“野原ひろし”や“マスオさん”のような「凡人のロールモデル」がなくなってしまった日本

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。大学生の就職内定率が96%となり、過去2番目の下落幅を記録したというニュースについて解説した。

“野原ひろし”や“マスオさん”のような「凡人のロールモデル」がなくなってしまった日本

就職活動の採用面接が解禁され、損害保険ジャパン日本興亜の選考に臨む学生たち=2019年6月1日午前、東京都新宿区 写真提供:産経新聞社

大学生の就職内定率96%

厚生労働省と文部科学省が5月18日にまとめた2021年3月卒業の大学生の就職率は96.0%となり、前年同時期と比べて2.0ポイント低下した。1997年に調査を開始して以来、リーマンショック後の2010年卒に次ぐ、過去2番目の下落幅を記録した。

飯田)新型コロナウイルスの影響が、観光・航空業界を直撃していることなどが原因だと指摘されています。

倒産やリストラに脅かされる現状~そういう社会のなかでどう生きて行くのか

佐々木)内定率は毎年変わるので、もう少し長い目で見る必要があると思います。非正規雇用率が既に4割を突破していて、内定して就職したからといって、一生その会社にいられるわけではなく、もはやそういう安定感は何もないのが現状です。転職がフリーになっているという言い方をすれば、いいはいいのですが、一方で自分の勤めている会社がいつ潰れるかわからない。いつリストラされるかわからないという不安に、常に脅かされるという状況は、新卒の大学生に限らず、大人も含めて全員が変わりません。「そういう社会のなかでどう生きて行くのか」ということが重要な課題になって来ているのだと思います。「頑張ってこのジャングルを生き抜くんだ! ホリエモンを目指せ!」というような話にもなりますが。

飯田)「スケールをつけて」とかね。

佐々木)私は堀江貴文さんと仲がいいし、よく知っているからわかりますが、彼はビジネス的な才覚や能力においては天才的な人です。ホリエモンになれるのは1万人に1人もいないだろうと思います。普通の凡人がホリエモンを目指しても、うまく行くわけがないですよ。

一兵卒が強いのが日本社会の特徴

佐々木)インターネットを見ていていつも思うのですが、真面目で普通な地味な人は世の中にたくさんいるではないですか。会社のなかでも目立たないのですが、かと言って仕事ができないわけではなく、黙々と自分の目の前の課題を解決して行く。そういう裾野の強さは日本の特徴だと昔から言われています。軍隊で言うと将軍はダメなのだけれど、一兵卒が強いのが日本の特徴であると言われます。

飯田)そこが現場力というものにもつながるわけですね。

佐々木)一兵卒は強いけれど、リーダーシップを取る将軍がダメだから戦争に負けてしまう。これは太平洋戦争のときに散々言われたわけです。伊藤祐靖さんという自衛隊の特殊部隊の創設者の方が言っていますが、アメリカの一兵卒はレベルが低いと。特殊部隊同士で訓練しても、アメリカ軍は日本の自衛隊の特殊部隊に比べて全然ダメだと。ただ、あそこはシステムをつくるのがうまい。だから戦争に強いのだということです。

飯田)零戦のパイロットは優秀だったけれど、アメリカは物量作戦で来た。グラマンをたくさん飛ばして来て、落としても落としてもまた来るのだと。

佐々木)日本は一兵卒である我々のような一般労働者が強いということを考えると、その人たちがきちんと暮らして行けるようなシステムをつくらないで、全員がリーダーシップを取れる方向に目指すということは、日本の国民性に合っていないと思います。

“野原ひろし”や“マスオさん”のような「凡人のロールモデル」がなくなってしまった日本

2012年卒採用の合同企業説明会。氷河期と呼ばれる就職活動が本格的に始まった=2010年10月3日 写真提供:産経新聞社

野原ひろしやマスオさんのような「凡人のロールモデル」がなくなった日本

佐々木)平凡な人が生きて行けるようなロールモデルをつくるのが重要なのではないでしょうか。先日記事に書いたのですが、日本には凡人のロールモデルがなくなってしまったのです。かつての「クレヨンしんちゃん」の野原ひろしや、「サザエさん」のマスオさんのような、普通の平凡な会社員なのだけれど、そこそこの一戸建ての家を買える。桜新町に買えるかどうかは別ですよ。埼玉の春日部くらいであれば、昔は普通の会社員でも買えたわけです。「専業主婦の奥さんがいて子どもが2人いる」というような家庭が当たり前で、これが日本の凡人のロールモデルだったのだけれども、いまでは凡人が真似できない高嶺の花になってしまった。いまの20代~30代が野原ひろしやマスオさんを見ると、エリートに見えてしまう。

飯田)まず結婚できるだけでエリートではないかと。家があって車があって、子どもがいるのかと。

一般労働者が幸せになれる社会をつくれば、日本は強くなる

佐々木)「すごいですよね」という話になってしまう。そこをもう1度、我々の社会が取り戻せるかどうかというところだと思うのです。一般労働者が強くなれる、みんなが幸せになれる社会をつくれば、実は日本はとても強くなるはずなのです。

飯田)ポストコロナ経済を考えると、そこの底上げをしなければならない。

佐々木)ジャングルで生き抜く人だけの社会では、日本は持たないと思います。

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飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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