スパイ活動への対応が遅れている日本~中国共産党関係者をサイバー攻撃関与の疑いで書類送検

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月21日放送)に慶応義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が出演。多くの日本の研究機関や会社が中国人のハッカー集団から大規模なサイバー攻撃を受け、中国共産党員の男が書類送検されたというニュースについて解説した。

スパイ活動への対応が遅れている日本~中国共産党関係者をサイバー攻撃関与の疑いで書類送検

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

JAXAなどでサイバー攻撃関与か~中国共産党員の男を書類送検

宇宙航空研究開発機構(JAXA)や防衛関連の企業など、日本のおよそ200にのぼる研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で中国人民解放軍の指示を受けたハッカー集団によるものとみられることがわかった。警視庁は、日本に滞在歴がある中国共産党員の男がサイバー攻撃に使われたレンタルサーバーを偽名で契約したとして、書類送検した。

飯田)捜査対象となっている中国籍の元留学生の男がセキュリティ関連の日本製ソフトを購入しようとして、販売元に拒否されていたことがわかったというニュースも入って来ております。「スカイシー」と呼ばれるものの脆弱性が狙われた、というようなことも報じられています。

アメリカが中国に強硬に転じたきっかけの1つとなった総領事館へのサイバー攻撃

細谷)2020年のアメリカのトランプ政権で、当時のポンペオ国務長官が厳しく中国を批判する演説をしました。そのきっかけとなったのが、アメリカの総領事館への中国のサイバー攻撃だったのです。アメリカの総領事館は外交特権がありますから、アメリカの警察の捜査が及ばないのです。その総領事館を使い、中国がサイバー攻撃でいろいろな技術を盗んでいた。特にコロナになってからはワクチンです。この情報を相当程度、国を挙げて外交機関を使い、外交特権という隠れ蓑のなかでサイバー攻撃によって情報を集める。それが、アメリカが中国に強硬に転じる1つの理由でもあったわけです。

飯田)あの演説のきっかけになった。

細谷)国を挙げてやるということですから、中国には、当然ながら諜報活動をしている人たちがいるわけです。それだけではなくて、日本やアメリカに留学している留学生など、裾野を広げてそういう人たちを動員するということです。本来であれば、そのような目的で日本やアメリカに留学したわけではない大学院生です。そういう人たちが中国の政府に動員されてこういったスパイ活動をする。

飯田)留学生ですからね。

細谷)不幸なのが、いま次々とアメリカの大学では、特に理系で中国人留学生の受け入れを拒否しているということです。留学生からしたら、本当にアメリカに留学したい人もいるのです。ところが、今回のように、中国が必要な情報であれば、そういう人たちも動員してスパイ活動をさせるということになるわけです。これは日本も深刻に考えなければなりません。どれだけ日本に優れた技術があっても、今回のようなことで、次々と漏洩してしまうことになるのです。

スパイ活動への対応が遅れている日本~中国共産党関係者をサイバー攻撃関与の疑いで書類送検

中国政府、成都の米総領事館に閉鎖命令=2020年7月26日 EPA=時事 写真提供:時事通信

今回の書類送検はサイバー攻撃が「それだけ浸透している」ということを社会に伝える意図も

飯田)事件そのものは2016年から2017年にかけてのことです。今回、2021年になって書類送検した。いろいろな情報がポロポロと公安から出て来ると。これは、「見ていたけれども打つ手がなかったのだ」というようなメッセージでもあるわけですか?

細谷)中国はサイバー攻撃の技術は高いですから、日本に対して、企業に対して、政府に対しても相当浸透しているわけです。ところがサイバー攻撃というのは、通常は第3国を経由、迂回してサイバー攻撃をしますから、中国ということを特定するのは難しい。ところが今回の件は、そういう第3国経由で外から攻撃されたということではなくて、日本のなかの元留学生を捜査対象とするということですから、比較的表に出しやすかったのだと思います。つまり、中国からのサイバー攻撃ということが明確にわかったとしても、それを「中国発」だと特定するということは、通常の捜査では難しいわけです。そういう意味では、今回は警告の意味も込めて、社会に対して「それだけ浸透している」ということを伝えたい意図もあったと思います。

日本は中国のスパイ活動への対応が遅れている

飯田)前々から、日本でもスパイ防止法のようなものをつくるべきだという議論もありますが、そこにも一石を投じるということもあるのでしょうか?

細谷)先ほど去年(2020年)、アメリカで厳しくなったということを申し上げましたが、オランダやオーストラリアでも、サイバー攻撃が浸透しているということで、近年オーストラリアは中国に対する政策が変わって厳しくなりました。きっかけは多くの場合、このような形のスパイ活動や情報漏洩です。ですから日本は、もともと中国に対しては非常に厳しい感情が世論調査でも出ていたわけですが、このようなスパイ活動への対応が遅れているということを認識するべきだと思います。

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