ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月8日放送)にジャーナリストで東海大学教授の末延吉正が出演。福島県浪江町にある水素製造拠点、「福島水素エネルギー研究フィールド」について現地取材を交えて解説した。
菅総理が「福島水素エネルギー研究フィールド」を視察
菅総理大臣は3月6日、福島県浪江町にある水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」を視察した。浪江町は水素社会実現の先駆けとなるモデル地域を構築し、東日本大震災からの復興と地域活性化につなげて行く「なみえ水素タウン構想」を発表しているが、なかでも町内の福島水素エネルギー研究フィールドは商工業や交通など、さまざまな分野に水素を活用する中核的な施設となる。
今後のエネルギーをどう模索して行くか
飯田)ニッポン放送は2021年1月、フジテレビ、BSフジとともに国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)について考えるプロジェクト「楽しくアクション!SDGs」を発足いたしました。このプロジェクトでは、キャンペーンアンバサダーのファーストサマーウイカさんとともに、この地球で暮らし続けるために見直すべきことは何かなどを考え、伝えてまいります。その一環としてニッポン放送は、国連が定めた3月8日「国際女性デー」を「1日まるっと!SDGs STATION」としまして、SDGsについて今後何ができるのか、いま何ができるのかを考えてまいります。ここで取り上げるのは、浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」であります。水素エネルギーは、SDGsのなかの「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、あるいは「産業と技術革新の基盤をつくろう」、「住み続けられるまちづくりを」など、さまざまなゴールに合致しているのではないかと思っております。福島、特に浜通りは原発の事故もありました。その後、「エネルギーを日本全体としてどう模索して行くのか」と、自分事として考えて来たという、この10年があるわけです。
末延)大事なことは、現場でみんなが何を考えて、何ができるかということです。その上でエネルギー全体の議論をしないと、菅政権が「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」を宣言しましたが、そのためのエネルギー政策の途中がわからないのです。福島があれだけ大変な思いをしたわけだから、そこで何ができるのかということは重要なことです。
水素が注目される理由
飯田)なぜ水素が注目されるかというところですが、太陽光パネルがたくさんあります。太陽光パネルそのものは再生可能エネルギーの切り札だということも言われて、そこと電気自動車を直結させて考える向きもあるのですが、電気全体の系統の安定性を考えると、曇りや雨によってバラツキが出てしまう太陽光は少し不向きだというのは、当然ながら指摘される。その部分は、原子力にも一日の長があるというのは間違いないところではないですか。
末延)それからヨーロッパや中国で電池の話が出ている。だから水素の部分が意外と重要なのだけれど、それがどうなっているのか、みんなわからないのだと思います。
飯田)貯めた太陽光エネルギーを一定程度水素に変えて行き、その水素を燃料電池に入れて行く。燃料電池は水素と酸素を反応させて電気をつくるという、電気分解の逆のことをするので、水素で貯めておくと電気に戻すこともできるのです。そうしてできるのはH2O、水なので、クリーンであるということですが、水素には水素爆発というものがあり、取り扱いに気を付けなければいけない部分がある。その辺も含めて、どのように気を付ければリスクを管理しながら、水素をつくり、貯め、運び、使うことができるのか。それを一気通貫でやる起点となるのが、この施設だということです。
末延)重要な施設です。
飯田)現場に行くと、ものすごい数の太陽光発電施設があります。なぜかと言うと、20メガワット分つくれるそうなのですが、水素をつくるには、このプラントでは10メガワットが必要なのですけれど、ギリギリ10メガワットだと、天気の模様などで最大出力が出なかったりする。しかし、倍つくっておけば、10メガワットは出るだろうということで、こういうことになっているようです。水素のつくり方は理科の実験と一緒で、水と電気を持って来て電気分解させると、水素(H2)と酸素(O2)ができ、その水素を圧縮して貯めておいて、それをトラックなどで運ぶというその部分は変わりません。
燃料電池車「MIRAI」を何百台も走らせるだけの水素を生産
飯田)「MIRAI」というトヨタ自動車の水素を使った燃料電池車がありますが、これを1日で何百台も走らせる、フル充電するだけの水素はすでにつくっているそうです。あるいは近隣の道の駅やJヴィレッジなどに一部電力として持って行ったり、福島市内の「あづま総合運動公園」という、オリンピックで野球をやるところなのですが、そこにも大きな燃料電池を置いて電力を賄っているようです。
水素製造~課題は「コストの高さ」と「法規制の緩和や制定が追い付かない」ということ
飯田)この水素製造で、未来に向けてどういうまちづくりを目指しているのか、浪江町の渡邉友歩さんに聞きました。
飯田)街全体としても、この施設のインパクトは大きいですか?
渡邉)相当大きいですし、「大きな流れが来ているな」と思っています。
飯田)最近、SDGsということがキーワードとして出て来ます。まさにそれに浪江で取り組んでいるのはここだということですね?
渡邉)そうですね。そしていろいろな課題もあります。水素社会が20年後、30年後に来ると言われているなかで、なぜいまだにこんな感じなのかと言うと、「コストが高い」ということと「法規制の緩和や制定が追い付いていない」からです。
飯田)課題があるなかで、それを実証で「1つひとつ見つけてクリアすることで、未来が見えて来る」とおっしゃっていました。
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