ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月12日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。2月6日に亡くなったアメリカのジョージ・シュルツ元国務長官について解説した。
アメリカの元国務長官ジョージ・シュルツ氏が死去
アメリカのレーガン政権で国務長官を務め、東西冷戦の終結に向け重要な役割を果たしたジョージ・シュルツ氏が2月6日に亡くなった。100歳だった。
飯田)政界引退後は、2000年の大統領選挙で当選したブッシュ・ジュニア候補の外部顧問を務めた他、2007年にはキッシンジャー元国務長官らと一緒に「核兵器なき世界」の実現を提唱し、オバマ元大統領の核政策にも影響を与えたと言われています。“てっちゃん”さん、川崎市の方からのメールです。「レーガン大統領のときの国務長官で、強いアメリカを演出されていた印象です。ロン・ヤスと言われた日米関係がよかった時代、懐かしいですね」といただきました。
宮家)本当にその通りで、ロン・ヤスの下で「安倍・シュルツ」というものがありました。当時、安倍晋太郎さんが外務大臣で3年8ヵ月の間、シュルツさんと一緒にやっていたと思います。私は一度横で喋っているシュルツさんを見ただけですが、とても洗練されたジェントルマンですよね。人格的にも優れていて、晋太郎さんはシュルツさんをとても信頼していたと思います。
飯田)安倍晋三前総理のお父さんですね。
共和党の黄金時代を支えた
宮家)シュルツさんはプリンストン大学を出て、戦争に行って、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取って、そして財務長官、労働長官、国務長官といろいろな要職を歴任しています。古きよき共和党の黄金時代を支えた人です。あの時代の共和党は、レーガンさんになって民主党を支持していた保守層がすべてレーガンさんの下に結集して、私は「アメリカの保守合同」と言っているのですが、保守が健全で強かった時代です。レーガン政権にもいろいろ問題はあったのですが、そのなかでも、シュルツさんは当時の共和党の良心を代表していたと思います。そのような共和党の重鎮から見たら、トランプ時代の共和党はどう見えただろうかと。「めちゃくちゃにしたな」とおっしゃるのか、「これでいいのだ」とおっしゃるのか、是非聞きたかったですね。
飯田)経歴を見ると、アイゼンハワー政権のときの、経済諮問委員会の委員に就任しています。
宮家)シュルツさんは経済もできるのです。バイデン大統領も声明を出しています。そのなかで、「歴代の多くの大統領に助言を与え、意見を求められた偉大な政治家だった。そして自分はそれができなかった」とおっしゃっています。そういう意味でも、アメリカの共和党の一時代が終わってしまったんだなという気がします。
中国の習近平国家主席(左)とトランプ米大統領=2020年5月14日 写真提供:時事通信
いまの米中関係をどう見ていたのだろう
飯田)いまの米中の、人によっては新冷戦と言うような関係をどうご覧になっていたのでしょう。
宮家)それは知りたかったですね。トランプ政権のやり方は、必ずしもいいとは思っていなかったのではないかと思います。アメリカ中心主義はいいとして、同盟国を蔑ろにしたやり方、単独主義ですよね。あれはシュルツさんの辞書にはないやり方だと思います。
飯田)同じ単独主義でも、ブッシュ・ジュニアの時代に、いわゆるネオコンと呼ばれた単独行動主義がありましたが、あれとはやはり違ったと。
宮家)まるで違うでしょうね。シュルツさんの時代は、ソ連との核競争があって、核戦争が始まるかもしれないという恐怖があったのです。ですから、アメリカにはやる力はあったかも知れませんが、決して強引にやることはなかった。しかし、ソ連が崩壊して核戦争の恐怖が薄れたときに、「これからはアメリカの思う通りにやらせてもらおう」と言い出したのがネオコンです。これもアフガン、イラクなどで大失敗をするのですが、それとシュルツさんの考え方はまったく違うと思います。シュルツさんの後の時代から、アメリカが対外的には強硬に、国内では分断が進む時代になって行ったのだろうと思います。
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