問題は日本人の“ネガティブ思考”~ワクチン普及後の経済回復

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2020年度のGDPがマイナス4.6%となり、リーマンショックを超える下落になったというニュースについて解説した。

問題は日本人の“ネガティブ思考”~ワクチン普及後の経済回復

神戸でワクチン集団接種開始 神戸市で新型コロナワクチンの集団接種がスタート。仕切られたブースの中でワクチンを注射器に詰めていくスタッフ=2021年5月10日午後1時16分、神戸市兵庫区の兵庫区役所 写真提供:産経新聞社

2020年度のGDPマイナス4.6%~リーマンショックを超える最大の下落

内閣府が5月18日に発表した2020年度の国内総生産(GDP)は、新型コロナウイルスの影響で実質の伸び率がマイナス4.6%となり、比較可能な1995年度以降で最大の下落となった。また、2021年1月~3月までのGDPは、前の3ヵ月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス5.1%と、3期ぶりのマイナスとなった。

飯田)4月~5月は緊急事態宣言で意図的に経済を止めたので、ある程度はやむを得ないという西村担当大臣のコメントが出ております。

コロナ対策はうまく行っている方だが、ワクチン接種が遅れている日本

佐々木)日経新聞は、

『コロナ対策映す景気回復、米中加速 日欧は遅れ 1~3月GDP、日本5.1%減 緊急事態響く』

~『日本経済新聞』2021年5月19日配信記事 より

……と見出しを付けました。アメリカや中国は回復しているけれど、日本とヨーロッパは遅れていると書いています。

飯田)そうですね。

佐々木)中国産のワクチンにどのくらい効果があるかは微妙なところなので、中国はわからない部分がありますが、あそこは完全な監視国家なので、管理対策できっちりコロナを抑え込んでいます。アメリカはファイザーのワクチンを積極的に製造していて、いまやワクチン・ツーリズムなどと言い、アメリカに旅行に行けば街中で打てるので、中南米から旅行に行っているぐらいです。

飯田)ワクチン・ツーリズム。

佐々木)ヨーロッパは遅れていたのですが、イギリスは創薬国ですし、各国が都市封鎖するくらい酷い状況だったので、ワクチンを加速的に配り始めていて、この春くらいからようやく回復し始めた。

飯田)イギリスは急激に感染者数が減少しています。

佐々木)日本だけが遅れているのはなぜかと言うと、別にコロナ対策がうまく行っていないわけではなく、ワクチン接種が進んでいないからです。ただそれだけです。

問題は日本人の“ネガティブ思考”~ワクチン普及後の経済回復

橿原市で始まった新型コロナワクチンの集団接種=2021年5月10日 かしはら万葉ホール 写真提供:産経新聞社

全人口に行き渡るだけのワクチンの契約を確保~1日100万本打てば次の緊急事態宣言は出さなくて済む

佐々木)ワクチンに関しては、「なぜ日本は未だにダメなのだ」と言われていますが、1週間~10日ほど前から大量に入り始めて、いまは週に1000万回分くらい入って来ているのかな。契約数で言っても、ファイザーやモデルナと既に契約していて、1億4000万人分くらい契約している。全人口に行き渡るだけの契約は確保できているのです。あとは大量に入って来ているワクチンをいかに迅速に打てるかどうか、そこだけなのです。1日に100万本打てば、9月~10月にはほぼ完了します。いま緊急事態宣言が出ていますが、次の緊急事態宣言はなしで済むだろうと言われている。東大はそういう試算を出しています。

飯田)東大の試算で。

佐々木)ただ、1日100万本打たないとそこまで行かない。現状はまだ1日に約40万本くらいなので、加速させないといけないのです。それを100万本までレベルを上げて、夏までに効率よく打てるようになったら、希望が見えて来るのではないかというのが、いまの日本の状況です。

ワクチン接種で「いかに、消費マインドを活性化させるか」がポイント~問題は日本人の“ネガティブ好き”

佐々木)ただもう1つの問題は、そうは言いながら、消費はマインドなのです。いまや日本は貿易よりも内需大国なので、「いかに内需を向上させるか、消費マインドを活性化させるか」が大事になって来る。ところが、日本人はどうしてもネガティブなことが好きなところがある。

飯田)それは、この30年くらいのデフレで染み付いてしまったものなのですかね。

佐々木)「日本は終わりだ、ダメだ、もう景気は回復しない」と言っていれば、何となく世の中を批判した気に、世の中を論じた気になってしまうというのが、メディアにも国民にも染みついてしまっている。そうすると「消費マインドアップ」といくら政府が旗を振っても、「いやいや、日本はもうダメでしょう」と、気持ちがそちらに行ってしまう。

飯田)もうダメだと。

佐々木)「そうではなく、これからワクチンを1日100万本打って、9月~10月までに完了すれば、一気に景気が回復するんだぞ」という期待感を我々が持たないと、消費は上がらないのです。アメリカでは、ワクチンが全員に行き渡る以前から、「コロナが収束したら消費が増える」と言い始めた結果、それで気持ちが上がり、「ガンガンお金を使うぞ」とマインドが変わったわけです。ああいうところがアメリカの強さではあるのですよね。

飯田)前の駐米大使だった杉山晋輔さんが5月18日に日本記者クラブで会見を行って、「アメリカはレストランに1日3組の人を入れただけで、“前進したぜ!”と言っているのに、日本は何なのですか」とおっしゃっていました。

佐々木)高橋洋一さんも指摘されていますが、財政出動の額で言うと日本はアメリカに次いで2番目くらいで、すごく財政出動をしているのです。しかもコロナの感染者数、死者数もヨーロッパに比べればダントツで少ない。それほどマイナスになる要因は大きくないはずなのに、「なぜここまでマイナスになるのか」ということですよね。これはまさに10年前のリーマンショックのころに、「日本は大丈夫だったのに、なぜか景気後退だけが続いた」という。あれと同じ構図になっている感じがします。

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飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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