教員が不足している「これだけの理由」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月7日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。教員不足の全国調査が行われるというニュースについて解説した。
教員不足の全国調査
小中学校で年度初めに必要な教員を配置できない事態が全国で相次いでいることを受け、萩生田文部科学大臣は4月6日、公立小中高校と特別支援学校での教員不足の実態を把握するため、初の全国調査を5月に実施すると明らかにした。全国一律の調査に乗り出すのは初めてだ。
飯田)初めてなのですね。
佐々木)そうなのですね。これはどうにもならない構図になっているのです。昔は学校で勉強を教えていればよかったけれど、最近は地域社会が崩壊するなかで、それまで地域社会が担っていた部分も先生がやるという方向になって、仕事が増えているわけです。生活指導も部活もやらなければいけない。ところが、教員が増えない。これはなぜかと言うと、地方の財政問題があるわけなのです。
先生の負担が増えて辞めてしまう~それを埋める臨時採用の教員
佐々木)先生の負担が増えて来て、仕事が辛くなります。そうすると心を病んで辞めたり、休職する先生が増えて来る。それを埋めるのが、臨時採用の1年契約の先生なのですが、これもまた給料が安い。おまけに1年契約なので、来年も仕事が続けられるかどうかわからない。そのくせ、仕事は非常に厳しい。もちろん教員免許を持っている人たちなので、いずれ正規職員になろうと思って教員採用試験を受けようとするのだけれども、あまりにも仕事がきつい。朝8時前から子どもたちが学校に来て、帰ったあとも、文部科学省からのアンケート調査に答えなければいけないなどという事務作業が多く、帰るのが夜中になってしまう。そうすると、もう眠くて勉強なんかしている余裕がない。
教員のブラック労働問題~教員を目指す人が減少
佐々木)そうなると、臨時採用のまま続いてしまう。そんななかで、部活の顧問で休みもないなど、教員のブラック労働問題が報道される。そんな報道を大学生が見て、「あんなところには行けない」ということで、教員を目指す人が減ってしまうという、そういうサイクルが続いた結果、待遇の悪いブラック労働のイメージがついてしまって、優秀な若い人が教員を目指さなくなってしまうということです。
飯田)なるほど。
佐々木)昔は、優秀な若者が「私は生涯を子どもたちの育成、指導に使います」ということで、学校の先生になったものです。いまはそうならなくなってしまっています。
中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」設置も~国の既定路線は「教員の数を減らす」
佐々木)そういう状況のなかで、どのようにしてこれを突破したらいいのか誰もわからない。しばらくは文部科学省で教員の働き方問題について、有識者会議を設定したこともあります。どういう結論になったかというと、これは2017年です。中央教育審議会に「学校における働き方改革特別部会」を設置して議論をしました。そのときは、「これは教員の定員の大幅増しかないだろう」という話になったのだけれども、そうなった瞬間に「それはできません」で終わってしまいました。
飯田)終わってしまった。
佐々木)文部科学省は何とかしたいのだけれど、政権、財務省による「教員の定員を減らす」という規定路線がその段階であったので、その規定路線を変えられない限り、教員の数を増やすという結論はあり得ないと。だから、教員の数は増やせないのだけれど、「それ以外で何とかせよ」という結論になってしまった。「これではどうしようもないね」ということで、その部会が終わってしまったようなのです。
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