英米と日本~なぜここまでワクチンの普及に差が出てしまったのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月18日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。厚生労働省が米モデルナと英アストラゼネカの新型コロナワクチンの承認を5月20に開かれる専門部会で判断するというニュースについて解説した。
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新型コロナウイルスの2回目のワクチン接種のため、用意された注射器=2021年3月11日午後0時52分、東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター(代表撮影) 写真提供:産経新聞社
モデルナとアストラゼネカの新型コロナワクチンを専門部会で承認へ
米バイオ医薬品企業モデルナと、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省は承認可否を判断する専門部会を5月20日に開くと発表した。承認が了承されれば、厚生労働省は審査を簡略化できる特例承認で対応する。
飯田)モデルナ製のワクチンについては、大規模接種会場で使うということが発表されております。ワクチンの承認、これは2例目、3例目になりますね。
クラフト)既にワクチンを購入して接種会場でやる予定になっています。そこでいまさら承認というのは、意味があるのかなという部分もありますけれど。
英米と日本のワクチン普及の差は「平時と有事」の危機感の違い
クラフト)承認に対するプロセスも、海外よりは時間がかかった。そこは慎重にデータを見て安全性を審査しなければいけないのですけれども、ワクチン接種と同様の問題で、アメリカやイギリスと日本を比べると、「平時対有事」の危機感の違いが表れているのだと思います。
初期段階でコロナ感染を抑え込み「優等生」であった日本と感染が拡大し危機感を持つ英米との違い~有事の危機意識がワクチン開発を促した
クラフト)日本は最初、コロナ感染を抑え込めた「優等生組」として成功しました。逆にアメリカやイギリスは感染が拡がって非常に危機感があり、戦争時のように多くの死者が出てしまった。その危機感が早期のワクチン接種の普及につながったのです。
飯田)危機感が。
クラフト)とにかくワクチンを打つのだと。逆にまだ危機感が薄い日本ではそうした対応が遅れた。そこにワクチン普及の差が出てしまったのかなと思います。
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Photo illustrations in Ukraine; Moderna says its vaccine is 94.5% effective in preventing COVID-19-16 Nov 2020=Sipa USA/時事通信フォト
いまは予約がなくても薬局でワクチン接種できるアメリカ
飯田)今回のワクチン接種のやり方なども含めて、日本は既存の仕組みをそのままにしていると。アメリカの場合は違います。
クラフト)まだワクチンを接種していないアメリカの知人が街を歩いていて、薬局にダメ元で入り、「ワクチンを接種できる?」と聞いてみたら「できるよ」と答えられて、3分で終わったということです。
飯田)薬局で。
クラフト)アメリカで問題になっているのは、いまやワクチン接種をするということではなく、接種を拒む人がいて遅れていることが問題になっているくらい普及している。イギリスでも一般人ボランティアを雇って研修し、すぐワクチンを打てるようにしています。あれだけ被害を出してしまい、危機意識が高いので、何でも取り入れてやろうと。通常とは違うやり方ですね。日本はつい最近まで自治体に任せるとしていて、やっと政府が自衛隊や歯科医師を動かすようになった。ここから早く普及してくれることを願っていますけれどね。
飯田)自衛隊、他国であれば軍隊ということになりますが、軍隊が乗り出すというのは諸外国でもやっていることですか?
クラフト)こういう危機的状況、有事のときに軍隊が乗り出すのは当たり前です。軍隊には医療従事者がたくさんいるわけです。そのリソースを使わない手はない。いままで日本では使わなかったというのが残念でしたね。
飯田)ここまで「急げ」ということであれば、積極的に活用するべきだったと。
クラフト)やはり最初に日本が抑え込んで、あまり酷い結果にならなかったことによって、危機意識が高まらなかった。逆にアメリカとは違う実態になってしまった結果が表れたのかなと思います。
日本には「ワクチン体制を強化する」という課題が
クラフト)長期的に言うと、日本はこれまでワクチン開発にあまり力を入れて来なかった。安全保障という面からして、今後はワクチン体制も強化するという課題が出ましたね。
飯田)基礎研究など、そういったところですかね?
クラフト)基礎研究は大切ですね。