中国の「覇権的膨張主義」を警戒する世界各国~求められる“日本の役割”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月27日放送)にジャーナリストの有本香が出演。電話ゲストに佐藤正久参議院議員を迎え、2020年の世界の軍事費が前年比で2.6%増加したというニュースについて解説した。

中国は2020年10月14日午前、広東省深セン市で深セン経済特区〈SEZ〉設置40周年を祝う盛大な大会を開いた。習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席がこれに出席し、重要演説を行った。〔新華社=中国通信〕写真提供:時事通信社

世界の軍事費2.6%増加~最高額を更新

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は4月26日、2020年の世界の軍事費が前年比2.6%増加の1兆9810億ドル(約213兆7700億円)であったと発表した。推計値が残る1988年以降の最高額を更新している。

飯田)コロナ禍であっても、増えているということが指摘されています。この情勢、特に中国も伸ばしています。この辺りのところ、自由民主党外交部会長で参議院議員の佐藤正久さんと電話がつながっていますので、お聞きしたいと思います。佐藤さん、おはようございます。

佐藤)おはようございます。

米中のせめぎ合い、中国の海洋進出を警戒する東南アジアによって伸びた軍事費

飯田)世界の軍事費が発表されましたが、世界や日本を取り巻く環境を、佐藤さんはどのようにご覧になっていますか?

佐藤)米中のせめぎ合いと中国の海洋進出を警戒する東南アジアによって、軍事費が伸びた。コロナ禍であっても、そこは譲れないということの結果だと思います。

飯田)中国のみならず、周りの国々もということですか?

佐藤)中国は覇権的膨張主義という観点から、力によって、南シナ海や西太平洋で違法操業などを繰り返しています。それに対応するには、アジアの国々もある程度自分で守らなければいけないということの表れだと思います。

飯田)当然それは日本も同じ課題を抱えているわけですよね?

日本の軍事費は10年間、横ばい

佐藤)ところが日本は10年間ほぼ横ばいなのです。中国はこの10年間で約2.3倍、30年間だと約42倍です。それほど向こうが伸びているなかで、日本は人件費などの問題もあって伸びない。それが数字になって表れていると思います。

有本)今回のこの数字を見ても1.2%増と、日本は少し控えめですよね。

佐藤)かなり控えめですね。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

防衛費を伸ばす韓国~2022年には日本を抜く

有本)中国の脅威に対応するべく、インドなども海軍を増強していたりして、全体の額としても伸びているという状況です。日本の周りですと、今回の増加率がどうかという問題はわかりませんが、韓国の防衛費はほぼ日本と並んで来ていますよね?

佐藤)おそらく2022年ごろには、日本を抜くと思います。韓国の場合は、進歩派と呼ばれる左派政権になると軍事費が伸びるのです。逆に、保守派になると抑え気味になります。その場合は、米韓同盟で何とかなるだろうという考えです。左派になると、米韓同盟よりも自主防衛となる。「在韓米軍は我々が頼んでいてもらうわけではない、自分たちで頑張るのだ」というのが基本なのです。そうすると北朝鮮も喜びますから、このように自主防衛で軍事費が伸びる。文在寅政権がこの4年間で相当伸ばして来ているというのが現状です。

菅総理「防衛力を強化する」~「自分の領土は自分で守る」という意思表示

有本)そうすると、日本はこの状態を相対的に見れば、バランスの崩れに加担しているようにしか見えないのですが。

佐藤)菅総理が日米首脳会談で「防衛力を強化する」と先に明言しました。それくらい言わないと、尖閣1つをとっても、「日米安保5条の適用」をアメリカが言っておけば日本はOKだというのは、非常に恥ずかしい話ですので、「自分の領土は自分で守る」という菅総理の意思表示だと思います。具体的な動きがまだ見えていませんが、次の外務・防衛当局の2プラス2が年内に開催されますので、それまでに日本の役割分担、防衛費をどのような形で見せるのか、ということが鍵だと思います。

フランスが日本国内で共同訓練をする意味~日本が米仏と島嶼防衛訓練を行うことは対中メッセージになる

有本)イギリス海軍もインド太平洋に出て来ています。5月には九州で日米仏の共同訓練が行われるということを防衛大臣が発表しました。フランス軍が国内の陸上訓練に参加することの意味や意義を教えていただけないでしょうか?

佐藤)ヨーロッパが中国の覇権的な膨張主義によって、自分たちの権益も脅かすと認識しはじめた。特にフランスは、インド太平洋地域にレユニオン島やポリネシア、ニューカレドニアなどの海外領土を持っていますので、インド太平洋地域に艦艇を含めて約7000人の軍人がいるのです。そのなかで、中国の動きは、インド太平洋地域全体のパワーバランスの変更を企図していると、2019年6月に作成されたインド太平洋国防戦略のなかでも、明確に書かれています。そのぐらいフランスは危機感を持っているのです。日本がアメリカ、フランスと島嶼防衛訓練を行うということは、明確な対中メッセージになると思います。

沖縄県・尖閣諸島の南小島(右奥)付近を航行する中国海警局の船=2021年2月15日(仲間均・石垣市議撮影) 写真提供:共同通信社

中国の海洋進出に対する世界の動き

有本)これは佐藤さんが現役の自衛官でいらしたころからすると、隔世の感があるということですか?

佐藤)そうですね。私が日米共同や多国間を担当していたときは、自衛隊の歩兵部隊、普通科部隊をアメリカに持って行って真剣勝負をやるというだけでも、かなりハレーションがあったぐらいです。これと比べたら、いまは多国間というのが当たり前ですし、イギリスから今度は空母打撃群が来ます。本当は秋ですよね。コロナ禍でなければ、クイーン・エリザベスなどを多くの人が見たいでしょうし、大きな広報効果になると思います。しかし航海できない可能性もあります。これはコロナの収束次第で、官邸広報PRというのですが、限定される可能性もありそうです。

有本)しかし、それだけ大きな変化が起きているということですよね?

佐藤)中国の人権や民主主義に対する挑戦が、海洋進出にも広がって来ている。これは欧米を含めた世界共通の価値観とは相容れないということが背景にあると思います。

台湾有事は日本有事~南西諸島防衛と表裏一体

飯田)日米首脳会談後の共同声明のなかには、「台湾」という単語も入って来ました。台湾有事は、日本有事と同じようなものではないかと思うのですが、どうでしょうか?

佐藤)台湾は広くて、離島もたくさん持っています。南沙諸島、東沙諸島、澎湖諸島などたくさんあります。離島の場合は、日本有事というよりも、重要影響事態ということかも知れませんが、台湾本島の有事となると、日本有事と一体と考えていいと思います。なぜならば、台湾の山脈は東に寄っていて、花蓮や台東という重要な場所を抑えようと思うと、東から攻めなければ獲れないのです。

飯田)背後から回らないと。

佐藤)与那国島と花蓮はたった110キロです。早く獲らないとアメリカが西海岸からやって来ます。北からも東からも一挙に獲るという作戦が現実的なので、台湾本島有事は日本有事として考えるべきだと思います。もっとも目障りなのは、嘉手納基地ですから。嘉手納基地を叩くために、中国は実際に砂漠に嘉手納基地を模して、ミサイル発射訓練をやっています。嘉手納基地を抑えると制空権も抑えやすいということになります。嘉手納基地が危なければ、那覇にいる航空自衛隊もそこに入れないということですから、台湾有事というのは日本有事、南西諸島防衛と表裏一体と言ってもいいと思います。

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