ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月19日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。米中が4月17日に発表した気候変動に関する共同声明について解説した。
アメリカと中国が地球温暖化対策に関する共同声明を発表
アメリカと中国は4月17日、地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」に基づき、ともに協力することを確認する共同声明を発表した。再生可能エネルギーの導入拡大など、温室効果ガスの削減に向け協力して行くとしている。
飯田)アメリカの気候変動問題を担当するケリー大統領特使が、14日から中国を訪問していました。その2日間の協議を受けて発表されたということです。
ケリー氏を気候変動問題担当の特使にすることで党内左派に配慮
須田)ケリーさんの存在は今後大きく注目するべきだと思います。バイデン政権が発足し、バイデン大統領が組閣の作業を始めた際、最初に決めたのがこのケリー大統領特使なのです。ただ、ケリーさんは元国務長官ですから、特使というと、イメージ的には格落ちになるので、ケリーさんが引き受けるかどうかが注目されました。
飯田)そうですね。
須田)なぜ気候問題の特使に選ばれたのかと言うと、ケリーさんは民主党のなかでもいまや重鎮ですから、ケリーさんを特使にするということは、民主党のなかで気候変動問題に関して過激な要求を繰り返している党内左派に対し、「十分に配慮する」ということなのです。閣僚としては、そちらの陣営からは登用できなかったけれども、ケリーさんという重要人物を当てて、「この問題にしっかり取り組む」というバイデンさんのメッセージだったのです。
飯田)なるほど。
須田)日本国内のメディアでは、党内左派からの登用がなく、バイデン政権の足元が緩むのではないかと報道されましたが、まったくなりません。ケリー特使を選んだことによって、むしろそこまで頑張って取り組むのかということで、安定性を取り戻したのです。ですから、ケリー特使が中国へ行ってこの問題で話し合うということは、大きな意味を持っているのです。
ケリー特使が中国へ行ったことで中国と水面下で手を握ることはない
須田)しかし、そうなると先の日米首脳会談で中国包囲網、ケリー特使が中国へ行ってということで、アメリカは中国と完全に対決姿勢を露わにしているのではなく、仲よくする部分もあるのだと。あるいはケリーさんの国務長官時代の流れから言って、場合によっては水面下で手を握るのではないかという観測もあるのだけれども、そこはない。なぜかと言うと、先ほどの理由から、それをやってしまうと党内左派がもたなくなって来るというところがあるのです。
途上国に石炭火力プラントを積極的に輸出する中国~CO2排出の拡大に手を貸している
須田)ここでポイントになるのは、関係改善や連携をするように見せかけて「結果、中国を追い込んで行く」という思惑があるということです。いちばん大きなポイントは、石炭火力です。中国は、国内では石炭火力を減らしているのですが、「一帯一路」構想のなかで、石炭火力プラントを途上国に積極的に輸出しようとしています。もう1つ重要なのは、石炭を産出する鉱山、炭鉱に関しても一帯一路構想のなかで、かなりのお金を出して炭鉱開発に手を貸している。その上、実は中国国内で石炭の炭鉱の開発はまだ続いているのです。
飯田)そうなのですね。
須田)これは、自国では使わないかも知れないけれども、海外輸出用ということも含めて、「言っていることとやっていることが違うではないか」と。しかも、中国の提供している石炭火力は古いタイプのもので、CO2を大量に排出するものなのです。そこに踏み込んで行くこともあるでしょう。中国の国内では、パリ協定、あるいはCO2の排出に抑制的な動きを見せるかも知れませんが、全体で見れば「CO2排出の拡大に手を貸しているではないか」というところ、これが今後、米中間の交渉のなかで出て来るのではないでしょうか。
飯田)なるほど。環境問題に関して中国相手に交渉すると必ず、「我々は発展途上国だから十分石炭を使って発展して来た他国とは違うのだ。我々にもチャンスをくれ」ということを言いますよね。これももう許さないということですね。
「2050年温室効果ガス排出ゼロ」の実現に対して中国にきっちりと詰めるアメリカ
須田)そうですね。ですから、「2050年温室効果ガス排出ゼロ」を実際どうやるのか、きっちり詰めて行くと思いますね。
飯田)その辺りでギリギリ絞めて来ると。
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