圧巻デビューの阪神・西純矢と、刺激し合う“高卒2年目投手”たち

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、5月19日のヤクルト戦でプロ初登板初勝利を挙げた阪神期待の2年目、西純矢投手のエピソードを取り上げる。

圧巻デビューの阪神・西純矢と、刺激し合う“高卒2年目投手”たち

【プロ野球阪神対ヤクルト】阪神先発の西純矢=2021年5月19日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社

高校時代、甲子園で鮮烈デビューを飾った男が、プロでも甲子園でこれ以上ないデビュー戦を飾りました。阪神の高卒2年目右腕、西純矢投手は19日のヤクルト戦でプロ初登板初先発。先頭打者から2者連続四球を出してしまう苦しい立ち上がりでしたが、ここを自慢のストレートで切り抜けてピンチを脱します。その後は落ち着きを取り戻し、5回を投げて“ノーヒットノーラン”という素晴らしい内容で、記念すべきプロ初勝利を挙げました。

阪神の10代投手が初登板初先発で無安打投球するのは、2リーグ分立後では初めてのこと。首位阪神に、また1人頼もしい存在が増えたことになります。

『5回0点というのは100点。勝ち運があるのかな』

~『サンケイスポーツ』2021年5月20日配信記事 より(矢野監督の試合後コメント)

指揮官が満点を出す、最高のデビューを飾った西投手。思い返せば、創志学園(岡山)の2年生エースとして甲子園のマウンドを踏み、初戦から16奪三振のド派手な完封劇で全国デビューを飾ったのが2018年の第100回記念大会でのこと。あれから3年。同じ甲子園を舞台に演じたド派手なデビュー戦後、西投手が発したコメントにはこんな内容がありました。

『みんな頑張っていて、自分も置いていかれないように頑張ろうと思ってやってきて、そういう思いで投げました』

~『サンケイスポーツ』2021年5月19日配信記事 より(ヒーローインタビューでの西純矢投手コメント)

ここで言う「みんな」とは、プロ入りした同世代の投手たちのこと。この世代は、高校2年で全国区になった西投手に刺激を受けたかのように、好投手がズラリと揃っています。

一足先にプロ勝利を挙げた奥川恭伸投手(星稜→ヤクルト)。先日、注目のデビュー戦を飾った佐々木朗希投手(大船渡→ロッテ)。奥川・佐々木・西投手とともに「高校BIG4」と呼ばれた及川雅貴投手(横浜→阪神)。そして、防御率と最多勝争いでパのトップを競う宮城大弥投手(興南→オリックス)。

高校時代の途中までは西投手が世代の先頭を走って活躍し、他の投手たちの刺激となっていました。同様に、西投手も他の投手たちからさまざまな刺激を受けて成長につなげて来たのです。

例えば、高校3年の代表戦でのこと。3年時に高校生歴代最速となる163キロを出した佐々木朗希投手、甲子園で準優勝と結果を残した奥川投手に対しては、こんな畏怖の念を抱いて“目標”としていました。

『“高校BIG4”と呼ばれていることについて、「自分は4人のなかで一番実力がない。特に同じ右ピッチャーの佐々木と奥川にどうやったら追いつけるかをずっと考えてきました」と常々語ってきた。

「今回2人と過ごしたことで、これまで以上に差を感じました。朗希はとにかく頭がいいし、野球に関する知識が豊富。奥川の完成度もあらためてすごいなと思わされました』

~『野球太郎』2019年11月27日発行「No.033」記事 より

プロ入りに迷っていたときには、宮城投手に背中を押されたと言います。

『プロに行くかどうかを決めかねていた西純は、W杯後に宮城に進路を相談した。すると「社会人野球の道もあるけど、厳しい世界に挑戦してやったほうがいい」。背中を押され、プロ入りを決断したという』

~『朝日新聞』2021年5月19日配信記事 より

今年(2021年)のオープン戦では、先に好投を見せたチーム内のライバル及川投手に対して、こんな対抗心を燃やしていました。

「負けていられないな、という気持ちが強くなったし、このままでは置いていかれるとも思った」

~『サンケイスポーツ』2021年3月16日配信記事 より

同世代同士で認め合い、刺激し合い、成長の糧として遂にプロ初勝利を手にした西投手。その姿は、また別の投手に刺激を与える好循環を生みます。その1人は、西投手と同じ日に1軍昇格を果たした及川投手です。

『やっぱり純矢(西)は良いライバルでもありますし、同級生として切磋琢磨(せっさたくま)してやってきたので、そういった意味では同じ日に昇格できて良かったと思いますし、一緒に頑張っていきたいです』

~『日刊スポーツ』2021年5月19日配信記事 より(及川投手コメント)

逸材揃いの高卒2年目たちが本格開花を見せれば、プロ野球がますます面白くなるのは間違いありません。実際、いまの球界で「エース」と呼ばれる投手たちにも、高卒2年目に飛躍を遂げた例が多くあります。

ダルビッシュ投手(パドレス)は日本ハムでのプロ1年目に5勝だったのが、2年目は12勝。涌井秀章投手(楽天)は、西武での1年目は1勝だったのが2年目に12勝。山本由伸投手(オリックス)も、1年目は1勝だったのが、セットアッパーとして定着した2年目は32ホールド。

言うなれば、2年目のジンクスならぬ、2年目のサクセス。高卒2年目投手たちのさらなる輝きに期待です。

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