ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月10日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。東日本大震災から10年を迎える気仙沼市のいまとこれからを、現地での取材を交えて解説した。
気仙沼市の復興への取り組み
3月11日、東日本大震災から10年を迎える。ここでは宮城県気仙沼市のまちづくりについて、気仙沼市の震災復興・企画部長である小野寺憲一氏へのインタビューを中心にリポートする。
飯田)気仙沼市で取材した模様をお伝えします。メールもさまざまいただきました。石川県のラジオネーム“鉄わんこ”さん。「気仙沼は義理の姉の実家です。兄との出会いの場でもあります。高台なので家に被害はありませんでしたが、駐車場の車が被害にあって、当時購入もなかなかできず、私の高校時代のバイクを持って行きました。愛用の塩辛メーカーは、気仙沼の小野万です」とあります。水産業も盛んなところで、小野方の塩辛はイルカに乗っている少年の絵が描かれているもので、印象に残っている方も多いかも知れません。そんな気仙沼をどう復興させて行くのか、どんな思いで進めているのか、具体的にはどんな取り組みが進んでいるのかを、気仙沼市で震災復興・企画部長を務めていらっしゃる小野寺憲一さんに伺いました。
小野寺)いま「まちづくり」と言うときに、「まち」とひらがなで書くではないですか。
飯田)書きますね。
市民によって確実に「まち」はつくられている~そのときの環境を使ってどう未来に活かして行けるか
小野寺)なぜ、ひらがなで「まちづくり」と書くかというと、「町」というのは境なのです。境をどう決めるかというのが「町づくり」。「街」と書く街は何かと言うと、ハード系なのです。学校や道や橋をどうつくるか。そしてひらなで書く「まち」というのはどういうことかと言うと、人と人とのつながりをどうつくって行くかというのが「まちづくり」です。気仙沼の土木会社がインドネシアで道路をつくり始め、出資をして現地に合弁会社をつくっていますが、インドネシアから技能実習生が気仙沼へ入って来ているのです。気仙沼で、その土木会社で道路づくりの技術を学ぶわけです。ここで技術を学んだ人たちがインドネシアに帰って、その技術を活かしてアスファルトの再生産の道路をつくるのです。
飯田)インドネシアで。
小野寺)あとは専業農家がショウガをつくり始めたのです。「なぜショウガなのですか?」と聞いたら、「気仙沼には魚があがるでしょう。臭み消しはショウガでしょう」と。「気仙沼にあがる魚を、気仙沼で獲ったショウガで臭み消しをして、商品にします」ということで、そこで物語ができるのです。行政が主役にはなりませんが、まちがそうやって面白くなって市民の気持ちが豊かになって……となれば、それは結果的に私たちがやろうとしていることなのです。
飯田)まさにこれはベース、土台なのですね。
現在の姿を評価して欲しい~「まちづくり」はこれから先も続く
小野寺)地域資源が持っているベースなので、ここから先立って、何がどう転がるかわからないし、何も起こらないかも知れないけれど、「そのときの環境を使ってどう未来に活かして行けるか」というような考え方は変わりません。10年前に震災があったことは確かなことではあるのですけれど、この時期になると、メディアは「風化が進んでいる」と言うではないですか。
飯田)そうですね。
小野寺)風化はするのですよ、忘れるのですよ。それが人間なのです……ということを前提に私たちはまちづくりをやって来ています。風化しても、忘れても、命が守れるまちづくりをして来ています。10年前に地震はあったけれど、「現在の姿で評価して欲しい」という気はしますね。
飯田)10年で相当いろいろなことをやって、いろいろな土壌をつくり続けて、いまも耕し続けていると。
小野寺)「10年の節目」とか、「復興事業がここで終わります」ということではなく、私が幹にしているのは「まちづくり」ですから。まちづくりに完成も終わりもないのです。まだまだ続くのです。そういう思いでまちづくりを進めています。
まちづくりの後押しをする環境を行政がつくる~許認可行政とは対極にある
飯田)気仙沼市で震災復興・企画部長をされていらっしゃる小野寺憲一さんの話をお聴きいただきました。復興の仕方というのは、街によってもいろいろあるとは思いますが、インフラだけではないところ、全体のまちづくりをゴールにしているというお話でした。高橋さんはどうご覧になりますか?
高橋)それぞれが工夫を持っていて、非常にいいと思います。
飯田)それこそ行政が主役ではなく、土台づくりというか、横からのサポートで、基本的には街にいる人たちがいろいろなことができるように環境を整備するのだと。どんなチャレンジであってもいいと。だから漁業とまったく関係ないように見える土木産業で、インドネシアとのつながりであるとか、ショウガづくりをするとか、そこが漁業とつながる。そこの後押しをする環境をつくって行くということを強調されていたのですが、総務省の話もそうですけれど、許認可行政で自分たちが引っ張って行く行政とは、対極にありますね。
行政は本来、縁の下の力持ち的な存在だったはず
高橋)本当ですね。行政は本来、インフラ整備のように縁の下の力持ち的な話で、空気みたいなことをやることが基本なのです。何かを与えるなどということはない方がいいですね。普通はね。
飯田)民の力というものを引き出して行くと。これはある意味、政権のテーマでもあるし、もっと言うと、ここ20年くらいはそれが議論されていたはずですよね。
高橋)本当はね。だから許認可をやっていて、霞が関でいろいろなことを支配しているつもりになっている人というのは、どういうことなのでしょうかね。地方への人材供給だけに徹底して、こういう話を地方でしていたら、「許認可なんか馬鹿らしい!」と思ってくれたらいいですけれどね。
飯田)中央から出向の形で支援ということで地方に行って、居着いてしまう人も被災地の各地にいますね。
高橋)その方がいいのではないでしょうか。中央で接待漬けになっているよりも、地元の人と「ああでもない、こうでもない」と言いながら具体的な行政をしている方が面白いと思いますけれどね。
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