苦しむかも知れない。だけれども、5年後に中国がキャッチアップしたときに伝家の宝刀である「輸出規制をするよ」ということがなくなったとも言えるのです。半導体の輸出規制という強いものから中国がフリーハンドになってしまった状況です。

飯田)フリーハンドに。

中川)だから、確かに短期的にパンチをすることは重要なのだけれども、長期的に考えると、技術的なキャッチアップをして行ったところで、産業転換も構造転換もあるし、手綱がいろいろな意味で、知財なども含めて、抑えられていたところが抑えられなくなって来ているということはあると思います。

飯田)確かに過去の事例ですけれども、マッカーシーの赤狩りのときに、中国系の核技術者の人たちがパージされて戻らなければならなくなったと。戻った先でその技術者たちが協力をし、20年後に中国は核兵器を持った。そこを考えると、「短期的に溜飲を下げる」ということが、長期的にはまずいことになる可能性を考えなければいけないのですよね。

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菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター=共同)=2021年1月28日 写真提供:共同通信社

中国の重要なパートナーである欧州やアフリカ諸国と手をつなぐことが日本としては有効

飯田)日本の外交に関してはどうして行ったらいいですか?

中川)中国は経済でバイ(二国間)でやろうとして来るので、我々としては多国間協調でイデオロギーで、という形でしか彼らを牽制するようなツールがないのです。そういった意味だと、中国の完全な競争相手である米国ではなく、むしろ米国以外と日本が付き合うと中国は痛いですね。先ほど言ったように、欧州の離反は痛いのですよ。ですから欧州とイデオロギー的な価値観を揃える。もしくは欧州と経済的なフレームワークを揃える、そういう形で中国をやれば、中国は絶対に「NO」と言えません。アメリカとやって行くと、「お前はアメリカの属国でしょう」という感覚で見られるので、それよりも中国からすると、重要なパートナーであるアフリカや欧州の国と手をつないで行く方がはるかに有効だと思います。

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