ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月14日放送)に前統合幕僚長の河野克俊が出演。米インド太平洋軍の新たな司令官にジョン・アキリーノ海軍大将が就任したニュースについて解説した。
米インド太平洋軍の新司令官にジョン・アキリーノ氏が就任
在日アメリカ軍を傘下に置く米インド太平洋軍の司令官交代式が4月30日、ハワイ州真珠湾のヒッカム統合基地で開かれ、デービッドソン海軍大将に代わり、ジョン・アキリーノ海軍大将が新司令官に就任した。アキリーノ氏は日本の自衛隊に加え、同盟・パートナー諸国の軍隊と連携し、中国からの軍事脅威を睨んでインド太平洋地域の平和と安定を図るとのことである。
飯田)インド太平洋軍のトップと統合幕僚長はよく話をするパートナーになるのですか?
河野)そうですね。アメリカは陸・海・空・海兵隊まとめて運用するという考え方で、地域ごとに軍を置いているわけです。「インド太平洋軍」は、以前は「太平洋軍」と言いました。太平洋からインド洋までを当時から管轄していたのですが、安倍総理が「自由で開かれたインド太平洋」という構想を打ち出されて、アメリカもそれに乗ったのです。そして私が在任中だった前任のデービッドソンさんのときに、「インド太平洋軍」と名前を変えたのです。名前まで変えたということです。アメリカの統合軍のなかでも最大規模の組織だと言えます。
飯田)最大規模の組織。
河野)私が統幕長になったときは、ロックリアさんという方が太平洋軍の司令官だったのですが、ハリー・ハリスさんという方はお母さんが日本人で、その後、駐韓大使になられた方でした。そしてデービッドソンさんなのです。私がフルでお付き合いしたのはハリー・ハリス大将です。
飯田)そのときに朝鮮半島の緊張があった。
河野)そうですね。私のときは朝鮮半島がメインでした。朝鮮半島はいまもホットスポットですが、日米首脳会談でも言及されましたけれど、いまは台湾ということです。
世界の安全保障の最前線に日本が「立ってしまった」
飯田)今回の防衛白書のなかにも、「台湾の平和」が載るという報道が出ていますけれども、世界中から注目されています。
河野)これは日米の「2プラス2」、そして首脳会談でも言及されましたから、当然、防衛白書にも反映されることになったのだと思います。冷戦中、世界の安全保障のフロントラインはヨーロッパでした。より具体的に言えば、ベルリンの壁辺りでした。いまはアメリカが脅威の対象を完全に中国にしたことによって、西太平洋でもアジア太平洋でもなく、世界の安全保障の最前線が、第1列島線、はっきり言って日本になってしまったということです。
飯田)第1列島線と言えば、まさにそうですよね。
河野)この位置に「日本が立たされた」と言うと、また他力本願ですかね。「立った」という言い方も違う。
飯田)自力で立ったわけでもない。
河野)いちばん適切な表現は、「立ってしまった」ということだと思います。好むと好まざるとに関わらず。こういう安全保障の流れのなかに入ってしまったということなのです。そういう意味で台湾問題も考えなくてはいけない。台湾有事のときに、「日本が選択肢のなかでどれを選ぶか」という話ではなく、「台湾有事は日本有事に直結する」と考えた方が私はいいと思います。1990年の湾岸戦争のときに、「日本は何をしてくれるのか」という議論があって、日本は「憲法9条が」という話でしたが、中東において日本が貢献するというような話ではないのです。目の前で起こる話なので、「状況が違う」という認識が必要だと思います。
飯田)そうすると、何ができて何ができないなどと言っている暇はない。やらなくてはいけない。
台湾有事イコール日本有事
河野)「台湾有事イコール日本有事」で、少なくとも日本に重大な影響があるのは、常識的に考えてもそうですよね。そういう状況になったということです。デービッドソン大将が「6年以内に脅威が明白になるであろう」と言いました。アキリーノ大将においては、「もっと早いかも知れない」という言い方をされているわけです。いずれにしても、日米首脳会談で台湾問題の重要性を指摘されているわけですから、今後は日本とアメリカ、自衛隊とインド太平洋軍との間で台湾に関する協議、調整がこれから進んで行くのだろうと思います。
飯田)そこでいろいろな国を巻き込んで行くということですね。
河野)イギリスの空母クイーン・エリザベスが来て、オランダ海軍も来る、ドイツも来るのです。いまの中国の行動は我々と価値観が違いますよね。これを抑えなくてはいけないというときに、やはり多国間でやるのがいいのだと私は思います。
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