日本も中国への経済制裁等をやるべき~新疆ウイグル自治区の人権弾圧で欧米諸国とともに

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月26日放送)に元内閣官房参与で前駐スイス大使、現TMI総合法律事務所顧問の本田悦朗が出演。国際情勢や日本の外交政策をまとめた「外交青書」について解説した。

日本も中国への経済制裁等をやるべき~新疆ウイグル自治区の人権弾圧で欧米諸国とともに

北京から世界経済フォーラム(WEF)のオンライン会合に参加する中国の習近平国家主席=WEFのウェブサイトより=2021年1月25日 AFP=時事 写真提供:時事通信

外交青書

国際情勢や日本の外交政策をまとめた令和3年版「外交青書」の概要がわかった。中国の軍事活動については、「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念」と明記。中国による新疆ウイグル自治区の人権弾圧についても記述を大幅に拡充している。

飯田)産経新聞が4月24日の朝刊で報じておりました。ウイグル人の方々への人権侵害が世界中で問題になっております。どうご覧になりますか?

複雑な環境のウイグル人

本田)ウイグルはいまや中華人民共和国の一部ではあるのですが、歴史的に見るとあの地域はトルコ系なのです。それぞれの民族言語を持っています。ウイグル語、あるいはカザフ語、ウズベキスタン語と、それぞれ持っています。トルコ語に近いのです。ウイグルは中国なのですが、西のところに接する形で、いわゆる旧ソ連中央アジア諸国というものがあります。「何とかスタン」という国ですね。「スタン」というのは土地、あるいは国という意味なのですけれども、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、アゼルバイジャンという国がありまして、私はソ連が崩壊した直後、ワシントンD.C.にある世界銀行に出向していました。そこからその何とかスタンという国の市場経済化、民主化、それから法律の制定、要は国づくりを助けて来ました。3年間やりました。

飯田)そうなのですね。

本田)私としても思い出深いというか、まさに坂本龍馬や西郷隆盛になった気分で、国をつくるのだとみんな燃えていました。ウズベキスタンという国があるのですけれども、首都はタシケントです。我々が出張に行くのはタシケントで、そこに「ナボイ劇場」という立派なオペラハウスがありまして、それは第二次大戦のときの日本人の捕虜がつくったのです。

飯田)シベリア抑留の。

本田)抑留の捕虜がウズベキスタンに連れて来られてつくったのです。ロシア革命30周年にあたる1947年までにつくれという厳命を受けて、日夜必死になって働いて立派な村ができて、いまもあって実際に使っています。「ナボイ劇場」の隣にロシア人がつくった劇場があったのですが、タシケントの1966年の大地震で、日本のつくったナボイ劇場以外はほとんど壊れました。しかし、日本軍がつくったオペラハウスだけは立派に残ったのです。ウズベキスタンの人は、「日本人のように働き、日本人のように学べ」と、そのように子どもを教育するのです。

飯田)日本人の建てたものは残った。

本田)非常に親日的なウズベキスタンと、ウイグル人は似ているのです。同じトルコ系です。私は世界銀行でこの地域の仕事をしていたときに、同僚がいて、女性ですが、彼女はウイグル生まれで民族的にはウズベキスタン人でした。国籍は中国です。しかし、教育はアメリカで受けたと。非常に複雑な環境を皆さん持っていらっしゃるのです。アメリカで教育を受けたということで、いわばエリートなのですが、彼女自身がいみじくも「私は中国を絶対に許せない」とおっしゃっていたので、積年の恨みは非常に大きい。

日本も中国への経済制裁等をやるべき~新疆ウイグル自治区の人権弾圧で欧米諸国とともに

新疆ウイグル再教育キャンプと思われる施設=2019年6月2日 写真提供:時事通信

「基本的人権の侵害」は間違いなくある~日本も欧米諸国と足並みを揃えるべき

本田)「再教育キャンプ」などと言って、中国政府は文化クレンジング、文化を潰して完全に中国文化に同化させようとする、それは人権侵害です。場合によってはジェノサイド、ジェノというのは民族という意味で、サイドは殺すということですから、民族全体を殺してしまうのです。そういうこともやっているという話も聞きますので、これは我々民主主義陣営としてはとても看過できないことです。確かにジェノサイドの直接証拠があるかとなると、いろいろな国でいろいろなウイグル人の団体が活動していますので、事実だと思うのですが、我々が知っているような「基本的人権の侵害」は間違いなくあります。ですから、我々はそういう意味で、西側の欧米諸国と足並みを揃えて、経済制裁なりをやるべきだと思います。

人権侵害があった場合は取引を停止できるような法体系が必要

飯田)その立法について、動いているという国会議員の超党派の部分もあります。そういうところが活動して行くということになりますか?

本田)そうですね。

飯田)いまの法律だと、やはり縛るのは難しいということでしょうか?

本田)アメリカでは「マグニツキー法」があります。人権侵害があった場合に、人権侵害に関わった人の対米の資産や取引を凍結できるのです。それが日本にはないのです。中国は大事な隣国ですが、日本とはいろいろなところで利害が対立しますので、そこは筋を通して外為法を改正し、人権侵害があった場合は取引を停止できる、またはマグニツキー法のように資産を凍結できるという法体系が、近いうちに必要になって来ると思います。真剣に議論すべきだと思います。

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